Isekai Reicarnation?... No I wasn't!

64 Stories "Garden Lisa"

幸助の通う高校は階層によって学年分けがされており、1階は1年生、2階は2年生、3階には3年生の教室が配置されている。

別の学年の階層に行ってはいけないという決まりはないが、基本的にその学年の階層以外の階に別学年の生徒が居ることは少ない。

「おい、あれって……!」

「キャーッ、今日ってリサ先輩の登校日だったんだー!」

「すげぇ!本物はやっぱかわいいなぁ」

「1年生の階に何の用なんだろう?」

だが、この日だけは違った。

「ねぇ君。1年E組ってここで合ってる?」

「あ、合ってます!ここです!あと、ファンです!いつも応援してます!」

「ありがとっ。これからも応援よろしくね」

「は、はい!」

とある女生徒を追って2学年や3学年の生徒のほとんどが1学年の階層である1階へと集まってきていたのだ。

「確か、黒髪で中肉中背で……もしかしてあの子かな?」

茶髪のショートで可愛い顔立ちの小柄な女生徒。そんな彼女は好奇の目に晒されながらも、平然とした表情で1年E組の教室へと入っていった。

「みんな何があったんだろう?」

昼休み。石田と滝川と一緒に教室でお昼を食べながら昨日のことを考えていた。

予定では昨日、委員長やソージ達が家に訪ねてくる筈だったのだが、急遽中止になったのだ。

あわよくば委員長達から知らない術を教わったり雫さん達の異能を習得できりしたらいいなーと思っていたのだが……そんな邪なことを考えていたから中止になったのかもしれない。

邪念よ去れ!

「数多の陰謀渦巻く夜の街『すすきの』。元裏世界の住人がその真相を語る……か、あんまりいい記事ないなぁ」

俺が邪念を払っていると、滝川がスマホをいじりながら残念そうな表情でそう呟いていた。

「そんなに気を落としてどうしたんだ?いつもならそういう話を喜んで語ってくるのに」

「違うんだよ。俺が好きなのはオカルトネタなの。幽霊とか宇宙人とか未知の現象とかが好きなの。人同士の陰謀や策略なんかはどうでもいいんだよ」

「なるほど、わからん」

石田とそう言葉を交わした滝川は、再びオカルトネタを探すためにスマホをいじり始めた。

「なにか面白い事でも起きないかなぁ」

「いやいや、平穏が一番だろ」

「結城が平穏というとフラグにしか聞こえないな」

「確かに、これは面白い事が起こりそうだ!」

なんだと?確かに高校生活が始まってから平穏とは程遠いイベントばかりだけれども、まさに一昨日変な刀を手に入れたばかりだけれども、今まであまりにも異常過ぎただけだ。

そもそも、そんな非日常イベントがひょいひょいと起ることの方がおかしい。頻度で考えればもう一生平穏でもおかしくないくらいのイベントをこなしていると思う。

「お話中のところごめんね。君が結城幸助くんかな?」

「はい、そうですけ……ど!?」

びっくりした。振り向くと、茶髪ショートの美少女が立っていた。はじめましてだが、この人の事は知っている。2年A組の『花園リサ』先輩だ。

委員長や月野姉妹と肩を並べるほどの人気を誇る美女であり、学生でありながら現役のアイドルとして活躍している本物の芸能人だ。

「うわっ、凄い人集り」

廊下を見ると尋常じゃない数の野次馬が集まっている。

芸能活動を行なっている関係から登校日が極端に少ないため、彼女を一目見ようとして人の群れができているようだ。

「良かったー、少しいい?ちょっと話したい事があるんだけど」

「あ、はい、大丈夫です」

花園先輩に手を引かれ、そのまま教室の外に連れ出された。

さすがは芸能人。人集りには慣れているようで、周りの目など一切気にしていない。ま、俺は凄い気にしちゃうんですけどね。疑問の視線が2割で殺気の視線が8割だな。

「ぜ、全然面白くねぇ!」

滝川のそんな叫びを聞きつつ、花園先輩に手を引かれた俺は教室を後にした。