白いシャツに黒のロングスカート。
そんなお嬢様ぜんとした富貴子の格好が目の前にある。
長い黒髪と真っすぐに切られた前髪。
最近はメガネをせず、コンタクトレンズであることが多い。
「どうしたの? はやく脱がしてくれる?」
ふっくらとした唇が開閉して僕を誘う。
巨乳を通り越し、爆乳といえる胸部にどうしても目がいく。
僕は手を伸ばし、まずはシャツのボタンをはずしにかかった。
緊張で手がすこし震えた。
「裸の男に脱がされるわたし……」
「変な言い方するな」
「変でもなんでもないわ。いまの状況を端的に描写しているの」
他の彼女たちが心なしか前のめりになっていた。
ボタンが三つはずされると、胸の谷間が現れた。
白いブラジャーに包まれた巨大な二つの瓜。
太陽とは無縁の生活を彷彿とさせる白い肌をしている。
「エッチです、エッチです」
莉乃ちゃんがぼそぼそと繰り返す。
しかし目線ははずさず、こっちを凝視している。
シャツのボタンをすべてはずし終える。
富貴子が自分からシャツから腕をぬき、それをソファに置いた。
完璧な均整がとれた上半身が露わになる。
くびれ、ヘソ、そして胸。すべてが男を誘う。
「すごい……」
と、感心したように美亜が感想を漏らした。
すでに美亜と富貴子は裸を見せあっている。
さっきまで水着姿で川にもいたのだ。
しかし、いまは状況が違った。
服を脱がされていく富貴子の艶めかしさは異常だ。
妖艶と言えばいいのか、肌を見せるたびに空気に漂う何かが濃度を増す。
「ブラジャーを脱がす? それとも、スカートがいいかしら?」
「スカートからだ」
僕はすでに自分を失いつつある。
目の前にいる男の求める体をそのまま具現化したような女。
その女の裸を見たい。それだけに思考がフォーカスされる。
「どうぞ」
抵抗もしようとせず、富貴子が横をむいた。
「この脇の部分に留め金があるから……そう、それ」
手を伸ばすと、たしかに留め金のようなものがあった。
引っかけるタイプのもので、簡単にはずすことができる。
僕は、両手をつかってその留め金をはずした。
「チャックもおろすぞ?」
「どうぞ」
そのまま留め金の下にあるチャックをおろしていく。
じじじじ。と、チャックが動く音が妙に耳へと響いた。
「姉さん……背中綺麗」
美琴のほうからだと富貴子は背中をむけていることになる。
ふりむいて、富貴子が笑いかけた。
「ありがとう……ちょっとドキドキしてきたわ」
おそらく見ている彼女たちのほうが富貴子よりもドキドキしている。
それほどまでに服を脱いでいく富貴子はエロいのだ。
スカートのチャックをおろし終える。
それと同時、重力によってスカートは富貴子の足元へと落下した。
白い、ブラジャーとおそろいのショーツがお披露目された。
ほどよい肉感のあるヒップと太もも。
傷や染みが一切見られない長い足。
「靴下は自分で脱ぐわ」
富貴子がそう言って、片足ずつ紺色の靴下を脱いだ。
その動作は高質な舞踊のようだった。
「だぁ! エロいエロいエロいぞぉ!」
興奮したおやじのような四葉の発言。
僕は富貴子と目を合わせてから尋ねた。
「下着も……だよな?」
「あなたが望むなら」
いつの間にか立場が逆転している。
王様になって服を脱がせと言ったのは富貴子のほうだ。
それが僕の望みを叶えているという状況に変化している。
「ブラジャーからだな」
だが、僕は訂正しなかった。
富貴子にちかづくと、抱きしめるようにして背中へと手を回した。
巨大な双丘がブラジャー越しだが、僕の胸部を圧迫した。
「んっ……」
「エロい声、出すな」
「しかたないでしょ?」
ブラジャーのホックをはずすと、僕は富貴子から離れた。
はらり。と、ブラジャーが下へと落ちる。
隠す様子もなく富貴子は自分の胸部を僕へと見せつける。
弾力と柔軟さを兼ね備えた富貴子の胸。
頂上にはすこし赤みを帯びた乳首が鎮座する。
触りたい。顔をうずめたい。無茶苦茶に揉みたい。
そんな欲望が一瞬で僕の頭の中を飛来する。
「大きいぃ……」
憧憬に充ちた目で美琴が富貴子の胸を見る。
裸の僕。そしてほとんど裸の富貴子。
二人が正面から対峙している。
その状況を四人の彼女たちが見つめているのだ。
「下も脱がすぞ……」
「さすがに恥ずかしいわね……」
「いまさら」
と、僕は富貴子のショーツに左右から触れた。
親指をかけ、あえてゆっくりとおろしていく。
「あんまり、見ないでくれるかしら?」
富貴子が僕にではなく他の彼女たちに言う。
するする。と、ショーツが太ももを通過する。
手入れの行き届いた陰毛が姿をあらわす。
「最後は、自分で」
と、富貴子が足をあげてショーツを抜きとった。
「エロいのに……エロくない」
美亜がつぶやいた。
それは僕も感じていた。
富貴子の裸体はすでに芸術の域に達しているようだった。
男が求めるすべてを詰めこんだ富貴子の身体は、性的なものを感じさせる。
しかしそしてそれ以上に、崇高な芸術作品を彷彿とさせた。
「これじゃ、服を着てるのが変な気分になってくるね……」
美亜の言葉に、他の彼女たちも否定はしなかった。
同意こそしないが、同じ気持ちなのだろう。
「市民権を得そうね」
微笑み、富貴子が僕を見た。
さすがに恥ずかしいのか、頬が朱に染まっている。
目は潤み、黒い瞳がきらりと輝く。
「次は、誰かしらね……」
まだ王様ゲームはつづく。