I Became the Demon Lord and my Territory is an Uninhabited Island

Episode 55: When You Can Regularly Obtain Honey

あんな事があっても、いつも通りに目が醒める。とりあえず朝は来るので昨日の事は忘れて、朝食を取り朝のミーティングを始める。

「えー今日は開墾した場所から出た石を海に運び浅瀬に生け簀を作る準備をしましょう。俺は午後から探索に行きますが、いない時も事故のない様にお願いします」

そう言って各々準備に取り掛かる。子供達の距離が少し遠い気がしたが、砂糖を作る為の準備を始めてるので、子供達が落ち着くまで話しかけ無い様にしておこう。最悪ターニャとサーニャに心の傷を癒してもらえばいいさ。

そんな調子でどんどん伐採と根起こしをして、出た石を使い漁班の指示の下、浅瀬に生け簀を作る。大きい石は【水球】で包み、浮力の力を利用して少しだけ軽くして運んだ。

昼食を取り、沼の方を見に行く事にした。

水量は少ないが、そろそろ水が溜まり、作った水路に流れ出そうとしていた。濁りも少し落ち着いて、昨日よりは汚くはないが、水底の土が舞い上がらない様に何か対策した方が良いのか?その辺は知識が有る人族がいたら聞いておこう。

その後蜂の巣が気になったので行って見ると、体長三十センチメートルくらいのの、スズメバチみたいな魔物かどうかわからないが、大きな羽音を立てて蜂の巣にしがみつき、蜜蜂をかみ殺している。

大きくても、スズメバチとやる事は変わらないんだな。知性がなく本能のままに動く事を祈ろう。何かに夢中の時って、結構何かしても気が付かないしな、肉団子作ってる時とか。

俺は蜂蜜を手に入れる為に【石弾】を射出して、胴体に穴を開けるが、生命力が強く、地面に落ちてもまだ羽を動かして顎をカチカチ鳴らしている。

んーなんか踏みたくない。そう思い【石壁】を出現させ蹴り倒し、下敷きにして押しつぶし、倒れてる石壁の上に乗り数回ジャンプして、確実に押しつぶす事にした。

かなりの数のミツバチが死んでいるが、見た目半分以上生きてるので問題無いかな?女王がいれば大丈夫なんだっけ?

まぁ前世では、かなり大きなミツバチの巣が三匹のスズメバチに全滅させられたって話は聞いた事があるから、被害は少ないのか?良くわからないが、下に落ちてる、土が付いた蜂の巣を拾い無事なところを探し出して巣ごと食べてみた。

「んー、蜂蜜は世界共通の甘味料だな、ホットミルク飲みたくなってきた」

別にラッテとミエルじゃないぞ?

倒れた石壁の方を見ると、蹴ったり上に乗ってジャンプしたせいもあるのかすでに消えており、見事に三十センチメートル級の、スズメバチっぽいのは動かなくなっていた。

もしかしてこれがホーネット?まぁ確かにスズメバチっぽいですけど?んーもう少し大きいの想像してたけど、これが集団だったら確かに恐怖だな、食糧確保の為に単独で飛んでて良かったわ。

「貴重なタンパク源です?」

いやいやいや、食べないよ?百歩譲って普通のスズメバチと幼虫は食べるかもしれないけど、この大きさは流石に抵抗がある。この大きさじゃ甘露煮や佃煮でも戸惑うよ。ってか堅いでしょうコレ?

「やぁやぁ、僕の仲間を助けてくれてありがとうございます」

背中から声がしたので振り向いて見る、そこには二十センチメートルくらいの金髪で、複眼の妖精がいた。腰の辺りに蜂の腹のようなものが生えていて、少し五月蠅い羽音をだしながらホバリングしている。

