レイフォンの魔王の接待は続いていた。

「魔王様、どうですか?」

「うむ、もう少し強くでもかまわん」

「わかりました」

魔王の背後に立ち肩たたきをしているレイフォン。

「ところで、ミリベアスよ? レギアスから聞いたのだが、お前には気になる人間がいるらしいではないか?」

レギアスとは魔王の一番の側近の魔族。

魔王はレイフォンをミリベアスの下僕と完全に勘違いしていた。

「え……はい」

苦笑い気味のミリベアス。

(お父様…今、お父様のうしろに立っている人物がわたくしの気になっている人間です)

とは言えないミリベアス。

レイフォンの考えの糸がわからない為に下手に答えれない。

魔王は話を続け、レイフォンは肩たたきを続ける。

「我輩がこのような人間の国に来たのはお前に会いに来たとの理由もあるのだが、もうひとつはその人間を見てみたいと思ったからである。マクベアスは隠しているようだったが、あやつはその人間に負けたのではないか? 違うか?」

「…そうです。お兄様はその……人間と戦い負けました」

魔王の問いに頷いたミリベアス。

「へぇ〜、どんな人間ですかね? ね? 魔王様? 俺も見てみたいです」

親子のやりとりに他人事のように口を挟むレイフォン。

(貴方の事よ! レイフォン!)

ミリベアスは心の中で叫んだ。

「うむ…やはりな。あやつめ、やはりそうであったか。それでミリベアスよ? その人間はどこにいるのだ? 我輩も一度見てみたいのだが?」 

「えっと…そのですね…」

どう答えればいいのかミリベアスは迷う。

「ミリベアスよ、どうした?」

「ミリベアス、もったいぶらないで答えろよ? 俺も見てみたい」

魔王に同調するレイフォン。

「…レイフォン…貴方は鏡を見れば見れるわよ?」

(誰のせいで迷ってると思ってるのかしら? 貴方のせいよ、レイフォン?)

そんな思いを込め、ミリベアスはレイフォンを見て言った。

だが

「は? 鏡? なんだそれ?」

レイフォンには伝わっていなかった。

「……」

演技には見えない素のレイフォンを見てミリベアスは黙り込んだ。

(わからない…わからないわレイフォン。貴方の考えがさっぱりわたくしにはわからないわ…)

「我輩に答えられないとでも申すのかミリベアス?」

魔王は尋ねる。

「いえ…えっと…ですね…」

ミリベアスは悩む。

「ほら、答えろよミリベアス」

レイフォンは急かす。

「……」

レイフォンの考えを考慮して自分が答えないでいるのに、レイフォンはまるで他人事のよう。

ミリベアスはレイフォンの考えの糸を読むのをやめた。

正直、疲れてきたのである。

「…お父様? お父様のうしろに立っている人間…レイフォンがわたくしの気になっている人間です」

ミリベアスは答えた。

「何? この下僕がか?」

うしろを振り向きレイフォンを見た魔王。

そして、レイフォンは

「俺の事か!?」

普通に驚き見せていたのであった。