Itai no wa Iya nanode Bōgyo-Ryoku ni Kyokufuri Shitai to Omoimasu
Defense specialization and anticipation tournament.
ゲーム外では運営陣が残りギルド数を表す表示を見つめていた。
「これは……もう終わっただろ」
「だな……」
明るく輝く数字は六という数字を浮かび上がらせている。
そしてそれらのギルドは全て現在十位以内であることが確認されている。
つまりもう十位以内に入るギルドは確定したということだ。
五日を予定していた今回のイベントは四日目の早朝には実質の終了を迎えていた。先程までは減り続けていたギルドの数表示は全く動きを見せなくなった。
「どいつもこいつも殺意高いなぁ!?おい!?」
「今回のイベントの見所編集して動画にするぞ。もうこれといったことは起こらないだろ」
男が周りに指示を出すと次々に膨大な量の録画データからこれはと思ったシーンが選び出されていく。
「五割近くメイプルが映ってるんだが……」
「メイプルを映さずに見所を抜き出せと言うのか?これでも削った方だぞ」
呟いた男の方に首だけを向けてそう言うと、呟いた男は額に手を当て椅子の背もたれに身体を投げ出した。
「まあ【楓の木】に引っかき回されたのがイベントが思うようにいかなかった原因か……」
「【炎帝ノ国】は十位だしな、しかも既に全滅だろ?順位予想もやってみていたんだが……まあ当たらない」
【炎帝ノ国】はライバルを次々に倒していたが、無理をし続けたために全滅に至った。
ただ、何とか十位を確定させることには成功していた。
「メイプルの行動が読めるようになればなあ……」
それは多くのプレイヤーも思っていることだった。
対策の立てやすい者ほど対処は容易になるからだ。
「無理なことを考えても無駄……それより次回の日数……考え直さないとな」
「だな、流石に丸二日余るほど加速するとは……」
プレイヤー達のやる気を読み切れなかったが故のミスである。
彼が次回のことを考えていたところで、思いついたというように一人の男が部屋の中にいる全員に聞こえるように言い放つ。
「なら一つ予想してみよう!お題は今のメイプルが何をしているか!どう?当たった奴には俺が一回奢るよ」
その提案にその場にいた全員が乗った。
メリットしかないのだから当然である。
「少し前の録画データを見ればいけるか。オーブ周りしかないが……」
そう言って適当に選び抜いた【楓の木】の四日目の広間の映像を映し出す準備をし始める。
「なら、拠点にいないってのもありか?」
「いいんじゃね?それだと簡単に探せないからな……まあ多分拠点にいるとは思うが……」
「じゃあ予想開始!思いついた奴は挙手!」
奢ると言い出した男が合図をすると早速何人かが手を上げた。
そして男が指示した順にそれぞれに予想を述べていく。
「ギルメン全員でボードゲーム中」
「機械神で空を飛ぶ練習」
「双子に人間お手玉をされている」
「【鍛冶】で作られた武器を齧ってスキルが得られないか試している」
「何だ、皆普通過ぎやしないか?」
「それもそうか……」
普通過ぎると言われたことで全員がメイプルならばどんなことをするかと再び思考を巡らせた。
そうしてどんどん予想は混沌としていく。
「巨大化した亀の口の中に入っている」
「何故かサリーと戦っている」
「いっそ亀を齧る」
全員が口々に予想を述べていく。
そして粗方意見が出尽くして部屋が静かになったところで発案者が終了を宣言した。
「じゃあ……映すぞ」
「ああ」
一瞬の後、大きなモニターに【楓の木】が映し出される。
肝心のメイプルは、全身を完全に包む羊毛の塊からニョキニョキと兵器を生やして、ユイとマイに担がれながら拠点を歩き回っているという状況だった。
それを見たところで動画はそっと閉じられた。
「あれも入れるか?」
「……ああ」
そのワンシーンはそっと見所集に加えられ、運営陣はそれぞれが何か理解を超えたものを見たことに対する処理へと移った。