最初はジャブから小出しでいこう。屋敷の横に新しい建物を作りたいので大工さんを紹介して欲しいのと、屋敷の風呂を改築したい事を話す。

「その様な事であれば、すぐに手配できます」

じゃあ次はストレートにそして必殺のアッパーカットだ。神猫商会の本店を王都に作りたいので物件を紹介して欲しい。そして本題、神猫商会としてでなくブロッケン男爵としてのお願い。優秀な人材を紹介して欲しい事。

「物件のご紹介は問題ございませんが……人材ですか?」

流石に即答はしてこない。してこないけど、目の奥がキラリンと光ったのは見逃してないよ。いか程の人数が必要ですかと聞かれたので十名と答えておく。ヴィルヘルムの商業ギルドにも頼む予定だし、今現在働いている人からも雇い入れるかもしれない。後は期待はしていないけど貴族の子弟から選ぶ事も考えられる。それに、商業ギルドから紹介された人物なら神猫商会で使っても良いだろうからね。

「わかりました。神猫商会様とは今後とも良き関係でいたいと思っております。何とか致しましょう」

ちょっと恩着せがましく言われたけど、そこは些細な事気にしない。人材さえ集めてくれれば後はこちらのもの。商業ギルドとは仲良くやっていくつもりだけど、掌で踊らされるつもりは毛頭ない。逆に商業ギルドを利用してやるくらいのつもりでいる。一番はwin-winの関係なんだけど、利害関係なんて物は水物だから。

その後ヴィルヘルムに飛んで、ヴィルヘルムの商業ギルドにも行った。ヴィルヘルムの商業ギルドでも俺が貴族になった事を知っていたのは驚いたよ。確かに最初に説明を受けた時にブロッケン男爵と言うのはルミエール王国とヒルデンブルグ大公国の共有の貴族と言う位置にあると言われていた。でもそれが、ヒルデンブルグ大公国で市井の人々に知らされるとは思っていなかった。

「お任せください。神猫商会様のお願いですからね。優秀な人材を集めましょう!」

「み~」

ベルーナの商業ギルドと打って変わって、心地よく承諾してくれた。この国では貴族と言うものに余り敬意を示さない風習がある。俺達を貴族としてではなく神猫商会として扱ってくれる事が嬉しいね。ミーちゃんも喜んでます。

ついでに、ヴィルヘルム支店の裏の空き家を買い取れないか聞いてみる。最近、住んでいた人が出て行ったらしい。

「構いませんがお店にするには不向きですよ?」

「いえ、店にするのではなく商隊の者の宿にするつもりです」

「なるほど、ではその隣の古い建物もお買いになりませんか?」

「どう言う事ですか?」

「実はそちらも同じ売り主なのです。両方ともだいぶ建物が古くなり、大家が売りに出してるのですがなにぶん土地自体が広いので売れずに困っているのです。建物を解体すれば新しい建物と商隊の荷馬車を置くには丁度良いかと思いまして」

「なるほど。おいくらになります?」

「神猫商会様ですからねぇ。チョメチョメでどうでしょう?」

「うーん。ちょっと厳しいですねぇ。チョメチョメならどうです?」

「いやいや、それではこちらが大損ですよ。チョメチョメくらいにはなりませんか?」

「そうですねぇ。解体費用をそちらで持ってくれるなら、チョメチョメでも構いませんよ」

「いやぁ、流石、商売上手な神猫商会様。よろしいでしょう。それで手を打ちましょう!」

「み~」

ヴィルヘルム支店の裏一画が手に入った事により角地が全部神猫商会の物になった。但し、商業ギルドからも条件が出され、建物を建てる際の業者は商業ギルドの指定業者を使ってくださいと言われた。逆にこちらから頼もうとしていたので、渡りに舟だね。快く承諾した。細かい事は解体が終わってからする事にして、お金を払い後日来る事を約束して後にした。

それからは、あっちに行ったりこっちに行ったりと忙しい日々を送っていた。そんなある日の事、お祭りの特賞であるスミレに乗る権利を手に入れた男の子を乗せて街の外を一周しておまけにスミレの全力疾走も体験させてあげる。男の子を家まで送ってあげてからうちに戻ると、王宮から王様の使者が来てたらしく一度領地に行くようにとの王様の事づけと手紙が届いていた。

ちなみに、神猫屋の食べ放題の権利は取った人がいなかった。ミーちゃんのぬいぐるみは、なんと! ヤン君が見事手に入れて妹のカヤちゃんにプレゼントしていた。今は、神猫屋の屋台でミーちゃんの代わりにお客さんに笑顔を見せている。

話を戻し、王様からの手紙を読むとフォルテの代官が処罰され、現状代官が居ない状態なので早急に赴き引き継ぎを済ませて来いと言う事らしいです。と言われれも、どうすれば良いの? 教えて、ルーカスえもん!

「少しの間ならば、代官が居なくとも問題はありません。一度、ネロさんが赴き通常通りの業務をしろと仰れば済む事ですし、代官は後日派遣すると言っておけば問題は無いでしょう」

なるほど、そうなんですね。なら、さっそく行って来ますか。ブロッケン男爵としての手形は王様から渡されている。それに付随する書類なんかは後で良いだろう。紋章を作るように言われているけど、まだ考案中。なので身分を証明するのは手形のみだけど、大丈夫だよね?

「み~」