ライト達は地図の欠片を集めるついでに簡単なクエストをこなしに行き、マロンは学校の宿題をやりにログアウトしていった。

 そして残った俺は何をしているのかと言えばアイテム作成に取り掛かっている。

 今作るべき物は4つだ。フィーネのアクセサリー装備、ルルのナックルダスター、ティナの靴。そしてマロンのハルバート。

 ナックルダスターとハルバートにはどうにかして対竜の効果を付けてやりたいので、まずは対竜装備の原型として『バルムンク・レプリカ』を作る事にした。

 このバルムンク・レプリカと言う剣はファフニールLv1の討伐報酬で手に入るレシピを使うと作成出来るようになる武器で、性能はこんな感じ。

バルムンク・レプリカ ☆☆☆

ATK140 耐久値200/200

対竜・小

竜墜剣・バルムンクを模して作られた剣

僅かながら竜へ与えるダメージが上昇する

 うん、本家にはとてもじゃないけど及ばない性能だよ。ただイベントで作れる武器としてはそこそこ良いアイテムなんじゃないかな? 必要な素材も黄金竜の鱗以外はいつでも採取できる物ばかりだし。

 普段俺はレシピなんて一切見ないで直感任せにかなり適当な装備を作ってるんだが、レシピってかなり便利だわ。

 素材を揃えて手順通りに作れば簡単に格好いい武器が出来上がる。作成に掛かる時間も5分から10分とお手軽だ。

 この剣の場合だと、炉に素材を順番に放り込んで時間になったら取りだし一定回数金槌で叩くだけで見た目まで完璧な仕上がりになる。

 まぁ1回自力で作ればPMアイテム以外なら素材揃えてスキルで自動作成できるんだけどな。これも幻影水晶の剣と石のトマホークを量産する時くらいにしか使ってなかったりする。

 俺なりにバルムンク・レプリカの作り方からある程度対竜の付け方を考察してみたんだが、とりあえず竜の素材ぶち込んで置けばよさそうな気がする。鱗だけで対竜・小が付くなら牙とか爪とかも入れておけばきっと能力付いてくれるよな?

「うーん……成功したけど、なんだこれ?」

滅竜鉄棍・バールムンク ★★★★

ATK160 耐久値400/400

MP+50 対竜・中 詠唱短縮・小

バールのような形をした棍棒

棍棒だがカテゴリーは杖な謎の武器

竜へ与えるダメージが上昇し、魔法が発動するまでの時間が少し短縮される

 杖なのか棍棒なのかバールなのかまるで分からない。分からないけどこれも屋台で売ってみるか?

 2連続でイベント武器が剣だったせいで魔法職のプレイヤーがスレで愚痴ってたのを見かけたし、結構売れるかもしれない。

 若干予想とは違う仕上がりになってしまったが、それでも対竜の効果は付けられたことだし、次は本番といこうか!

「まずはルルのナックルダスターからだな」

 大本になる素材は先ほどバールムンクを作った時に余ったインゴットでいいだろう。ここから形を整えて装飾品を付け足していく。

 ルルはたしか手数で押すタイプだったっけ……エメラルド辺りを加工して嵌め込めばAGI上がるかな? こう、風属性っぽいし。

竜鱗のゲイルガント ★★★★

ATK80 DEF60 耐久値300/300

AGI+50 属性付与・風 対竜・小

防具と武器両方の性質を備えた珍しい装備

装備した者は疾風の如きラッシュが放てるようになる

僅かだが竜へ与えるダメージが上昇する

「ちょっと素材を足しすぎたか……?」

 思いつきで色々加えていったら思ったより大きくなってしまった。

 まあガントレットもナックルダスターも似たようなもんだよな? うん、ルルの装備はこれで完成ってことで! 防御も出来てお得だぜ!

 次はマロンのハルバートを弄っていこう。

 本当は1から作る方が気が楽でいいんだけど、修復と強化を引き受けた以上ここから改造するしかない。

 マロンのハルバートは店売りの☆1武器なので、修復はともかくどう強化していいか悩むな。とりあえず竜の素材はぶち込むとして他に何を使うかなぁ……お? リーゼントライノの剛角なんてなかなか良さそうなアイテムだな、採用!

