自分達、1年生が学生用ダンジョンの攻略を始めてから1ヶ月が経過していた。 そして自分達の攻略階数は12階層まで進んでいた。 この階数は1年生の中ではトップだった。

「10層を越えてから魔物がだんだんと強くなってきたね。」

「はい、そろそろ私は身体能力だけでは敵の処理が厳しくなって来ました……。 2体までなら同時に対処出来ますが、それ以上になると捌ききれません。」

「そうなんだよね……。」

10層までは単体が弱いけど数が多いフロアで、10層越えてからは魔物自体の数は少ないが強い個体が増えて来ていた。 20層を越えると個体は強い上に数も増えていくらしい。

自分やサリアが攻撃に参加しても良いのだけど、それだとカリンさんがいらなくなってしまう。 それにカリンさんには成長するだろう可能性が大いにあると考えていた。

「そろそろカリンさんを強化するかな……。」

「私を強化……? 私、何かされるんですか?」

何かカリンさんは身の危険を感じてるのか、怯えながら聞いてくる。 自分が危ない実験でもしてると勘違いしてるのだろうか?

「カリンさん、そんなに怯えなくても大丈夫ですよ。 あぶない事はしないので試しに【魔力操作】をしてみて下さい。」

「えっ? そんな事をしたら魔力が暴走してしまいますよ!」

「大丈夫、大丈夫。 僕の予想だとカリンさんの【職種】である【狂戦士】は本来、魔力をワザとギリギリの暴走をさせて、それを無理矢理制御する事で通常以上の身体強化が出来る職種だと思うんだけど。 カリンさんは人並み以上に持っている魔力が多いから魔力が暴走したら制御する事が出来てないんだと思うんだよ。」

「なるほど。でもそれがわかっても私が魔力を制御する事が出来ないのは変わらないよ?」

「その問題ならサリアの能力が解決してくれるから大丈夫だよ。」

「サリアさんが?」

「はい、私ならカリンさんの魔力暴走にならない様に出来ます。」

カリンさんの魔力が多すぎるならセシリアさんの【魔素圧縮吸収】で吸収してしまえば良いのである。 この能力は戦闘にも使えれば良いのだけど、魔物や【魔力制御】が出来てる人にはあまり使えないと言う欠点があった。

「えぇ~!」

「騙されたと思ってやってみなよ。 仮に暴走しても【防御壁】でカリンさんを閉じこめるから大丈夫だよ。」

「……分かりました。 それではやってみますね。」

サリアにはカリンさんの魔力吸収を絶妙な加減でしてもらい、自分は【魔眼】でカリンさんの体内にある魔力が循環しているのを確認する。 しかし、思った通り魔力が暴走気味で全く制御出来ていなかった。 

「カリンさん、ちょっと肩に触るけど魔力を制御するのに集中していてね。」

「えっ? はい。」

自分はカリンさんの肩に触れて、カリンさんの魔力を丁度良い具合に流れるように【魔導操作】する。 最近は他人の身体に触れると他人の魔力を操れる様になっていた。 しかしこの方法は他人が自分の【魔導操作】に抵抗をしなければの話しだから身内にしか実質使えない没技ではあるが……。 たまたま今回にはちょうど良かった。

そしてカリンさんの魔力を完璧に制御する。

「カリンさん、これが正常な【魔力操作】されている感覚です。 身体でこの感覚を覚えてください。 予想ではこれを続ければスキル欄に【魔力操作】を取得出来るはずです。」

「まさか、そんな方法があるなんて…… 頑張って覚えてみせます!」

【魔力操作】が覚えられるかもしれないことが嬉しいのか、キラキラした笑顔をしていた。 これだけ喜んでくれるならカリンさんの為に頑張らないとな……。

「カリンさん、放課後に1時間位なら毎日【魔力操作】の練習を手伝っても良いけど、どうする? 予定がある日は断っても大丈夫だしさ。」

「いえ、私は基本的に毎日暇なので大丈夫です。 こちらからお願いしたい位です! 是非お願いします!」

「了解、【魔力操作】を覚えるまでは大変だろうけど頑張ろう。」

「レイくん、ありがとう!」

それから自分達は放課後に毎日、【魔力操作】の訓練をする事になり、カリンさんは2週間で【魔力操作】のスキルを取得する事に成功していた。 しかし、まだサリアのサポートが無いと魔力暴走を起こしそうだからサリアが近くに居る時以外は魔力を使わない約束をした。 そのうちサリアのサポート無しでも魔力を使えるようになるだろう。

【魔力操作】を覚えることで魔力関係のスキルが増えていくから今後のカリンさんの成長には期待していた。 魔力無しでも、あれだけの身体能力があるのだから凄いと思う。

しかし、自分の幼なじみ2人に比べると見劣りする才能かもしれない。 あの2人と別れて2年ちょっとか……。 今頃は化け物クラスになっているんだろうなぁ。