I Became the Demon Lord and my Territory is an Uninhabited Island

Episode 111: Evan's Return to the Village

最前線から戻り、特にそれ以降問題もなくベリルと、アクアマリンを行ったり来たりを繰り返し、種の頃から少し植物をいじる事が出来ると知り。野草さんとパルマさん、フルールさんが必死に話し合っている。

榎本さんも、植物系の二人に相談に来て、方針が纏まったら、パルマさんが種籾に手をかざし、青白い光を体感で五分くらい出し、それが終わると榎本さんと何かを話していた。

あぁ、品種改良ってあんな感じでやるのか。初めて見たわ。

「かなり難しい注文だったけど、ある程度は注文通りよ」

「一応言われた通り、病気に強い品種にしておいたわ」

「おう、カーム。コレで少し日本の米に近づけてもらったぞ、今年の秋を楽しみにしてろよ」

そんな事を言って、大八車にコメ袋を二つを乗っけて、牛でのんびりと自分の家の有る、南の方へ伸びる道をのんびりと進んで行った。

「牛車まで作ったか……かなり満喫してるな」

まぁ、牛の名前思い出せないけどな。

ってか日本のどこかの島みたいな風景だな。

それから数日後、今度は野草さんが俺に相談しに来た。

「カームさん、どういうトマトが好みですか?」

「んー料理に合えば良いかなー。だから少し酸味が強くても良いね」

「カームさんは、余りそのままでは食べないんですか?」

「なんか無性に食べたい! って時くらいしか食べないですね」

「んーあんなに美味しいのに」

「まぁ、余れば干してオイル漬けにして料理に使うか、売れるから別に多めに作っても良いですよ」

「はーい」

その後、やっぱり種に手をかざし、青白い光を出している。どんな米とトマトが出来るのか楽しみだな。

そして適度に時が経った頃にフルールさんが、エノモトが呼んでるよーと言って来たので、島の南の榎本さんの家の前に飛ぶ。

そして辺りを見回すと、発芽した苗を運んでいる人々の姿が見える。もうそんな時期か。

「おう! 手伝えや」

そんな一言だけで手伝わされることになった。白米と味噌汁と焼き魚の為だ、こいつは頑張るしかない!

