【イチノジョウのレベルが上がった】

【錬金術師スキル:分解を取得した】

【魔術師スキル:氷魔法が氷魔法Ⅱにスキルアップした】

【見習い法術師スキル:盾魔法を取得した】

【見習い鍛冶師スキル:銘入れを取得した】

【レシピを取得した】

蟻が撤退したことで、レベルアップのメッセージが脳内に流れた。

くそっ、蟻のくせになかなかやりやがるな。今度出てきたら、巣穴を塞いでやる。

あと、無職レベルがいつの間にかレベル79まで上がっている。

この調子だともう少しでレベル80に行けそうだ。

「三人はどうだ? レベルは上がったか?」

「はい。獣戦士のレベルが10になり、獣の血のスキルを取得しました。使用すると10分間だけ物理攻撃力と速度が劇的に強化される能力です。ただ、10分経過すると1分間動くことができなくなるデメリットもあるようですが」

「使いどころを選ぶスキルだな」

「はい。それと、木こりのレベルが11になりました。第二職業を拳闘士に変えていただきたいのですが」

「おめでとー! そういえば今回、ハルも結構蟻を倒していたからな」

ハルの第二職業を拳闘士にするように念じた。

ハルに確認するように頼んでみたところ、無事に拳闘士になれていたそうだ。

「イチノよ、先ほどは助けてくれたこと感謝する。だが、一つ聞きたい。我に何か黙っていることはないか?」

「何がだ?」

「狩人のレベルが4になった。今回我は何もしていない。パーティーを組んでいるとはいえ、我に入ってくる経験値は本来は1/8に過ぎない。アーミーアントは確かに集団になると手ごわいが、経験値はそれほど高くないと聞く。いくらなんでもレベルが上がりすぎだ」

「いいことじゃないか」

「イチノよ、我のことを愚者だと勘ぐって居るのはこの際何も言わん。だが、先ほどキャロルに言ったであろう。『第一職業は採取人のままでいいのか?』と。それはつまり、第一職業を変更することも可能ということだ。キャロルはごまかしていたが、彼女の誘惑士の呪縛から解放したのもイチノだろう」

「……マリーナ、お前ってバカじゃなかったんだな」

まぁ、別にばれてもいいかと思っていたが、発言が迂闊すぎるだろ、俺。

このままだと俺の方がバカだぞ。 

「天恵の一つだよ。俺はコショマーレ様とトレールール様、二人……いや、二柱から天恵を貰っている。俺が倒した経験値は20倍になる、あと職業は変更自由だ」

「……それだけか?」

「いや、まだまだ秘密はある。全部手の内を明かしたほうがいいか?」

俺が笑って尋ねると、マリーナは黙って首を横に振った。

「いや、話してくれたことには感謝する。ただ、世の中には隠しておいたことのほうが良いこともあるだろう。我の手品(超魔術)のタネ(根源)のようにな。それと、弓装備は覚えた。次は平民に戻してほしい」

わかったよ……とマリーナの第二職業を平民に戻した。

マリーナは普段は空気を読まないくせに、芯では空気を読める子のようだ。

「キャロはどうだ? 途中で誘惑士を適当に別の職業に変えちまったが、誘惑士のレベルはどうなってるんだ?」

「はい……途中までですが、しっかりと誘惑士のレベルは5にまで上がっています。月の魅惑香が月の魅惑香Ⅱに上がりました。固有スキルなので、どうなったのかは確認できません。あと、魅了魔法を覚えました。魅了《チャーム》という魔法です。確か、歌魔術師が使う魔法だったはずです」

「歌魔術師?」

「歌手と魔術師、両方のレベルを上げたら解放される上位職業です」

「そんなのがあるんだ……」

知らなかった。

それにしても――

「さて、次はマリーナも魔弓を使えるようになったからだいぶ楽になるはずだが、続きは明日にするか」

俺は鎧と上着を脱いでみる。

回復魔法で怪我は治ったが、装備はそうはいかない。

鉄の鎧は酸を浴びた部分が少し変形していて、その鎧の隙間から入ったのであろう、服の一部が焼け落ちている。

服の方はもう使い物にならないだろう。

幸い、俺が今着ている服は何着か買っているから、アイテムバッグから出して着替えた。

さて、鎧はどうしたものか。

このまま使ってもいいけれど、見栄えは正直あまりよくない。

「あ……あの、イチノ様」

キャロが何か言いたげに俺の名前を呼ぶ。

「楽しみが一つ増えたな」

「え?」

「ほら、俺、今見習い鍛冶師も鍛えてるからさ、この程度の鎧くらい簡単に直せるようにならないとな。てか、あの蟻の毒って本当に痛みだけなんだよな。HPは全然減ってなかったから大丈夫だよ」

「私が聞いた話だと、ドラゴンやロック鳥といった巨大な魔物は、わざと蟻の酸を全身に浴びて、寄生虫を駆除するそうです」

ハルが教えてくれた。

蟻浴か。

地球でも一部の鳥とかは蟻酸でダニなどを駆除すると聞いたことがある。

あれと一緒か。

でも、金属を溶かす酸で寄生虫を取り除くとは、この世界の魔物も凄いな。

「アーミーアントの酸は、金属の合金を作る時に使うことがあると聞きました。そのため、蟻の体内にある酸袋は冒険者ギルドでも買い取りをしています。解体の高い技術が必要ですが」

「そうか。ハル、キャロ、マリーナ、悪いが蟻を集めて来てくれ。俺が解体するから」

職業を狩人と解体士に変更した。

解体士もまた、魔物の解体で経験値が増える職業だ。

腹に切れ目を入れ、酸袋を取り出すのには、確かに腕が必要なようだ。

何しろ、割れやすいのだ。

俺達が倒した蟻の三割はすでに戦いの衝撃で酸袋が割れていた。

そこから漏れた酸に触れたら化学熱傷《やけど》するのは間違いないから、そこもフォローしながら解体しないといけない。

重さだけならブラウンベアの十分の一にも満たないのに、作業は数倍疲れた気がする。

本来なら解体した後に運搬するのにも繊細さが要求されるのだが、俺の場合はアイテムバッグに入れたら簡単に運べるから楽なものだ。

あと、アーミーアントの牙や皮も売り物になるそうだ。

蟻の肉も食べれるそうだが、俺は食べる気はないので、これも売ってしまおう。

合計、蟻を三十体解体した結果、

【イチノジョウのレベルが上がった】

【解体士スキル:食品・鉱物・金属鑑定が食品・鉱物・金属・魔物素材鑑定にスキルアップした】

【解体士スキル:解体Ⅱが解体Ⅲにスキルアップした】

【解体士スキル:器用さUP(微)が器用さUP(小)にスキルアップした】

【狩人スキル:鷹の目を取得した】

【狩人のレベルはこれ以上あがりません】

【称号:狩人の極みを取得した】

まぁ、報酬はばっちり貰えたからヨシとするか。