「いやぁ、まぁ。成り行きだったので」

「いやー、あのままだとこの巣は全滅だったよ。ありがとう」

「どうしたしまして?」

お互いに沈黙している。だから俺は駄目元で思った事を言ってみる。

「俺はカームって言うんだけどさ、お礼とかしてもらっていいかな?」

「んー良いよ。どうせ蜜でしょ?」

「まぁ早い話がそうなんだけどさ」

「歯切れが悪いね、男ならズバッと言っちゃいなよ」

「俺に飼われてみない?」

「おー直球だね。僕はそう言うの嫌いじゃないよ、具体的には?」

「養蜂って言って、鳥や豚を飼うみたいに蜂を飼うんだよ。家の近くに巣箱を置いてそこに巣を作ってもらって、定期的に蜜を取らせてもらいたい」

「んー、僕達にメリットは?」

「外敵から守るって言うのは?」

「……まぁ良いよ、さっきみたいに守ってくれれば」

「じゃぁ決まり、あー君の名前は?」

「個体名はないよ、僕はハニービーだからね」

「そうか、悪かった」

「いやいや気にしてないさ、女王に報告して、妹達が生まれた時からある程度記憶に残ってるようにしてもらってるし、僕以外の個体にも君に事を教えて置くよ」

んー個体の情報が、種全体に行きわたるのか?その辺はわからないがありがたい。

「後さ、アルラウネって知ってるかい?」

「あーあの花のね、よく繁殖を手伝ったお礼に蜜を貰ってるよ」

「じゃぁ、結構仲が良い?」

「すげぇ良いよ! もう群れ全体が友達だよ」

「良かったよ。実は今、家の前に鉢植えでいるんだけど、一応話してくれないかな?」

「いーよー」

そんな会話をしつつ、ハニービーは襲われた蜂の巣に何を言ってるかわからないが、不愉快な音を出して指示をだしていた。

「いいよ行こうか」と言われ、俺の後について来る。

建設跡地に続く道を歩き仮拠点まで戻り、鉢植えのハイビスカスっぽい花に話しかけ、フルールさんを呼び出す。

「何よ、今子供達が火を使ってるんだからそっちに集中させてよね、あらハニービーじゃない、どうしたの?」

「蜂の巣が大きい蜂に襲われてて、助けたら協力してくれるらしい」

「本当は『俺に飼われてみない?』って口説かれたんだけどね」

「あら、意外と積極的なのね」

「共存目的だからね。まぁ本題に入ろう、俺が提案したのは養蜂って言って、蜂を飼って定期的に蜜を取る方法なんだ。そのかわり外敵から守ってあげる事が条件だけどね。それでフルールの名前を出したら知り合いみたいだったから話を詰めてもらおうと思って」

「丸投げなのね」

「……悪いね」

「具体的にはどうするのよ」

「木の幹をくり抜いて上に蓋をして、下に出入り口用の穴を開けて雨風が凌げる所に置く」

「「ふむふむ」」

「そしてある程度したら蓋を開けると、蜂の巣と蜜が……」

「一方的な搾取ね、最低」

「いや、全部じゃないよ? たとえば塊が五個あったら一個取って、蜜を貰ってまた戻す。しばらくしたら今度は二個目に出来た奴を取ってっての繰り返しで一気に全部取らない様にするんです。それと近くにフルールさんの子供をたくさん植えて、蜜を取れる環境にしますよ? 蜂は損するだけじゃないよー!」

そういってハニービーの方を見る。

「んーまぁ、僕の管轄が全滅させられるよりはマシかなー。守ってもらう代わりに蜜を差し出すって方法か……。僕だけじゃ決められないから、さっきも言った通り女王に一応報告させてもらうからね」

「あぁ、良い返事を期待してるよ」

「さて、フルールはなんでカームと一緒にいるんだい?」

「知り合いのドリアードのパルマに誘われてかな? 魔力で作った水がもの凄いの! もう体中に染み渡って元気になっちゃうのよ!」

「へー」

「なんか興味無さそうね……」

目を細めて、拗ねたように言う。

「僕達にはその水は、利益がない様に聞こえる」

「美味しい蜜を作り出せるわよ」

「カームって素晴らしい魔族なんだね! これも女王に言っておくよ」

なんだろう、虫だから思考が短絡的なんだろうか?