そして数日後、やっと耕した分の田植えが終わる。

「腰が痛い~」

「ははは! 若けぇもんは田植えなんかやった事ねぇからな! まぁそのぶん米がうめぇから期待してろ。うし! 手足洗ってから温泉だ」

「そうっすね」

そんな感じで田植えを終わらせた。

そして暑くなり始める頃に、夏野菜系の種を植えはじめ、野草さんがワクワクしていた。

そんな光景を見て、微笑ましく思いながらベリルに帰る。

「カーム、村にヴァンさんが戻って来た。迎えに行ってあげて」

「もうそんな時期だったか、思ってたより早いな。じゃぁ悪いけど挨拶だけしてくるよ」

「飲んできても良いよ」

「いつまで経っても終わらないから、飲まされない努力をするよ」

「いってらっしゃい」

「捕まらない事を祈ってて」

そう言って俺は酒場に向かった。

「ぎゃははははは! おう! 今日は俺のおごりだ! 飲め飲め!」

駄目だ、飲まされるフラグだ。

「お! カームじゃねぇか!」

「あ、お久しぶりです」

「まぁまず飲め!」

そんな事を言われ、その辺に有ったカップに持っていた瓶の酒を注いで渡された。相変わらず零れそうなほど注いで来る。

「頂きます」

そう言って口を付けるとムワッと酒が体温で蒸発するような感覚がした。

「強い」

「そりゃそうよ! 温めて出て来た酒を、また温めて出来た酒だからな。多分殆ど酒だぜ!」

あーうん。前世で物凄く強い酒飲んだ事はあるけど、あれと同じような事してるな。

「んー、まさかかやるとは思いませんでしたよ。一応言おうとは思いましたけど、一回でも十分かな? と思っていたので」

「そこをやるのがドワーフよ。故郷でも一回蒸留した奴が大人気でよー、ばんばん蒸留器が作られてるぜ。樽職人の方が足りないくらいだ」

「そうですか……」

樽職人が足りないって、どんだけ生産してんだよ。

「にしても……平気な顔で飲むな」

「えぇ、慣れてますから」

そう言って、ほぼアルコールの酒を適度に口を付けてカップを空にして、逆さに置く。

「今日は飲むつもりはありませんでしたが、ヴァンさんに注がれちゃ断れませんからね。一杯だけです」

「なんだよ、連れねぇな」

「一応定期的にベリルには戻って来ているので、アクアマリンには二日後には戻りますと言う報告です。度々自分は戻って来ているので、いつでも戻って来られます、今日は積もる話もあると思うのでゆっくりと飲んで下さい。では申し訳ありませんが、自分は失礼しますね」

そう言って無理矢理酒場を後にする。

「俺の故郷でも、この酒をあんな速さで飲める奴はいないのによ。化け物かよ?」

「いやいや、魔王だよ。俺達も蒸留した奴を、もう一回蒸留してみるか!」

「おうよ! 校長が喜ぶぜぇー」

「ただいまー」

「カーム君おかえりー、速かったから本当に飲んでこなかったんだねー」

「いいや、物凄く強いの飲まされたよ。それを平気な顔で飲んだらドワーフが驚いてたよ」

そう言うと、ラッテが口元をスンスンを嗅ぎはじめる。

「うゎ……本当にお酒臭い」

「一杯だけだけどね、やっぱり強いのは残っちゃうよね」

「なのに酔ってないの?」

「んー少し胃が熱いかな」

「カーム君にお酒で勝てる人はいるのかな?」

「わかんないねー、竜族かな? まぁ、校長経由で竜族にも、そのさらに強い酒が伝わるんじゃない? まぁ、今日はお風呂入って寝ようか」

「はーい」

そんな簡単なやり取りを玄関前でして風呂に入って寝る事にした。

そして翌朝、子供達が学校に行く前に稽古をせがまれたので、いいよとだけ答えて、覚悟だけはしておく。

まずはリリーだが、攻撃が重くなりつつフェイントが混ざるようになり、そろそろ捌き辛くなっている。しかも距離を開けると、この間覚えさせた黒曜石のナイフを多少遅いが生成し、投げるようになってきた。これは嬉しい事だが、個人的に怪我をするので止めてもらいたい。せめて黒曜石を棒状にした物に最初に言っておくべきだったな。

そんな黒曜石の投擲を【水球】を浮遊させて推進力をなくして威力を落とし、穂先の無い槍を警戒をしつつ、スコップを手放し、バールと木の棒だけで槍を防ぎつつ、頭上に黒曜石の棒を浮遊させたままプレッシャーを与える。

槍の間合いの中に入り込み勝負を決めようとするが、蹴りを使ってきて距離を開けようとした所で、黒曜石の棒を射出し、肩の辺りに当てて勝負にストップをかける。

「強くなったねリリー。確かに黒曜石のナイフのおかげで戦略の幅は広がってるけど、相手がいつ放って来るかわからない魔法を保持させたまま近接状態から距離を置くのは危険だね。槍を手放して、この間のナイフで戦う練習もしておいた方が良いかも」