 強化する前にきちんと修復して……っと。

矜持の戦斧 ★★★

ATK240 耐久値120/120

対竜・小 逆境

強敵を前にしても決して後退することのないリーゼントライノの剛角を使用した戦斧

その真価は逆境でこそ発揮される

アレンジにより竜へ与えるダメージが上昇している

 おっ、逆境が付いたか! マロンならピンチに陥る前にモンスターを倒してしまいそうだが、あって困る物でもないだろう。

「ふぃ~……おっと、もうこんな時間か」

 そろそろ夕食だし、手早く残りの2つも作らないとな。

 フィーネのアクセサリーは魔法系のサポートで、ティナの靴は……くっ、良い案が浮かばないからデザイン重視だ!

四元のアミュレット ★★★★

DEF10 耐久値400/400

MP+200 詠唱短縮・中

4つの宝石が嵌め込まれたアミュレット

それぞれ異なる属性を表す宝石の輝きが正しき魔力の流れをサポートする

あにまるすりっぱ ★★★

DEF10 耐久値180/180

AGI+20 ジャンプ力上昇・中 アニマルステップ

ふわふわもこもこのスリッパ

野生の力が宿っている

日によって見た目が変わる

 気がついたら久々にファンシーな装備が出来上がっていた。俺が装備する訳じゃないからいいんだけど、ティナに引かれたりしないかこれ? いや、決まったステップを実行すると仲間にバフが掛かるアニマルステップはチアリーダーのジョブを持つティナにはうってつけの能力だしきっと喜んでくれる筈だ。そう信じよう。

 フィーネにあげる方にはニ"ャーーーーーッ!?を作った時に使った4種の宝石を使ってみたんだが、なかなか良い感じだな。なんとなくリリィが装備した方が強そうな気がするけど気にしない。

 さて、装備も完成したことだし……忘れない内にガチャ引いてログアウトしよう!

 ガチャチケットを使用するといつの間にか見たことない部屋に転移していた。

「漸く……漸くガチャが引ける!」

「おやいらっしゃい。もうガチャチケットを集めてきたのかな?」

「俺のは特典アイテムだ! 前回歓楽島に来た時に引き忘れたのさ!」

「特典アイテム? ああ、懸賞に当たった人ね。もう引きに来ないのかと思ったよ」

「こんな所になければ早々に使ってたよ」

「ごもっともだね。私も最初から今のスタイルにしておけばよかったろうにと思わずにはいられないよ。で? 早速引くかい?」

「勿論!」

「チャンスは1回限りの特別なガチャだ。ガチャマシーンDX君フィーバーの口にチケットをセットしてね」

 DXでフィーバーだと!? これは絶対良いアイテムが確定で当たると見た! いざ全身全霊でガチャらん!

「おりゃ!」

ガコン!

ゴロゴロゴロゴロ……

ピコン!

《契約紋・ブラウニー》

「おお、なかなか良い物引き当てたね」

「ブラウニー……?」

 自由にチョコレートケーキを召喚できる能力だろうか?

「それは妖精と契約できるアイテムだよ。体の好きな所にその紋様を張り付ければ契約完了って訳」

「チョコレートケーキの妖精?」

「あはは、もしそうだったら私が契約したい所だけどね。ブラウニーはお手伝い妖精だよ。恥ずかしがり屋だから君が起きてる間は姿を見せないけど、寝ている内に色々なことを手伝ってくれるのさ」

「ふーん」

 つまりログアウト中に消費アイテムとか作っておいてくれるってことか。あれ? 地味にすごくないか!?

 と、とりあえず左手の甲に契約紋を張り付けて……よし、ファースに戻ってログアウトしてみよう。次にログインした時、ブラウニーがどんな仕事をしてくれるのかが分かる筈だ。

 でも夕食食べたくらいじゃ作業も進まないかもしれないな……。仕方ない、実験の為に今日のスプルドはここまでにしておくか。

「明日までよろしくな、ブラウニー」

 なんとなく契約紋にそう声を掛けて俺はログアウトした。