Isekai Reicarnation?... No I wasn't!

59 Stories "Letter from God"

59話

「『玩具』!」

掃除機と雑巾、ホウキとチリトリに『玩具』を発動し、掃除特化型人形ズを作り出す。

「よし、掃除機は1階、ホウキとチリトリは2階のゴミを集めてくれ。雑巾ズは半分が水拭き、残りは乾拭き係だ。床や家具を徹底的に拭いてくれ。ゴー!」

俺の命令に従い、人形ズが家の中を駆けていった。『玩具』、便利な異能だ。

「さてと……俺の顔になにかついてる?」

「いや、ついておらんぞ」

「カー」

「汚レハ見エマセン」

「そうか。じゃあなんでずっと俺を見てくるんだ?」

委員長やソージ達から今度時間があるときに色々と話したいと言われたため、話し合いの場がこの家になったときのことを考えて掃除をしているのだが……クロとシロとニアがずーっと見つめてくる。

「ちょっと気になることがあってな」

「気になること?」

「うむ。前にも話したと思うが、お主からは霊力を全く感じない。にも関わらず、様々な『術』を問題なく使える。その事についてシロとニアと話し合ってな。霊力とは違う未知の力を保有しているのではないかという結論に至ったのだ」

聞くと、俺が霊力以外のミラクルエネルギーを保有している可能性を考えてじーっと観察していたらしい。

「実際、儂は以前からお主の力の存在を薄っすらと感じていた。それがこの間の変身能力者と戦って以降、より強く感じ取れるようになってな。儂と同じくシロとニアも以前から微かに感じていたようだ」

「カカーカ」

「クロサンホドデハ無イデスガ、僕モ少シダケ感ジマス」

なるほど、当の俺自身は全く自覚がないが、クロ達がそう感じているのなら霊力とは違う力を使っているのかも知れない。

今まで術も異能も問題なく使えていたからあまり気にしていなかったけど、結構重要な問題だなコレ。

「先程『玩具』の異能を使った瞬間を観察していたが、未知の力が霊力に変換されているように感じた。つまり、霊力や生命力と系統の似た力だとは思ったのだが……わかったのはそこまでだな」

「そうだったのか、調べてくれてありがとな。本来なら自分で調べるべき事なのに、全然気にしてなかった」

色々な出来事に気を取られ過ぎて、自分自身のことをあまり考えていなかった。反省だな。

「……うん。妖に式神にロボットに精霊。クロたちも相当不思議な存在だけど、冷静に考えると俺も相当不思議な存在だな」

というか、一番不思議な存在かもしれない。

霊力や魔力とも違うミラクルエネルギー以外にも、神様が生き返らせてくれたこの肉体にはまだまだ謎があるのだ。

神様は、『身体能力は強化しておく。技能の習得能力も上げておこう』と言った後に、『おまけに、わしの能力をほんの少しだけ授けよう。使い方はおいおい分かるはずじゃ』と言っていた。

つまり、『習得能力』は本来備えていた俺自身の力が強化されたものであり、神様が授けてくれた能力は別に存在するという事だ。

『習得能力』が強すぎて今の今まで忘れていた。

「今更ながらに自覚したよ。俺の存在が一番ファンタジーなんだな」

「同意見だ。儂も長く生きているが、お主ほど不思議な存在は……いや、1人居た気がするな」

「え?居たの?」

「うむ……思い出せん、気のせいかもしれん」

気のせいかよ。それなら仕方ないが、世界は広いから俺と同じような存在が他にいても不思議ではないな。神様の口振り的に、他にも色々な神様が居るようなことを言ってたし。

日本は八百万の神とも言うから、下手すると何百万人も居るかもしれない。流石にそれはないか。

「まぁいいか。今考えても答えは見つからなそうだし、ミラクルエネルギーの謎はいつか分かる時がくるだろ。そんな気がする」

「そうだな、別に命に関わるような事ではない。ゆっくりと観察を続けるとしよう」

「カーカ」

「ソウデスネ」

「え、観察?」

結局、その日はクロとシロとニアに一日中見つめられながら生活する事になった。

俺以上にミラクルエネルギーの正体について興味があるようだ。

「できれば掃除も手伝って欲しいんだけど……」

「む、すまない。手伝おう」

「カカーカ」

「了解シマシタ。掃除特化型人形ヲオ借リシマス」

見られるのは別に構わないので、ついでに掃除を手伝わせる。

シロは歯ブラシを持ちながら振動操作を利用してシンクの排水口やガスコンロのこびりつき汚れをみるみるうちに落としている。ニアは掃除特化型人形ズに接続し、効率よく家中を掃除してくれる。命令で動かすよりも丁寧で早い。クロはシロとニアのサポートに徹している。尻尾を器用に動かして小物を持ち上げ、時には獅子の姿となり大型家電を軽々と持ち上げている。

ちなみに、掃除嫌いなリンとウルはお散歩と称して逃げた。おそらく、近くの公園か隣のイサさん家に遊びに行ったのだろう。

「む?」

「クロ、どうしたんだ?」

突然、クロが2階の奥を見つめながら立ち止まった。え、なに?怖いんだけど……。

「以前から気になっていたのだが、2階の奥にある物置部屋から妙な気配を感じていてな。お主に似た気配なのだが、よくよく観察すると違うような……とにかく、なんらかの気配を感じるのだ」

「なんらかの気配?」

2階の物置部屋はよく開けるので、誰かが隠れている事は無いはずだ。

「念のために、あとで確認してみるか」

「儂は入ったことが無いのだが、なにをしまっているのだ?」

「いや、ふつうに使わなくなった家具とか家電とかだよ。あとは、お爺ちゃんの骨董品コレクションもあったはずだ」

壺とか掛け軸とか、刀とかもあったかな?

「あ!」

「む、どうしたのだ?」

思い出した!物置にはとても重要な品物をしまっていたのだ。気配の正体も、もしかするとそれが原因かもしれない。

「あの物置には……ん!?」

「いま、確かな物音がしたな」

「物置カラ不審ナ音ガ聞コエマシタ」

「カカーカ」

異常に気づき、ニアとシロも駆け寄ってきた。

「完全に盲点だった。普通に考えれば、アレが特別な力を持っていないはずがない」

「む?アレとはなんなのだ?」

物置にしまっている重要物品、それは……神様からの手紙だ。