そう言って頭を撫でようとしたが、この間の事を思い出し、褒めるだけにしておいた。

「じゃぁ次はミエルだね、おいで」

そう言って目の前に対峙させる。この間の鉄製の小丸盾を持っている。

始まった早々に【火球】を連発して放って来るが、それに交じって【黒曜石のナイフ】を火球の死角に隠し放って来るが、少し訓練が足りないみたいだ。

なので、ミエルの足元をへこませバランスを崩し、もたついている所を一気に距離を詰め盾に向かって、少し強めにスコップを振ってやり、吹き飛ばしてやった。

「火球に黒曜石のナイフを死角に混ぜて放って来たのは良い判断だね、けど多少動き回らないと、固定砲台になって弓とかで狙われるから気をつけないとな」

「こていほうだい?」

「その場にずっといて、魔法や弓を撃つだけって意味が近いかな、少しは動きながら魔法を撃つ練習もした方が良いかもね」

そう言って褒める所は褒め、駄目だった場所も一応指摘する。これが次へ活かされれば良いんだけどね。

その後は何戦か付き合ったが、まだまだ俺には決定打を入れられる事はないと思いたい。姉弟そろって来られたら、本気で相手にしないと不味いと思うけどね。

そんな事を思っていたらリリーが、

「お父さん、一回だけでいいから本気を見せてよ! お父さんの本気がどの程度かわからないと参考にならないよ。一回だけで良いから」

「んーそう言われてもねぇー。子供相手に本気出す事も出来ないからな……」

そう言いながら、今まで使っていた棒を空に高く放り投げ、ドットサイトを発動して、子供達に見えない様に【石弾】を発動させて空中で真っ二つにして、その後に折れた木を視線で追いながら【黒曜石の苦無】を一本づつ射出して、カカンッ! と音をだしながら浅く突き刺す。

「こんな感じ?」

そう緩く答える。

子供達は無言で俺の方を見て来て驚いた様な顔をしている。

「後はこれくらい?」

そう言いながら大体人と同じような大きさの【土壁】を作り、三十本の苦無を空中に作り出し、一気にすべてを射出してすべての苦無を上半身と思われる場所に人型に命中させる。

「あとはコレを自分を中心に無差別に周りに放ったり、接近戦をしながらとか、走りながら一本づつ射出したりかな? 他にもあるけど見せられない。あとは殺気とか相手に向けるとかね」

そう言い終わらせ、走りながら土壁の上半分に全て命中させていく。子供達が引いてるのが目に見えてわかる。そんな距離を取らないでくれよ。お父さんへこむよ?

「まぁ、慣れればミエルもこれくらいは出来るし、リリーも避けられるんじゃないかな?」

「む、無理だよ」

「そうよ、いっぺんに来れば多分避けられるけど、一本づつ来るなら避けた先に投げられたら終わりじゃない!」

「んーそう言う風にしてるからね……慣れれば出来るし、避けられるし、反撃の機会も生まれるんじゃない?」

「お父さん、適当な事言わないでよ」

「一本一本防ぐか、弾くかしながらミエルの援護が入れば、どうにかなるんじゃないか?」

「今の僕には無理だよ……」

「土壁にあまり深く刺さってないから、土壁とか作ればいいんじゃないのかな?」

そう言いながら上空に大きな【石】を作り出し、自由落下させ、ドズン! と音と共に土壁と苦無を全て押しつぶす。

会話中にそんな事をされて、横で大きな音がして子供達が大きな石に潰されている石壁を見て、かなり驚いている。少し驚かせすぎたかな?

「まぁ、こんな会話中でも場所を覚えておけば、見てなくてもイメージで石を落とせるから。後衛のミエルには頑張って貰わないと」

「無理だよ……」

「無理じゃなくて、やろうとする努力も必要だからね。まぁ、大体こんなもんって奴を見せたけど、父さんが本気を出したらさっき言ったみたいに、殺気も入るし、近接攻撃しながら魔法も撃つから」

そう言って一応父親の威厳を少し見せておく。少しやり過ぎた感はあるけど、天狗にならない様に注意しておくのも親の役目なのかな? まぁ、コレを見て目標にしてくれればいいと思う。

