今日はゴールデンウィーク最終日。

 昨日まではかなりヘビーなプレイを強いられたが今日はなんの予定も入っていない。つまり、後回しにしていた案件を消化するにはもってこいって訳だ!

「で、なんでマルティさんがいるんです? ネタ提供なら昨日したでしょ」

「新刊にはアクションシーン入れようと思ってね、その取材ってとこかな? ボク等は無限のイマジネーションを動力源に情熱を燃やす事が出来るけど、それはそれとしてリアリティも大切だからねー」

「なんとなく分かるような分からないような……でも俺の動きあんまり派手じゃないっすよ? LUK特化だし」

「その言葉、少なくとも空飛びながら言う台詞じゃないからね?今の所空飛べるプレイヤーなんて君だけなんだからさ。それに変なエフェクトとオーラ撒き散らしながら戦うんだから十分派手じゃん!」

 言われて見れば確かに俺って派手だったわ。派手なだけでそこまで強くないのが悲しい所だけどね!

「あーそうだ、マルティさんと共闘したの災厄の時でしたよね? 俺あれから全然レベル上がってないんであの時と動き変わりませんよ」

「ふふふ、結構色々やってるみたいなのにそんな訳ないじゃーん」

「いやマジなんですって。ホームエリアの整備に便利だからって今のジョブから変えるの放置してたらズルズルと今まで来ちゃって。今日は特に予定無かったんでダンジョンマスターのジョブ解放出来そうなジョブでも育てようかなぁ、なんて思ってた所なんですよ」

「この規格外のホームエリアにダンジョンまで追加する気なの!?」

 そんなに驚くような事だろうか?

 今ある施設と言えば俺のホームにショッピングモール、小規模な遊園地と宇宙船用のターミナル。後は巨大バルムンクの突き刺さった広場くらいだし、そこにダンジョンが追加されるくらい……うん、十分過ぎる程におかしいな。俺だけゲームジャンルが他のプレイヤーと明らかに違っている。

 自重? するわけないじゃん。チート級のモンスターと違ってホームは俺の血と汗と涙の開拓あっての物だ。誰に恥じることもなくこのまま突っ走ってやんよ! それに――

「遊びは全力でやらないとつまらないし!」

「そうかもだけど規模が大きすぎるでしょ!?」

「本筋じゃ街や国復活させるみたいだしこれくらい普通っしょ! たぶん!」

「それは複数のプレイヤーでやるからでしょうに……」

 その後何だかんだでマルティさんもレベル上げに付き合ってくれる事になった。なんでも成長過程を描くのも一興とのことだ。そろそろ描いているのが本当に同人誌なのか怪しくなって来たが深く考えない事にしよう。

 そんな事より次に俺が育てることにしたジョブだ。ダンジョンを作るならやっぱりモンスターと関わりがある物の方が良いだろうと安直に考えて導き出したジョブ、それはテイマーだ!

 知ってた? 今更かよ? 俺だってそんな事を言われるのは百も承知だっての。でも転職出来るジョブの中で関係ありそうなのがこれと死霊使いくらいしか無かったんだからしかたないじゃんよ!

「Lv1で使えるジョブスキルは……テイムモンスター、まんまテイム用のスキルか。シケてんなー」

「凄いモンスターを連れてるって噂になってるからてっきりテイマーのジョブは育ててあるんだと思ってたんだけど、まだだったんだね」

「言葉分かりますからねー。テイム用のスキルが無くても案外交渉次第で何とかなるんですよ」

「モンスター言語ねぇ……ボクも機会があったらとってみようかな、っと早速モンスターだよ」

「ヒャッハー! 経験値置いてけぇ!」

 今俺達がいる場所は災厄のボスモンスターと戦った時に来た森の奥のエリアだ。

 ファースからもアドベントからも程よく離れたこのエリアに出現するモンスターは、王都周辺に出現するモンスターよりもレベルが10~15ほど高いので今の俺にはかなりいい狩場と言えるだろう。

