Itai no wa Iya nanode Bōgyo-Ryoku ni Kyokufuri Shitai to Omoimasu

Defense specialization and security zone.

メイプル達はメイプルが【暴虐】をもう一度使うことが出来ないためギルドまでシロップに乗ってゆっくりと帰る。

そして手持ちのオーブ全てを設置して全員が休息に入った。

そうしていること一時間。

普通ならばどこかのギルドがやってきてもおかしくはなかったが、高速化する展開のために死亡回数が危険域に入っている中でわざわざ死地に赴こうというプレイヤーはいなかった。

大量のオーブを所持していながらも、今このゲーム内で最も静かな時間が流れているのが【楓の木】の拠点だった。

「サリー?何見てるの?」

メイプルはサリーが青いパネルを空中に出しているのを見てサリーに近づく。

「んー?ああ、えっと……凄いことになってるなあって」

「凄いこと?」

メイプルがサリーの出しているパネルを覗き込むとそこにはランキングが映っていた。

そしてそのランキングにおいて今までと違う所は壊滅している大規模ギルドがあるということだった。

「あ、また一つ……これは【集う聖剣】か【炎帝ノ国】が暴れているのかも、うん、多分」

「そうなの?」

「どっちかと言うと【炎帝ノ国】だと思うけどね。【炎帝ノ国】はさっきので壊滅寸前みたいだったし、多分あと二日以上戦えない。だから……ライバルを壊滅させて後は運を天に任せるっていう」

サリーには確認しようのないことだが、【炎帝ノ国】が周りを潰すことでこれ以上ポイントを増加させないようにして、十位以内を何とかキープしようと考えているというのは当たっていた。

ただ、ただでさえ限界の【炎帝ノ国】がジリ貧になるのを避けるためとはいえ他のギルド、それも大規模ギルドを襲うというのはかなりの負担がかかる。

そう長くは持たないだろう。

「この殲滅力は凄いよ……メイプルが全力でやってる時よりも凄い」

「私は上手く轢けないと倒せないから……でも皆立ち上がってこないから攻撃してこないんだけどね!」

【暴虐】状態のメイプルに跳ね飛ばされたプレイヤーの多くは死亡してはいない。死亡するのは運悪く進行方向に弾(はじ)かれて連続で轢かれた場合くらいである。

ただ、ぶつかって宙を舞うことになれば冷静さは吹き飛んでしまう。

そうして惚けている内に今度はきっちりととどめを刺されてしまうのだ。

プレイヤーがぽんぽん跳ね飛ぶため冷静さを奪い混乱させる能力は高いが、全滅させるのにはその巨体を生かしてもそれなりに時間がかかる。

そもそもメイプルの持つ初見殺しの要素が今回のイベントにおいてかなり上手く働いただけであり、同じことは一ヶ月後には出来ないだろう。

メイプルに対してミィは分かりやすく、躱して超火力を押し付けるだけである。

火力においてメイプルのそれを遥かに上回っていると言えるだろう。

メイプルを見て自爆飛行も覚えた今、無理をすれば短時間で大規模ギルドを壊滅させることも可能ではある。

大規模ギルドを殲滅してくれれば【楓の木】にとっても嬉しいことだ。

「誰も取り返しにこないけど……今回のオーブを守りきれば十位以内はぼぼ確定だと思う」

「じゃあもう外に出ていく必要は?」

「まあないよね」

サリーがそう言うとメイプルはにっこりと笑いつつ座った。

「今回は今までで一番頑張ったから……ほんと疲れたなあ」

「後は【水晶壁】と銃撃の用意で万が一に備えておいて」

「うん、分かった」

メイプルが返事をしたところでサリーもその場に座り込んで、メイプルと一緒にギルドがどうなっていくのかを確認し続けることにした。