翌日、朝食後にヴァンさんが家を訪ねて来てくれたので、早速島に向かう事にする。

「思ってたより道具とか少ないですね、細かい作業用に、もう少しあると思ってましたよ」

「足りなければ自分で作って、どんどん増やして行けばいいんだよ」

「確かに。現地で作るとかその発想はなかったですね」

「だろ?」

そう言いながらニヤけるヴァンさん。そして俺は転移魔法を発動して島に飛んだ。今、鉄とかの備蓄が少ないけどね。

「おー、なかなか綺麗じゃねぇか、村とかなり雰囲気が違うな」

「まぁ、島ですから。それに冬でも凍える事はありませんので。そのせいで年越祭の時は、次の日の昼近くまで、皆で飲んでましたよ」

「おう、そいつは楽しみだ!」

そう言いながら辺りを見回し、色々物珍しそうに見ている。

「建設予定地なんですが、この港から出荷しやすいように、少しだけ離れた場所を予定しています。もし嵐が来ても海の水が入り込まない程度の場所を、朝日を背にして右手側に少し行った所です」

「どこでも良いさ、もちろん俺の家はそこの近くだよな?」

「一応近くに住むと思ってたので、地盤だけは固めてありますよ。蒸留器作りや保管庫と並行して建てましょう。ある程度の木材の目途は付けてあります」

「鋼材は?」

「どのくらいの規模を作るのかわからないので、まだ押さえてません。そもそもある程度の物を建てないと、皆をこの日照りの中で作業させる事になりますからね、せめて屋根くらいは付けてから蒸留器の作成に当たってくださいよ」

「おいおい、直ぐできると思ってたのによー」

「こればかりは、ヴァンさんがいないと話になりませんからね。簡単に規模を地面に書いて、大体のアタリを決めましょうか」

そんな話をしたら、予想外の大きさの物を作られそうになったので、俺が止めに入った。

「いやいやいや、大きすぎです。そんな一度に大量に作るのにも限度って物がありますよ。まだまだ発展途上で、麦も芋も少ないんですから」

「けどよ、大きい奴は小さい奴の役割も果たすって聞いた事あるぜ」

大は小を兼ねる、ね。けどそんな余裕はうちにはありません。

「限度がありますよ。俺がサトウキビ畑を小規模ですが試験的に作ったので、まずはそれを酒にして蒸留させましょう」

まぁ、サトウキビだからラムだな。

「あとはベリルでやってたのと同じ麦で作るか、芋で作るかですよ。そして将来的に大きくすれば良いんですよ。拡張を予定して、かなり大き目に場所を確保してますし」

「しかたねぇ、ここはお前の領地だ。ある程度言う事は聞くぜ」

「ありがとうございます、では早速準備ですね」

島の南に有る寒村出身の人族の家もある程度建ってるし、少しこっちに人数を割いてもらうか。

閑話

稽古後の子供部屋にて。

「絶対お父さんは本気を出してないと思うんだけど、ミエルはどう思う?」

「僕もそう思うよ、けど、突き刺した変な形のナイフみたいなのはわかるけど、どうやって持ってた木の棒を半分に折ったのかはわからなかった。多分見せられないか、見えない奴だと僕は思うんだ。折れるように二つになったから風系じゃないとは思うんだけど」

「あんな事をされながら、ただでさえ型に当てはまらないお父さんの接近を防ぎ、魔法を避けるとかしたくないわ」

「僕も視線を向けないで、目的の場所に魔法を放つとかも無理だから、本当に動き回ってないと、いつ石を落とされるかわからないよ」

「優しくても魔王は魔王って事よね。正直あのままならお父さんに、雪が降って暖かくなる頃には勝てると思ってたけど、絶対に無理よ」

「僕もそう思うよ……」

「何か良い方法はないかしらね」

「辛抱強く練習するしかないんじゃないかな? 僕はそう思うよ」

「んーお父さんだけは絶対怒らせちゃ駄目ね。多分アレが本気だとは思わない方が良いわ」

「そうだね」

「少しでもお父さんに近づいてると思ったんだけどなー」

「思ってただけだったね、僕も頑張らないと」