「父さん、お願いがあるんだ」

「ダン、君からのお願いは一年ぶりだね」

「セロとウィルを、学院に行かせてください!」

「……」

「あいつら、荷物持ちもしていて、夜にしか勉強してないのに、もう小学校上級終わってるんだ。もっともっと、学びたいって気持ちも大きい。このまま終わらせたくない」

「それは、本人たちの希望なのかい?」

「聞いてみたことはないんだ。たぶん、行けるわけないってあきらめてる」

「セロくんは、冒険者になりたいんじゃないのかい?」

「ギルド長だって、ノアだって、冒険者だって学院出身の人は多いじゃないか」

「セロくんとウィルくんは、アーシュちゃんと、マルちゃんを早く養いたいのじゃないかな」

「父さんだってわかってるはずだ。アーシュはふつうの子じゃない、見かけがきれいなだけじゃない。今はまだ知られていないけど、価値が知られてしまったら、普通の冒険者じゃ守れないだろう!マルだっておそろしいほどきれいで、強い。だからこそ、守れるように、せめて学院を出たという価値をつけさせたいんだ!」

「ダン、君が力をつけて、守ることもできるんだよ」

「!」

「セロくんとウィルくんが、冒険者をやっている間に、君が力をつけて、アーシュちゃんを守る……」

「話がずれてるだろ!そういう話じゃない!オレが幸せになるんじゃない!セロとウィル、アーシュとマル 、友だちがみんな、幸せにならなくちゃ意味がないだろ」

「ダン、よく言った!」

「!じゃあ」

「少し待ちなさい。君に言われなくても、私も考えているし、領主も考えている」

「領主さまも?」

「良い人材を育てることも大事だからね。君の思うとおりにはならないかもしれないけど、可能性は開けると思うよ」

「わかった、ありがとう。もう一つ、お願いがあるんだ」

「おや、何かな?」

「まだ早いかもしれないけど、仕事を手伝わさせてください!」

「来年からは、学院だろう?」

「王都の仕事でもいい、通いながらでもがんばるから」

「なるほど、君たちはそうやって、自分たちでどんどん大人になっていくんだね……」

「父さん!」

「覚悟の上だね」

「はい!」

メリルの子どもたちよ、そんなに急ぐな、せめて今年だけでも、この手の中に……