ギルドにレヴィアとアケノさんを案内し、二人のギルド登録用のクエストを手伝うことになったのだが……。

「う~ん……なあウォーヘッド、アケノさんの動きがとても素人のそれとは思えないんだがどうよ?」

「前に別のゲームやってたとかじゃないか? VR空間での体の動かし方に馴れてればあれくらい出来ても不思議はないだろ」

「さっきジョブは支援職だって言ってたから補正掛かって無い筈なんだけどそれでもやれんの?」

「ハッハッハ、んなもん普通無理に決まってんだろ!」

「だよな!」

 あれかな? 姉さんってばプロゲーマーの友人でも引っ張って来たのかな? これじゃ俺達が色々教える必要ないじゃん。

「ふぅ……あっ、ごめんなさい……一人で戦っちゃって……」

「鬱憤を晴らすかのようないい暴れっぷりだったわね、アケノちゃん」

「は、はは。ソンナコトナイヨー」

「でも本当にスゲーよな。キックラビットの攻撃初見で避けてカウンター叩き込むとか、こいつらにサンドバッグにされてた俺からすると尊敬ものだよ!」

「そ、そうかな?」

 ふむ、褒められると普通に嬉しそうだなこの人。でも道中の会話で容姿褒めたら瞳からハイライトが消失したんだよなぁ。姉さんはそれ見て楽しそうに笑ってたし意味が分からん。

「そう言えば姉さん、じゃなくてレヴィアのジョブって何なの? まだ聞いてなかったよね?」

「私はサモナーにしたわよ」

「へぇ、サモナーかぁ。ウォーヘッド、サモナーってどんなジョブだっけ?」

「たしか精霊とか妖精と契約して召喚できるジョブだったかな。テイマーと違って常に側に契約したモンスターを連れてる訳じゃなくて、戦闘中とかにMPをコストに一定時間呼び出すんだ」

 なるほど、食費がかからない代わりにMPもっていかれるのか。なんとなくテイマーよりビジネスライクな関係に見えるな。

「テイマーと比べた時のサモナーのメリットは、召喚できるモンスターは普通のモンスターより強力でパーティの上限に関係なく召喚できるってところか。そのかわりMP消費が激しいのと召喚時間が短いのがデメリットだな」

「最初から契約出来てる子がいるんだけど、この子も強いのかしら?」

「呼び出した回数とかプレイヤーのレベルで進化するんで、2体目と契約してからも相棒枠としてずっと使っていけるくらいには強い筈ですよ」

「なるほどなぁ」

「ライリーフ全然役に立たないわね。ウォーヘッド、他にも色々教えてくれるかしら?」

「喜んで!」

 だってサモナーのジョブ就いたことないんだから知らなくてもしゃーないじゃん。おや? アケノさんの視線がまた険しくなっている。

「野郎人の娘に鼻の下伸ばしやがって……」

「どうかしたんですかアケノさん?」

「えっ!? あ、いや、その……何でもないの! オホホホホ!」

「オホホホホって……」

 そんな笑い方する人初めてみたぜ。

 にしてもますます訳が分からん。男嫌いな訳でもなく、別に百合的な趣味でもないらしいし……ハッ! ふふふ、なるほどなぁ。俺はついに分かってしまったぞ?

 アケノさんはウォーヘッドに気がある! きっと一目惚れってやつに違いねぇ。なのにウォーヘッドは姉さんと話す時ばかりテンション上げてるのを見てやきもちをやいているんじゃないか!?

 リア充スレイヤーを卒業した俺ではあるが、だからと言って他人の色恋の協力をしてやる程に腑抜けてはいないぜ! ここは陰ながら生暖かい眼差しでこの三角関係を見守ってやろうじゃないか。

「何だろう……今もの凄くイラッとくる勘違いをされた気が……」

 おっと、アケノさんは意外と勘が鋭いな。視線を切るのが一秒遅ければ捕捉されていた所だ。見物はもっと慎重にせねば……。

「ってやば、そろそろ飯作んなきゃ。ウォーヘッド後任せた!」

「おう、任された!」

 ちょっとゲームし過ぎて色々作ってる時間はなさそうだから今日は鍋にしよう。簡単で美味いからな!

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

―ライリーフの去った後―

「さて、ちょうどいいから貴方に色々聞いておこうかしら?」

「何でも聞いちゃってくださいレヴィアさん! 効率のいいクエストですか? それともイベントについて?はっ、まさか俺のプライベートについてだったり!?」

「テメェ殺されたいのか……?」

「えっ……」

 娘に粉かける男を前に殺気を押さえられなかったお父さん。ギリギリでバ美声が崩れなかったのは奇跡である。

「アケノちゃんステイ。聞きたいのは悠二、ライリーフがこのゲームで普段どんな風にしてるかよ。仲いいんでしょ貴方?」

「そ、それなら俺よりもライトの奴に聞いた方がいいと思うぞ。リアフレだって言ってたしな」

「それじゃあんまり意味無いから貴方に聞いてるのよウォーヘッド」

 それからウォーヘッドはアケノさんの視線に内心怯えながらも知りうる情報をキリキリ話した。兎相手にボッコボコにされていた事、やたらと強い鳥を連れている事、毎週屋台で荒稼ぎしている事、自作のショッピングモールのオーナーになった事等々それはもう素直に。

「このゲームのジャンルってRPGじゃなかった……? まあいいわ、色々教えてくれてありがとね」

「い、いえ! お役に立てて何よりです!」

「特に問題なさそうねアケノちゃん」

「ん……そだな」

「それにしても随分楽しそうに遊んでるのね。折角だから私達もこのまま続けましょうか」

「うぐっ、勘弁してくれよ……」

「さぁウォーヘッド。クエストの続きをしましょうか」

「は、はい喜んで!」

「ぐぬぬぬぬ……」

 娘の事が心配なのでなし崩し的にこれからもゲームを続けることにした父なのであった。