その後数十分話し合いをしていたので、子供達の様子を見に行ったが、外からも聞こえるくらいフルールの声がするので、一応子守はしているようだ。

並列思考ってすげぇ。

確認の為に少し離れただけなのに、戻ったら話が終わってて「どこに行ってたのよ!」と言われ少しだけ理不尽だと思ったけど、まぁ話を詰めてくれたのなら助かる。

とりあえず報告に戻って許可が下りたら、巣作りの様子を見ながら口を出すみたいだ。とりあえず樹洞が有る木を確保しておして駄目だったら薪にすればいいか。

翌日、皆と朝食を取っていたら。

「女王が良いって言ってたよー」と、昨日のハニービーが飛んできて、皆がいる前で言った。

「女王?」「奥様かしら?」「あーハチさんだー」「ここ無人島だろ?」「良く考えろ、ありゃ蜂だぞ?女王蜂だろ?」

誤解が産まれなくて助かったよ。またへこみたくないからな。

「あぁ、わざわざ早くにありがとう。食べ終わったら皆と話しをしてから作り始めるから」

「はーい」

皆には開墾作業で出た石で、生け簀作りをしてもらい、俺は巣箱作りを始める。

「へーこんな感じなのか、確かに蜂達は過ごしやすいかもしれないかな。雨に当たらないし」

「要望があれば更に屋根を付けるけど? と言っても周りに杭を打って、その上に板を乗せるだけだけど」

「定期的に来て、皆の反応を聞いてからかなー」

「了解。で、場所はどこが良いのかな?」

「んー日の当たらない涼しい場所かな」

それを聞いて、俺の家の北側に巣箱を置き、周りに杭を打って板ではなく葉っぱを乗せてみた。

「どう?」

「いいんじゃない?」

そう言うと、腰に付いてる蜂の腹みたいな所から少し大きい蜂が出て来て、巣箱の周りを飛び始め中に入って行った。

「気に入ったって」

「ほう、ソレは良かった」

「んじゃ引っ越しさせるから、昨日の巣のあった場所に鍋を持って来て」

「鍋?」

「引っ越しする時は巣の半分の蜂が、新しい女王蜂と一緒に引っ越すんだよ。だからお礼に壊された方の巣は貰ってくれって」

「あー、蜂蜜くれるんだ」

「そうそう、助けてくれたお礼も兼ねてるんだよ。まぁ蜜の貯蔵庫の方だけどね」

「流石に卵や子供の方は可哀想で持って行けないよ」

蜂の子は、食べると美味しいらしいと言うのは止めておいた。流石に失礼だからね。

俺は鍋をもって巣まで行くと、既に近くの木に蜂の塊が出来ており「早く新しい家に!」と言っているように思えるほど、羽音が凄かった。

「この辺削いじゃって良いって」

そう言って指で縦に線を引いたので【黒曜石のナイフ】で切れ目を入れて鍋に落として、一応蓋を閉めておいた。

「じゃー行こうか」と言って、ハニービーは蜂の群れを連れて先に飛んで行ってしまった。んー空が部分的に黒くなって、それが蠢いてると不気味だな。

まぁ帰るか。これを子供に与えればまた少しは懐いてくれるだろう。

蜂蜜を使った料理も良いけど、あるのは小麦粉か肉か魚しかないからな、最悪蜂蜜酒になっちゃうな。

子供の為に、パンに蜂蜜塗って焼いた物を。大人に何かの果物の蜂蜜漬けで良いか。最悪子供にも与えられるし。

そう考えながら転ばない様に気を付けて帰ると、既に蜂は引っ越しが完了しており「んじぁー僕は、別の巣の様子を見て来るから。あーちなみにこの子達は臆病だから、あまり刺さないから安心してねー」と言って飛んで行ってしまった。

名も無き働き蜂さん、ありがとう。

まだ昼には早いので、子供の為に朝食の残りのパンを薄く切って、蜂蜜を塗って焼いた物を子供達の作業場に持って行った。

「やぁ、ちょっと休憩しようか。蜂蜜が手に入ったからパンに塗って焼いて来たよ」

なるべく平然を装っているが、内心嫌われてないか心配だった。

「あ……まおうさま。こんにちは」

「はいこんにちはー」

やべぇ、なんか距離置かれてるし、心なしか言葉使いがよそよそしい。だがここで逃げちゃ駄目だ。

「皆で食べようか」

そう言って近くのテーブルに皿を置くが、誰も手を付けようとしない。

「どうしたの? 蜂蜜だよ?」

そう言いながら、綺麗なきつね色に成った甘いパンを、カリカリ音を鳴らす様に食べてみる。が、まだ隅で固まったままだ。泣きそうになってたので俺は諦めて出て来た。あー少しだけ悲しいなー。

しばらく蜂の巣箱の前で蜂が通ってるのを眺めて癒されてたら、声を掛けられた。

「魔王様! 船がこちらに回頭してます!」

「マジかよ!」

思わず素が出た。

閑話

子供達

「やっぱまおーさまってこわいのかな?」

「けどおかしとかくれるぜー?」

「さっきもはちみつパンもってきてくれただろ」

「パンも少ないのにまず先にわたしたちにくれるし」

「さとうだってすこしなめさせてくれたし、クッキーだってないしょでくれたよね」

「やっぱりいいまぞくで、いいまおーさまだと私は思うな」

「そうだよなー、オレもそうだとおもうぜー」

「なんかでていった時かなしそうだったよ、みんなでごめんなさいしようよ」

「そーだなー『おおかみのむれをなっとくさせるため』っておとながいってたし」

「ターニャもソーニャもボルフも変わらないで、まおーさまとなかよくしてるからきっとこわくないよ、ごめんなさいしようよ」

子供達の雪解けは早かったです。