Kuma Kuma Kuma Bear

37 Bear goes to snake suppression

ギルマスとクリフのせいで出遅れたが依頼の貼ってあるボードに向かう。

ランクDのボード

・剣術の先生、女性求む。

・オークの討伐、肉も含む。

・コケッコウの卵、産みたてを求む。

・タイガーウルフの素材全て求む。

・ゴブリンの魔石200個、時期は問わない。

・メルメル草の入手。

・ホエール山の岩猿の討伐、数は未定。

…………

………

……

ピンと来るものがない。

コケッコウの卵は気になったけど、依頼を出した本人も分からないのか、どこにあるか書かれていない。

それに新鮮なと言われても普通の冒険者には無理じゃない?

わたしみたいに時間停止するアイテム袋がないと。

場所が分かれば行くんだけど。

わたしが食べる卵のために。

あとはホエール山の岩猿だけど、数が未定なのが困る。終わりが分からない依頼は受けたくない。

ギルマスとクリフに捕まっていなければ他にもあったのかもしれないけど、それは仕方ない。

次にランクCのボードを見に行く。

ランクCのボード

・ワイバーンの素材。

・ある方の護衛、秘密厳守。

・人魚の鱗。

・ザモン盗賊団の殲滅。

・ヒストリの花の採取。

・ウォータースネークの討伐、素材含む。

・ファイヤータイガーの討伐、素材含む。

…………

………

……

ランクCの討伐は面白そうだけど、居場所が分からなかったり、遠かったりする。

でも、人魚が存在したのは驚きだ。

今度、見に行くのもいいかもしれない。

日帰りで面白そうな依頼も無いので帰ろうと思ったら、受付の方が騒がしいことに気づいた。

「どうして、駄目なんだよ」

「駄目なわけじゃありません。時間が掛かると言っているのです」

「それじゃ間に合わないんだよ。父ちゃんも母ちゃんも村のみんな死んじゃうだろ」

背の低い少年がヘレンに向かって泣きながら訴えている。

「ですから、ブラックバイパーを倒せる冒険者が現在いないんです。呼びかけるにしても明日になってしまいます」

「母ちゃんと父ちゃんが・・・」

少年が泣き崩れる。

「どうしたの?」

「ユナさん」

2人のところに近づく。

「それが、この子の村にブラックバイパーが出たそうなんです」

「ブラックバイパーって蛇だっけ?」

「はい、普通のバイパーより大きく、大きい物は全長10m以上になります。すでに村の何人かが食べられたそうなんです。それで、この少年が馬に乗って街まで来たのですが、ブラックバイパーを倒せるほどの冒険者は出払っていて、帰ってくるのは早くても数日後になるんです 」

ブラックバイパーか。

泣き崩れている少年を見る。

「それじゃ、わたしが行こうか」

「行こうかって、そんな近所に出かけるように軽く。ブラックバイパーは大きさによってBランクの魔物になるのですよ」

「でも、急がないと村の人が危ないでしょう」

「ですが」

「危なかったら逃げるから大丈夫。ヘレンは一応、冒険者の召集の手続きをしておいて、時間稼ぎぐらいはしておくから」

「その、姉ちゃん1人で来るのか?」

少年がわたしたちの会話を聞いていたのか心配そうに 尋ねてくる。

そりゃ心配するだろう。ブラックバイパー討伐に1人で向かうと言うのだから。

「先遣隊とでも思ってくれていいよ。情報を集めて、ブラックバイパーを倒せる冒険者のために情報を渡す役目だと思って。それで、その村ってどこにあるの?」

「南東に駆け馬で2日です」

駆け馬で2日ってかなり距離があるのかな。

1日、何時間、走るのか分からないけど。

「本当に行くんですか?」

「暇だからね」

「では、少しお待ちください。ギルマスに確認を取りますので」

ヘレンは席を外し、ギルマスの部屋に向かう。だが、すぐにギルマスと一緒に戻ってくる。

「ブラックバイパーを倒しに行くだと」

「様子を見にいくだけよ。倒せるようだったら倒すし、駄目なら、逃げ出して、情報を集めてヘレンが言う冒険者に任せるよ」

「ヘレン、その冒険者は誰だ」

「ランクCの隻眼のラッシュのパーティになります」

「ランクCの隻眼か。それだけじゃ、不安だ。他にも手配できるならしとけ」

「わかりました」

「それじゃ、行くぞ、ユナ」

「行くって」

「俺も行くんだよ」

「ブラックバイパーの討伐には最低でもランクC、できればランクBが欲しい。でも、それは無理そうだから、状況だけは確認したい。できれば、村人を逃がす時間ぐらいは作りたい」

「でも、行くって、ギルマスはどうやって行くの?」

「俺の早馬を使う。2日でつくはずだ」

「それじゃ、わたしが先に行くよ。わたしの召喚獣なら、1日もかからないはずだから」

「待て、それは本当か」

「召喚獣は2匹いるから、交代で行けば、たぶんね」

「召喚獣か、わかった。おまえは先に行ってろ。でも、俺が到着するまで無理はするなよ」

「了解」

わたしはギルドから出ていこうとした瞬間、少年に引き止められる。

「待ってくれ、俺も連れていってくれないか」

「足手まといよ」

「道案内をする。時間を短縮できるはずだ」

少年の体格を見る。

軽そうだ。

このぐらい重量が増えても平気かな。

「わかった。でも、休憩はないよ」

「構わない。村のためだ。こんなところで一人で待っていられない」

「それじゃ、時間ももったいないから行くわよ。少年」

「カイだ」

「わたしはユナ。それじゃ、行くわよカイ」

街から出てくまゆるを召喚する。

カイは驚く。

「早く乗って、急ぐんでしょう?」

「姉ちゃん、何者なんだ。その格好もだけど」

「そんなことはどうでもいいでしょう。家族が待っているんでしょう?」

カイは頷き、くまゆるに乗る。

その後ろにわたしが乗る。

「しっかり、前を見て、方向を指示して」

カイは頷く。

くまゆるはカイが示す方向に走り出す。

その速さは馬よりも速く、持久力もある。

3時間ほど走るとくまきゅうと交代する。

そのときに短い食事の時間を作る。

「5分で食べなさい」

クマボックスからパンと果汁を出しカイに渡す。

カイは礼を言って飲み込むようにパンを食べる。

「どのくらい進んだ?」

「4割から5割ぐらいだ」

それならあと4時間ほどで着くのか。

「それじゃ行くよ」

くまきゅうに乗り換えて走り出す。

カイは今朝早馬で到着したばかりで疲れているはずなのに、我慢して村への方角をちゃんと示している。

「方向が合っているなら、少しは寝てもいいよ」

カイは首を振る。

「いい、どうせ、眠れない。それに方向が少しでもずれたら、時間が勿体ない。初めはこんな姉ちゃんが来ても無駄だと思っていた。でも、この召喚獣を見たら、姉ちゃんは凄い冒険者なんじゃないかと思う。ブラックバイパーを倒せなくても、村人を逃がすことができるんじゃないかと。だから、早く行きたい。俺は村に行っても役に立たない。だから、せめて道を間違わず短い距離で村に向かうのが俺の役目だと思う」

カイはしっかりと自分の状況を把握している。

この少年大人すぎる。

フィナといい、この子といい、この世界の子供はどうなっているんだか。

「それじゃ、しっかり道案内をお願いね」

「ああ、だから、姉ちゃんも村を救ってくれ」

「やれることはするよ」

村に向かってくまきゅうは走り出す。