I Decided to Cook Because the Losing Potion Was Soy Sauce
154 identity of the atomization-chan Gagaga
「ただいまー、キリカ、いつもより体が軽くてよく動いたのよ。だから、これ、取ってきたの」
キリカちゃんが両手いっぱいに抱えたリンゴを持ってきた。
「お、リンゴじゃないのか?それ、ずいぶん木の上のほうに生ってるのに、よく取れたな?」
「うん、だから、いつもよりね、体が軽くて、するするーって登れたの」
リンゴ、何作ろう……。じゃない!
「キリカちゃん、大丈夫なの?」
「え?」
キリカちゃんが首を傾げる。そういえば、立っていた髪はいつものように戻っている。
「なんか、いつもと様子が全然違ったみたいだし、鰹節、体に合わなかったんじゃ……」
「鰹節、美味しかった」
にっこりと笑うキリカちゃん。
「ハズレ魔石、おいしい……また食べたいなぁ。でも、スライム倒しても魔石は出てこないんだよなぁ。キリカ、早くほかのダンジョンに行けるようになりたいなぁ」
また食べたいって……。
「キリカちゃん、えっと、その……」
食べたあとの興奮状態。
カフェインとかそういう成分……?
また食べたいという欲求はチョコレートとかそういう感じ?
確かチョコレートって、薬物と同じくらいの依存性がある食べ物だって聞いたことがある。中には中毒になってしまってやめられないって。チョコレートを用いた実験で、脳の活動がドラック依存の人と同じ働きをしたっていう結果もあるとか……。
そう、確か、虫歯にならないように小さな子にはチョコレートを与えてはいけないっていうことを調べていたら見た情報だ。
小さな子は理性で欲求を抑えることが大人ほど上手にできないから、チョコレートは危険だって。虫歯以外に依存性が怖いって。
何かの条件が重なって、キリカちゃんは鰹節のようなハズレ魔石で……。
「おい、キリカ、残った鰹節食べたら、すぐにステータス確認して見ろ。俺とユーリねーちゃんは何ともなかったけど、キリカはどうか確かめておかないと」
「うん?わかった。わーい、鰹節だ」
キリカちゃんがほんの少しだけ残っていた鰹節を嬉しそうに口にいれた。
「ステータスオープン……ああ!」
キリカちゃんがステータスを確認して大きな声を上げた。
「じゅうか解放メーターが少し上がってる」
じゅうか解放メーター?
じゅうかって何?
「ああ、そういうことか!じゅうか解放薬みたいな効果があったってことか」
え?
「何?その、じゅうか解放とかって?」
分からない、話についていけない。
「あのね、キリカたち獣人はね、普段は人と変わらない能力しかないんだけど、獣化解放薬を使うと、獣の力が目覚めるのよ」
「そうそう、熊の獣人なら、ものすごい力が強くなるし、犬の獣人なら嗅覚が鋭くなってあたりにいる敵の位置なんかすぐにつかんじゃうぞ」
じゅうか……。
熊?犬……?獣人?
もしかして、漢字で書くと……。
「獣化?……キリカちゃん、鰹節食べて獣化って……」
まさか、キリカちゃんって、獣人だったの?
「うん、びっくりしたの。キリカ、獣化解放薬なんて高くて一度も使ったことなかったから、少しメーターが上がっただけで、あんなに体が軽くて動きやすくなるなんて思わなかったの」
だって、人にしか見えないよ?
どこが、獣人なの?
「ああ、そういえば、キリカ、鰹節食べて外に出る前に、耳が立ってたぞ」
「ふにゃ!この耳、たれ耳じゃなくて、獣化すると立つんだ!そっか!キリカもママみたいにちゃんとお耳立つんだ……」
キリカちゃんが嬉しそうに笑った。
「み……、耳?」
そっと手を伸ばして、キリカちゃんの頭に触れる。
そういえば、髪の毛がはねてると思った部分、ちょっと触り心地が髪の毛にしては堅いなぁと思っていたけれど……。ここが、まさかの……耳……。
「そうよ、あの、ユーリお姉ちゃん、キリカのこと、嫌いにならないでね……」
へ?
嫌いに?
「ああ、国によっては獣人差別があるから……ユーリ姉ちゃんは、キリカを差別したりなんかしないだろう?」
心配そうな顔してカーツ君が私の顔を見た。