I Don’t Care, So Let Me Go Home!
episode 3
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ご心配をお掛けしました、体調は(・・・)、完全復活したルルリーアです。
あの駄ドラゴン放置事件の後、サラの『調べてみるわ』という一言で、二人(と一人)の防衛線は解かれ、一旦保留になりました。
・・・ええええええ!なんでぇぇぇ!!『ドラゴンの島に帰す』一択でしょぉぉぉ!!
ああ、もうほんと、今、目の前に居る存在をどうしたらいいのか、悩み中です。
何が楽しいのか、尻尾を揺らしながらコチラを見てくる駄ドラゴン。
え?何が問題なのかって?・・・・この駄ドラゴン、何故か私が視界から消えると、暴れるのだ。
一体、なんなの?私は、お前の、母ドラゴンかっ!!!
こんなでっかいの、産んだ覚えはないぞ!って私未婚の乙女だからぁぁぁ!!!
・・・ということで、急遽外で寝ることになったワタクシ、貴族のご令嬢。
今が夏でよかった・・・ってなんにも良くないぃぃぃ!!でも意外と涼しくて寝やすいぃぃぃ!!
まったく・・・私の心安らげる場所は、一体どこにあるのだろうか。
いや!違う!!そういう場所は、自らが作り上げるものだ!!!
そう、この駄ドラゴンを追い返して、我が家に再び平穏を!!!
決意を表明するべく、私は駄ドラゴンへビシリと指を指す。
「キュウ?」
キュウ?じゃないわ、この駄ドラゴンめ。
そんな可愛い感じで小首を傾げながら鳴いても・・・む、無駄なんだからねッ!!
ヒュン
「あたっ」
ちょ、痛いなぁ!もう!いきなりなんなのさ!
地面を見ると、なにやら丸まった紙が落ちている。なにこれ??
おそらく私の頭に当たったであろうそれは、どうやら手紙らしい。
でもなんで筒状なんだ??と思いつつ、広げてみる。
なぜか、飴がころりと出てきた。・・・こ、これは!!??
飴が手紙で包まれているが、その手紙がベタつかないように、飴を包紙で包んでいるこの気遣い。
そして、皺にならないよう、手紙が丁寧に筒状になっているこの仕事。
犯人は、兄様、だなぁぁぁぁ!!
庭から、隠れられそうな家の柱とか木の影とかを見回すが・・・いない!!??
ふむ、と顎に手を当てて考える。
いくら飴を包んでいるとは言え、所詮は飴。
飴単体ならともかく、手紙付き、となれば軽くてそれほど遠くから投げられるはずがない。
・・・しかし、当たった痛さから考えて、相当勢いがついた模様。
何か道具を使ったのか??
それとも単に恨みが篭っているだけか??
・・・うむ、謎が深まっていく。
何処から、投げたんだ?そして、何処に居るんだ・・・兄様・・・。
「おーい、リーア!」
真剣に考えていたのに、頭上から普段通りの兄様の声が聞こえる。
見上げると、2階のバルコニーから顔を覗かせている、兄様。
そうか!2階から落したのか!!だから勢いが・・・ってぇぇぇ!!!
ちょ、ちょっと、兄様ぁぁぁ!!2階から物投げちゃ、だめでしょぉぉぉぉ!!??
「兄様!いくらなんでも、ひどすぎじゃありませんか!?2階から落とすとか、妹の頭を何だと思ってるんですかぁぁぁ!!」
そう拳を上げて非難すると、おいおい当然だろう?と言わんばかりの目で見られた。
まったく当然ではないからな!!!
「俺がドラゴンに近寄るわけがないだろう。お前と違って、俺は弱いんだ」
「わたしだって弱いですぅぅぅ!!ドラゴンに一撃で倒されますぅぅぅ!!」
そんな酷い風評に、断固たる抗議を叫ぶ。
まったく!!
一体兄様は、私を何だと思っているのかなぁぁぁ!!???
「いいから、ソレを読め」
そういうなり、頭を引っ込める兄様。
どれだけドラゴンと関わりたくないんだよ、羨ましいなぁ!兄様めぇ!
だが、仕方がない。なんだか王家の紋章とか見えてるから、読まなくちゃいけなさそうだし。
ええと、なになに?
『早く王宮に来なさい。 仲間に入れてもらえなかった王より』
なにこの恨みがましい感じの署名・・・。
本文より長いんですけどって。
やっぱりそうですよねぇぇぇ!!
天眼竜様来ちゃった上に、駄ドラゴンが今まさにココに居ますものねぇぇぇ!!
・・・コレって、行かない・・・っていう選択肢は、ないんですよね。そうですよね。
全ての元凶である、駄ドラゴンを恨みがましく見る。
っておいこら!駄ドラ!!脳天気に、蝶々を、追いかけてるんじゃない!!
あっそこは花壇だからぁぁぁ!!入るな!!壊さないでぇぇぇ!!!
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ああ、空を駆けるって、スバラシイネ!!
王宮までの道を、固定魔法陣で疾走中な私。一体、なんでなんだろうね?
え?馬車がないのかって???
いやいや、いくら我が家がそう裕福ではないからって、そこは貴族、馬車くらいありますよ?
駄ドラに、屋根、壊されましたけどねぇぇぇぇ!!!
王様に呼び出されて、仕方なく王宮へ向かうべく、馬車に乗った私。
うん、普通の行動だな!!
しかし、その途端に、駄ドラの馬鹿が、馬車の屋根を足の鉤爪で、こじ開けました。
そうだったぁぁ!!こいつ、私が見えなくなると、駄目なんだったァァ!!
うっかりしてた・・・ああ、ウチの馬車が・・・我が家の別宅に一台しかない馬車が・・・無残。
それにしても、屋根あり箱馬車がいきなり屋根なし軽馬車になったときの、中に居る人の気持ち、わかります??
私は、解りたくありませんでしたよぉぉぉ!!??
「キュルゥ?」
屋根が無くなり開放感溢れる馬車の前で呆然とする私を、不思議そうに見る駄ドラ。
・・・・天眼竜様、もう少し、この駄ドラに、こう、何かを教えておいてくれませんかね・・・。
この際、屋根なしで行こうかなと思ったけど、馭者はとっくに逃げているし。
でも、王宮に行かなくちゃいけないし。
そして、駄ドラに見えるように移動しないといけない・・・。
そして、固定魔法陣での移動、という現在に至る。
だって、それしか考えつかなかったんだものぉぉぉ!!
「かあちゃーん。あれなにー?」
「何か訳があるのよ・・指差しちゃいけません」
あぁ、純粋な好奇心一杯の子供の声と、気遣うようなおば様の優しい声が、私の心を抉る。
え?なんで駄ドラは注目されていないって??
それは私の血と汗と涙の努力で、アイツに『適切な距離』というものを、教えたからだよぉぉぉ!!
大きな鳥だな、くらいの距離で、飛んでいる駄ドラ。
距離はあまり関係ないらしい。要は見えればいいらしい。
一体、何がお前をそこまでにしたんだ。駄ドラよ・・・。
そして、駄ドラが見えないこの状況、私だけ変な注目浴びちゃっている。
王都内を固定魔法陣で移動するなんて、騎士様か魔術師様か、だ。
・・・・・間違っても、『貴族の令嬢』がすることではない。
ひそひそとした声と、怪訝そうな視線に耐える私エラい。
は、はやく、王宮に逃げ込まなくちゃぁぁぁ!!!
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