I want to protect you in this hand.
Acceptance announcement
採点が終わり、学院の教師達は、会議室にあつまっていた。
「今回は、異例ですぞ」
「特待生が、12人も出るとはね」
「例年のごとく、王都の地元生からは2人ですな」
「西領から1人」
「そしてメリルから9人とは……」
「西領1人と、メリルのうち6人は、学外希望ですな」
「それも久しぶりのことです、異例ずくめと言えましょう」
「ともあれ、7割を越えればいいという昨今の風潮の中、特待生として9割5分を越えた生徒が12人もいるのは好ましいことだ」
「そのうち4人は満点ですからな」
「また、作文の秀逸なこと」
「特に魔石の輸出を考えたセフィロス君、日常での新規応用を考えたダニエル君、魔石の再利用推進のアーシュマリア君の作文は、そのまますぐに実行すべきと言えますな。もっともアーシュマリア君は、足し算を間違えて満点ならずではありますがな」
「学院入学の下限の年齢ですから、やむなしでしょう」
「辺境伯も、鼻の高いことだ」
「では、12人については合格発表後呼び出しでよろしいですかな」
「新入生代表は、年齢からザッシュ君で」
「公爵家の三男も首席の1人ですが」
「建前は身分の差はなしですからな、ここは平民を前に出したほうがよろしいでしょうて」
「では、明日の準備を始めますかな」
昨日のお茶販売は疲れたが、大成功だったと言える。なのに、
「アーシュ、王都に来てから訓練してないよな?明日からお茶の販売後、西ギルドで訓練だ。夕方からは空いてるそうだからな」
とセロに言われました。がんばりすぎじゃない?え、オレたちは朝からダンジョンに行ってる?はい、すみませんでした。
結局、売り上げは、レーション40で12000、甘いお茶50で10000、普通のお茶50で7500、冷たいお茶類売れ残りで2000の損、試供品で3000の出費、差し引き24500ギルの利益だった。ただし、ギルドからカップは借りられなかったので、マグカップ500ギル50個、25000ギルの投資となる。この投資は来年にも生かされる予定なので、よしとする。
やはり、規模が大きい分、売り上げも大きい。何より、やはり飲み物の需要はあるということがわかった。これからしばらくだけど、がんばろうね、ダン。
早起きして9時までにレーションを焼きあげて、さあ、試験の発表に出発だ!
学院につくと、既に多くの子どもたちと親が来ていた。
合格者は、成績順に張り出されるらしい。あ、誰か来たようだ。張り出される。
うわっと歓声が上がる。くそう、小さくて見えないよ……
なに!
「ザッシュが一番だ!」
うおー!目のいいニコが読み上げてくれる。
「えーと、クリストファー?ダン!セロ!ここまで満点だってさ」
早く早く!
「えー、アーシュマリア、シルバー、ウィリアム、マリア、ソフィー、クリフ、マーガレット、リアム、ここまで特待生だってさ!」
「やったーって、特待生って?」
「以上のものは、特待生につき、別室に集合のこと、だそうです」
「領主さま!」
「うむ、誇らしいとしか言えぬな」
「ダン、満点とは……よく頑張りましたね……」
「では、保護者として、まいりますか」
「「「はい!」」」
別室とは、試験を行ったうちの1室だった。既に教師が3人、そしておそらくクリストファー君とリアム君と思われる男の子と、その父親が先に来ていた。
「やあ、辺境伯どの、付き添いか。今年はメリルは大豊作だな」
「いやいや、たまたまです。公爵も、今年は御三男が受験でしたな、誇らしいことだ」
「まあ、三男ともなれば、自分で身を立てねばならぬ。お互いに良き友となって切磋琢磨してくれるとよいが」
「そうですな、子どもとはいえ、学ぶべきことも多かろう」
「おお、西領の」
「久しいな、これがうちの期待、シルバーだ」
「おお、よろしくの」
「集まりましたかな、はい、では、皆さん、特待生合格おめでとう。この12人の成績優秀者は、点数が9割5分を越えた者達です。学院と、卒業後の活躍の期待を込めて、学費、寮費とも無料です」
「(やった!)」
「学外生もおりますが、夏の特別授業のおり、寮費無料で滞在ができますぞ」
「はい!」
「試験の総括として、満点のものは言うに及ばず、特に作文が秀逸でした。苦手と思われる教科については、この後個人的にアドバイスがあります。また、教科書類は3年分、先渡しなので、勉強をどんどん進めてください。また、ザッシュ君は首席かつ最年長なので、入学式で代表挨拶をお願いします。以上、なにか質問は?では、詳細は冊子にて」
ふうー、お金掛からなくてよかった!
「君がアーシュマリア君かね」
は、はい!
「小さいの」
ほっとけ!
「間違いは、算数の、足し算のミス1個じゃよ」
……
「作文は、面白かったですぞ。学院では、何を学びたいかな?」
帝国語と、文学を。
「ほう、これはこれは。帝国語は私が教えておる、入学後はよろしくの」
よろしくお願いします。
「うむ」
「小さいな」
またか、ほっとけ!って、クリストファー君?リアム君?
「クリストファーだ、クリスと呼べ」
「僕はリアムだよ」
「成績優秀者が多くて、やりがいがある。王都のことなら私たちに任せてよい。では、よしなに頼む」
ははーって言いたくなるよ。面白い人だね。
「来年からよろしくな!」
ってことで、全員合格です!あ、お茶販売に行かなくては!
「お茶?」
「西ギルドで夕方売ってるよ」
「この年で仕事か、不憫な…」
ん?不憫じゃないけどね?ダン、行こう!
「行くか!」