I want to protect you in this hand.

Arsh, what do you think of the 14-year-old month of 1?

冬休みが終わるころ、私たちは相変わらず忙しかったが、学校のボランティアはギーレンさんのおかげで一区切りつけてもらっていた。意気込んで奉仕活動に来ていた生徒たちは、一番最初こそ死の一歩手前の状況の患者たちににひるんでいたが、やるべきことがはっきりしてからは、黙々と仕事をしていた。もちろんアレクから騎士隊の人たちも派遣されていたので、その騎士たちからの生徒への評価はとても高いものだった。今年からの卒業生は期待できるな、ともっぱらの評判だった。それにさらに気を良くしたわけでもないだろうが、冬休みが終わっても、奉仕活動は縮小して続けられることになった。

もちろん普通科の生徒も合わせてだ。

私は気になることがあって治療院にやってきたギーレンさんに声をかけた。

「ギーレンさん」

「アーシュ君か、どうした?」

「アーシュでいいですよ。あの、発表したあとのことなんですが」

「うん、大変なことになるだろうね」

「遠くから患者が来るかもしれないと」

「おそらくね。帝都がおさまって地方まで治療をもたらすのにはもう少し時間がかかるだろうから」

「では、患者の家族が滞在する場所も考えないと」

「家族?」

「一人では来ないと思うんです。また、治るまでついていたいと思う家族もいるでしょう。それが宿屋に泊まるとしたら、ものすごくお金がかかってしまい、病気は治ったとしても、お金がなくてスラム行きになりかねないと思うから」

「君は……学校を卒業したら、文官の試験を受けないか。その発想は貴重だよ。いろいろ話がしたいな」

「え、いやです」

ギーレンさんは苦笑した。この若者たちはどこまでも自由だ。この大陸を見て回るまでは、何を言っても落ち着かないのだろうな。

「それも含めて検討してみるよ」

「そうしてくれると。治療院を手伝ってもらって格安で部屋を提供するとかですね、いろいろ」

「待て、やっぱりすぐ雇おう。とりあえず助手として放課後どうだ。給料ははずむぞ」

「え、いやです。じゃあ忙しいので!」

「おい、あ、行っちゃったか。おっと銀髪の騎士君が見てたか。ほどほどにだな」

学校が始まると、私たち心底ほっとした。やっと休める。希望が出てきたとは言え、治療院に詰めるのはやはり精神的に疲弊していたからだ。授業はともかく、元気な同世代の間にいると、やはり生きる力をもらうような気がした。

「ナズ、大きい事業になるみたい。いっそのこと、お国から医者を派遣してもらって治療院で一緒に治療法を学んだらどうかな。帝国からは声がかからないと思うよ。フィンダリアにも患者がいるとは思っていないから。いちおう責任者にも話は通しておくよ」

「実家に連絡をとってみます」

「これ、マッケニーさんにも言ったほうがいいね。もうやっているかな」

マルとウィルともうなずきあった。マッケニーさんはやっていなかった。はっとして急いでキリクに使者を出していた。帝国が終わったら派遣してもらおうと思っていたようだ。そんなの何年後になるかわからない。魔石を提供しているのはマッケニー商会だ。言いだしさえすれば最大限に優遇されるだろう。

とはいえ、放課後はまた治療院に引っ張り出されるのだった。そんな中、ゼッフル先生もよく、治療院で見かけた。

「あの!」

「なんだ」

「あの、学校の奉仕活動、認めてくれてありがとうございます」

一度きちんとお礼を言っておきたかったのだ。ゼッフル先生はその瞳に険呑な光を浮かべて、いらだたしげに言った。

「なんで、お前が礼を言う!帝国のことだ。帝国の者がやるのが当たり前だろう!お前が礼を言ったら、私も礼をしなければならないではないか、お前たちに!助けてくれてありがとうと」

そして髪をかき上げ、くしゃくしゃとかき回すと、

「そしてなんでもっと早く生まれてきてくれなかったのかと」

とつぶやいた。

「ゼッフル先生?」

「母が。母がこの病で亡くなったのだ。よくある話だ。もう20年も前のことだ」

「それは……」

「父は夢見がちな人で、剣と魔法の国には何か商売の種があるかもしれないと言って、私たちをおいて出て行った。必ず戻ると言ったが戻らなかった。メリダに行ったかどうかすら知らん。その間に母は死んだ」

「……」

「孤児院から目をかけて高等学校まで行かせてくれたのがイザークの父親だ。そういうことだ」

「ゼッフル先生」

ゼッフル先生はそっぽを向いている。

「私たちは、親からしてもらったことは親には返さないんですよ」

「何を言っている」

「孤児だからではないです。親からしてもらったことは、次の世代に返す。親は見返りを求めて育てるのではないのだから。だからゼッフル先生は、親代わりの侯爵に返さなくてもいい。次の世代に返せばいいんです。先生だから、もうしてるってことですね」

「返さなくてもいい。次の世代に……」

「見返りを求めて育てたのなら、そんな下心に応える必要ないし。応えたければ、かかった費用を計算して、今まで侯爵のためにただ働きした仕事分を差し引きして。それでも足りないと思ったら花束でも送ればいいんですよ」

ゼッフル先生はぽかんとした。

「愛情は差し引きしないものですけどね、愛情を盾に利用されてはだめですよ」

「アーシュ、どの口がそんなことを言っている」

「いたっ、セロ、口を引っ張らないで、のびるのびる!」

「利用されまくってるのは誰だ!」

「ふゅみまひぇんでひた……」

「君たちは……」

ゼッフル先生は力が抜けたように言った。

「とにかく、奉仕活動については礼を言われることではない。君たちも無理はするな。学生は勉強が一番なのだから」

そうして去って行った。

「アーシュ、お前は少しちゃんと話さないとだめだな?」

「え、やだ、忙しいし。ウィル?行って来い?ダン?あきらめろ?マル……」

セロに小一時間怒られた。

そうして2の月になり、春休みになったがフィンダリアにはやはり行けなかった。その代わりとも言えないが、フィンダリアからの派遣の医師団と共に、ナズのお父さんがやってきた。ナズも私たちを手伝って忙しかったからだ。そして、フィンダリアの名物をいろいろ持ってきてくれた。

やはりオリーブオイルはあった。そして西海岸沿いの温暖な国は、ハーブや花も盛んで、香料や乾燥したハーブなども扱っているという。ダンの目が輝いた。

「アーシュ、行けるかもしれない。帝国はこんなに広いのに、窮屈で仕方ない。学校を卒業したら、俺はまずフィンダリアに行ってみるよ」

「おれたちはキリクだな」

ウィルが言った。

それはいい。卒業したら?卒業したら、私はどこに行くのだろう。突然不安になった。