「それでは、さらばだ。最後にこうして我らが先祖と同じ、神の眷属に会えた事は僥倖であった」

「他のメンバーとは会ってくれないのですか?」

「み~?」

「会う必要があるかね? 本来なら誰とも会う事はないのだから……」

そう言うと管理者はさっきまでの無表情が嘘のように、ミーちゃんに微笑みかけてから消えていった。

そして、時が元に戻る。

「どうして、ここに星空があるにゃ?」

「これはスクリーンに映された映像なんじゃないかな?」

「この世界の科学力も侮れないですね。姉さん」

「二人が言ってる事がよくわからないにゃ……どう言う意味にゃ?」

「不思議な力ってことだよ」

「にゃんだ、そう言う意味かにゃ! ネロはわかりやすいにゃ」

この世界の人に科学の事を理解しろと言う方が無理がある。とても便利なものだけど長い年月を掛けて先人達が築いてきたものだからね。

でも、その科学の一歩を踏み出す知識を、俺達はもうすぐ手にする事ができる。この世界に科学を広める事が良い事なのかは、正直わからない。

ポンコツ神様は、俺にこの世界に影響を与えるスキルは与えないと言っていた。でも、時空間スキルを手に入れ、今もこの世界に影響を与える知識を手に入れる事になる。

このまま突き進んで大丈夫なのだろうか? 神敵になったりしないよね?

「み、み~?」

ミーちゃん、だ、大丈夫じゃな~い? じゃなくて、しっかりと大丈夫って言って欲しいところなんですけど……。

「それより、ダンジョンマスターはまだー?」

「姉さん、ダンジョンマスターじゃなくて管理者ですよ」

「どうでもいいにゃ。お宝にゃ!」

「にゃ!」

あー、皆さん、どうやら管理者と会うのを楽しみにしていたようだけど、管理者とは会えません。あしからず。

「ダ、ダンジョンマスターとの邂逅が……」

「だから、姉さん、ダンジョンマスターじゃなくて管理者ですってば」

「あのおっちゃんに一太刀浴びせたかったにゃ……」

「にゃ……」

宗方姉弟は良いとして、ペロとセラはリベンジを狙っていたんだね。管理者は時間を操るスキル持ちだから、何度やっても無理だと思う。ペロ達がへこむだろうから、敢えて言わないでおこう。

みんなの代わりにお宝は貰って置いたから、安心して欲しい。

「「おぉー」」

「流石、ネロにゃ、抜かりないにゃ」

「にゃ」

戻ったらこの迷宮での稼ぎを分配するので、ここではしない事を告げる。

「もう、ここには用事はねぇな?  なら、さっさと帰るぜ」

この幻想的な最下層に別れを惜しみつつ、安全地帯へと戻る事にする。みんな軽やかな足取りだ。

一人を除いてね。そう、ジンさんだ。何か思いつめた表情をしていて終始無言。ルーさんが話掛けても、あーとかそうだなとしか返事を返していない。どうしたんだろう?

安全地帯に戻り休んだ後、二日掛けて獣人の町に戻って来た。いやぁ、疲れたね。特にスライムが。あれだけ倒してきたのにスライムの階層に入るとわんさか現れる。もちろん、倒すのはトシだ。スライムの階層を抜けた時にはげっそりしてた。

そういえば、ゴーレムは美味しい敵でした。終始、ミーちゃんがやる気満々で困ったよ。

獣人の方達に用があるけど、一旦クイントに戻ってパーティーを解散させて、ペロ達には馬で王都に戻ってもらう。その後でゆっくり獣人の方達と話をしようと思う。

「戻って来たか。で、どうだった?」

ミーちゃんがパルちゃんとフェルママにただいまの挨拶をしてると、セリオンギルド長がエバさんを伴ってやって来た。

「とても有意義な探索でした」

「み~」

「ほう。報告は後でいいぞ。今日の夕食は『グラン・フィル』に連れってやろう」

「サイクスにゃんの師匠の店にゃ!」

「にゃ!」

ラッキーと思ったところで、ふらっとジンさんがセリオンギルド長の前に出た。

「ゴブリンキング討伐の依頼を受ける。手続き頼むぜ」

「本気か?」

ジンさんいきなり何言ってるの? うちのメンバーは驚天動地といった顔をして声が出ないようだ。

「俺は自惚れていた。今回の件でそれがよくわかったぜ……」

「何があった?」

「み~?」

俺はセリオンギルド長に首を振って答える。ミーちゃんも、さっぱりです。

「俺は弱いという事を痛感させれた。そして、まだまだ強くなれるという事も気付かされた。だからもう一度、一から鍛え直す。自分を追い込み更なる高みを目指すのに、この依頼が最適だ」

「良いんだな?」

「あぁ。ネロ、悪いが付き合えるのここまでだぜ。迷宮での報酬は生き残ったら取りに行く。それまで預かっててくれや」

本気(まじ)ですか……。ジンさんの決意は固いようだ。まあ、ジンさんの実力なら問題無いだろう。

それにゴブリンキング討伐の決め手は宗方姉弟だ。この二人にゴブリンキングの止めを刺させないと意味がない。それまでの間の露払いでもしてもらおう。五闘招雷の三人が居るのだから期待はできる。

問題なのは第二騎士団と第三騎士団の方だ。王様が忙しいのはわかっているけど、早く手を打って欲しい。

「わかりました。責任を持って預からせて頂きます。でも、これは持って行ってください」

ジンさんに指輪を渡す。

なんか、周りがどん引きなんですけど。言っときますけど、そっちの趣味はありませんからね!

「身体強化五割増しのAFです」

「み~」

「「「!?」」」

今度は驚愕の目で見られてる。

そんな中パルちゃんだけは、ミーちゃんにかまって攻撃をしかけてたね。

「みゅ~」