I Somehow Got Strong By Raising Skills Related To Farming
Long time no see.
ひとまず村長の家を出た俺は、三人と合流するために足を進めていたのだが、そこで誰かに呼び止められた。
「アル! 帰ってきてたのか!」
そう言いながらこちらに駆けてきたのはテスタで、俺の前まで来るとテスタは足を止めた。
「久しぶりだなテスタ。相変わらず変わらないな、お前は」
皮肉じみたように言うと、テスタも負けじとニヤニヤしながら口を開いた。
「一年も経たないのに変わるわけないだろアホか。それにしてもお前は随分変わったな。あんなに可愛い娘を3人も連れて村に帰ってくるとはな。…………三股か?」
「張り倒すぞ」
「やってみろ」
「了解した」
「ちょ! おま! 待て! ギブキブキブキブギブ!!! もげる! もげちゃう! 五体満足じゃなくなっちゃう!」
「……仕方ないな」
拘束を解くと、テスタはよろよろとしながら立ち上がり、深呼吸をし始めた。
「すぅ……はぁ……。自由って素晴らしいな、アル」
「お前やっぱりバカだろ」
「ところでアル、何かあったのか? 村長が村人に召集をかけてたんだが」
こいつ俺の言葉スルーしやがった。
「はぁ……。実は村の近くに危険な魔物が出没してだな。俺たちが討伐に来たんだが、念のために村の人たちには避難しておいてほしいんだ」
「そうなのか。で?」
「で? って……なんだ?」
「それ嘘だろ? だから本当のことを教えてくれないかってことだ」
え? バレるの早くね? で、でもまだ確信には至っていないはすだ。どうにか誤魔化ーー。
「何か策を考えてるんだろうが、お前は嘘をつくときに眉が少し寄るクセがあるんだ。諦めろ」
「は!? 嘘だろ?」
「おう。嘘だ」
うん。駄目だな。勝てねぇわこりゃ。
「……参った。俺、そんなに嘘つくの下手か?」
「いや、別にそういうわけじゃないけど、伊達にお前の幼馴染みやってないからな。本当のこと言っているのか、それとも嘘ついているのかくらいわかるってもんだ」
「お、おう。そうか……」
ドヤ顔でそんなこと言われても俺はテスタが嘘ついてるかどうかなんて全然わからないから、『お前もそうだよな!! な!?』みたいな目で見るのやめろ。
むしろこの心中を察してもらいたいくらいだが……無理か。
「……で、改めて聞くが。何があったんだ?」
俺は諦めの意味を含めた溜め息をつき、口を開いた。
「他の村の人たちには内緒で頼むぞ、実はーー」
テスタに村長と同じように説明すると、テスタは『なるほどなるほど』と言いながら頷き、
「なるほどな。まったくわからん」
「わかれアホ」
「しかし面倒なことになってるな。本当に邪神が居るんなら、どっかで俺たちを見てるってことだろ?」
充分理解してるじゃねぇか。
「ま、そういうことだな。だからあんまり刺激するようなことはしたくはないんだが、村の人たちを戦いに巻き込みたくはないし、こうするしかなかったんだ」
「わかった。とりあえず村長には本当のことを聞いたって伝えて、俺は村の人たちの引率を手伝ってやるよ。終わったら一旦合流しようぜ、ちょっと伝えておきたいこともあるし」
「なんだ? 何かあるなら今でも良いぞ?」
「そうしたいのは山々なんだが、話してる間に邪神が行動を起こしたら村の人たちがどうなるかわからないだろ? それに対したことじゃないから後回しでも全然大丈夫だ」
「そっか。なら頼んだ。俺は何か起こらないか村の中で見張ってるよ」
「おう。最近そこに行くとちょっと怪しい気配を感じるからもしかしたら邪神の居場所のヒントになるかもしれないと思った場所の話は後でな」
「何が対したことない話だ! 無茶苦茶重要な話じゃねぇか!!」
「じゃあなー。俺は引率してくるわ」
「ちょ! テスタ! 話はまだーー!」
テスタは俺の方を見向きもせず、そのまま村長のところへと向かってしまった。
「……はぁ、なんかテスタには勝てる気がしないな……。…………いや、物理でなら勝てるか」
言った直後、それじゃダメだろと自分にツッコミを入れることになった。