 もっともソロで挑む場合はボロ雑巾のようにされてしまうのがオチだけどな。今はマルティさんとパーティを組んでいるので比較的安全だ。

 ちなみにペット達は誰も連れてきていない。奴らは無数のファフニールの屍を踏み越えて強くなりすぎてしまったので、連れてきた場合自ずとパワーレベリングみたいな形になってしまう。もちろんレベリングされるのは俺だ。

 レベルを上げるだけが目的なら別にパワーレベリングでかまわないんだけど、それだと戦闘用のスキルが育てられないので却下だ。レベルだけでゴリ押せるほど神は甘くないだろうしな。グーヌートの野郎に魔改造インテリアを叩き込む為には俺自身も強くならなくてはいけないのだ!

「これで20匹! んっん~、レベルアップのSEが耳に心地いいぜ」

 マルティさんがモンスターに逐一デバフと状態異常掛けてくれるおかげで非常にスムーズに狩れて楽しいぜ!

「ねぇ、バルムンクは使わないのかい? どうせまだ余ってるんでしょ?」

「え? あー……たしかにバルムンクは強いんですけどね、俺が使うとステータスがショボいせいで竜相手でもなければ幻影水晶の剣使った方が火力高いんですよねー」

「宝の持ち腐れとは正にこの事だね」

「くっ、言い返せねぇ……まあさすがに覚醒したバルムンクならそんなこともないんでしょうけどね。あれATKだけでも軽く倍以上になってたし」

「は……?」

「ん?」

「待って、ちょっと待ってライリーフ君。君、何処でそんな情報仕入れたんだい?」

「大会の時バルムンクは家の家宝だから返せーって騒いでた子いたじゃないですか。ちょっと悪ノリであいつ連れてファフニール討伐に行ったら拾ったバルムンクで覚醒イベント起こしやがったんですよ」

「……」

「しかもあいつ最後に覚醒したバルムンクで俺ごとファフニール攻撃してきやがって……マルティさん聞いてます?」

「ごめん、ちょっとまだ情報に頭が着いていけてないや……え? あの洞窟ってNPCも連れて行けるの? バルムンクって戦闘中に拾えるの!? はっ、まさかあんなにバルムンクを持ってたのはその方法を知っていたから……?」

「いえ、ペット達が自主的に拾い集めて来ただけっす」

「むしろそっちの方がおかしい!」

 それは俺もそう思う。俺のペットは全員単独行動のスキルを持ってるからプレイヤー無しでファフニール周回なんてふざけた事をしてる訳だが、実は単独行動って一般的にはデメリットスキル扱いだからね?

 テイムしたモンスターがパーティを抜けて自由に動けると言えば聞こえはいいが、実際はテイマーの命令を無視したり戦闘中に勝手な行動をとるようになるスキルだし。スキルの獲得条件もテイムしたモンスターがプレイヤーより格上だったら確定で付くみたいだしな。

 この情報を知ったときはつくづくモンスター言語のスキル持ってて良かったと思ったね、ノクティスとルクスに勝手な行動されたらと考えるだけで肝が冷えるし。

「ライリーフ君、この情報掲示板に流してもいい?」

「うちのペット達の情報を!? それは勘弁してくださいよ! ダンジョンだって奴らを隔離するために作るんですから!」

「そっちじゃなくてバルムンクが覚醒するってほう。心配しなくても個人的な情報は流したりしないよ」

「ああそっちか。別にいいですよ」

「やった! それじゃその時の戦闘について詳しく教えて!」

「たしか少年の武器が壊れて、それから――」

「なるほどなるほど――」

 その後、掲示板がお祭り騒ぎになったことは言うまでもない。

 数多のプレイヤー達による地道な検証によって正確なバルムンク覚醒の手順が解明されたのはGWイベント終了3日前のことだったとか。

 俺もちゃんと覚醒させたのかって? いやーその時は別のことしててすっかりバルムンクの事なんて頭から抜け落ちててさ、気が着いたらイベント終わってたんだよね。ちょっと惜しいことしたかもな。