Lazy Dungeon Master

Departure. And the desire to renovate the dungeon.

さて、これで憑依用のモンスターの準備は整った。トイに声をかけて、早速旅立ちといこう。……まぁ実験しつつだけど。

一応現時点で『憑依』で分かったこととして、困ったことが一つあった。

憑依中の意識がナリキンとロクファにはなく、俺達が『憑依』した時点から『憑依』を解くまでの記憶は綺麗さっぱりない。

憑依中の記憶の共有ができないのは活動に支障が出るかもしれないが、そこはトイ(が【憑依】する改造済み暗殺者。見た目は斥候職の女の子冒険者)にフォローしてもらおう。

トイのスキルによる【憑依】では、【憑依】を解除したら完全に動けなくなる。それに比べたらナリキンとロクファはマシだろう。

「ケーマ様、よろしければ憑依中の私の身体、ご自由にお使いくださいな? うふふ」

「使わないから」

トイの【憑依】でもダンジョン機能の『憑依』と同様に本体は眠ってしまう。

その間のトイの体? 宿の地下牢の一室に安置しておくよ。意識のない体とか誰も来ない、鍵のかけられる頑丈な部屋に置いておくべきだものね。

他意はないと言えば嘘だ。まぁ、誰とも接触させないから安心してくれ? ……一応、内側から鍵が開けられるように合鍵はもたせておいてやろう。

「というわけで、今日はパヴェーラまで行ってくれ。昼間に俺らが『憑依』していない状態で移動してもらって、夜に『憑依』できるかを試す。『憑依』できなかったら戻ってきてくれ」

「かしこまりました。それでは行ってまいります」

「マスター、ロクコ様。今夜8時にお待ちしておりますね」

俺はナリキンにゴーレム懐中時計を渡す。時間を合わせて『憑依』する予定だ。……鎧の上からローブ着てるから少しだけ大柄に見えるな。

恭しく頭を下げ、ナリキンとロクファは一見普通の冒険者であるトイ(の憑依した加工済み暗殺者)と共に出て行った。

「さてケーマ。8時まで暇ね。デートでもする?」

「たまにはダンジョンに手を入れておきたいところなんだけど」

「あら。それは嬉しいけど……今のところ安定してるし、わざわざ手を入れる必要もないわよね?」

「まぁそうなんだけど、サキュバス村回りでちょっと話を聞いてな」

最近、サキュバス村の情報が出回って、それを聞いて「身包み剥がれてもいいギリギリの装備」を準備してダンジョンアタックするやつとかがいるのだ。

もういっそ料金を取って浅いところで開放したほうがいいような気がしなくもないが、浅い階層だと色々教育に悪そうなので(ダンジョン内なので本人(ロクコ)には無駄な配慮かもしれないが)上手いこと調整したい所存である。

「そんな情報出回ってたんだ? 知らなかったわ」

「ロクコはサキュバス村を覗いたら駄目だぞ」

「……サキュバス達、討伐されたりはしないのかしら?」

「身包みを剥がれるだけで命までは取らないように言ってあるから、『欲望の洞窟』におけるご褒美的な扱いになってるらしいんだよなぁ……」

命まで取ってたら討伐されてたかもしれないけど、そうでないので『欲望の洞窟』にふさわしいギミックのひとつと認識されているんだとか。

……これ何気に熱心なリピーターがいるおかげで地味にいい収入&サキュバス達の息抜き(意味深)になっているようである、とレイから報告を受けたのはここだけの話。

「それで、効率よくサキュバス村に行くためには、ってダンジョンの攻略情報が少し出回っちまってるようでな。倉庫エリアが途中にあるもんだから、魔剣ゴーレムブレードの流出量が増えてるんだ。だからこれも少し改築しようかと思ってる」

魔剣ゴーレムブレードを持ち帰って換金するために攻略情報を使うやつもいる。というか、本来はそれが攻略情報の正しい使い方なのだが。

「なるほど」

「そんなわけで、少なくとも魔剣倉庫エリアを奥に持って行っておこうかなと。そのついでに他にも改装しようと思ってね」

「ふぅん。どんな感じにするの? 案は?」

「……魔剣お試し部屋が『強欲』、サキュバス村が『色欲』って感じだから、あと『傲慢』『憤怒』『暴食』『嫉妬』『怠惰』でも作って七つの大罪にちなんでみるかな? って」

「ん……『怠惰』なら迷宮抜けたところにある休憩所がそれっぽいわね」

そういやそんなのもあったな。じゃあ残るは4つか。

「面倒だし闘技場エリアを『傲慢』か『憤怒』ってことにしない? あ、ボス部屋もいいな」

「うーん、面倒だしって一言がなかったらよかったんだけど。……私(ダンジョン)の事で手を抜かれるのはちょっと癪だから却下ね? それに、それで言っちゃったら謎掛けエリアも無理やり『嫉妬』とかにされそうだし。新しく4つ作っちゃいましょ」

むむむ。まぁロクコがそういうなら仕方ない。

……あっ、いっそ全部のギミックをクリアしないと開けられない鍵があって、その向こうに真のダンジョンコアっぽいダミーコアを置いておくのとかいいかもしれないな。

「でも七つの大罪ってのにちなむのはいいけど、『暴食』とかって何をする気よ。オークとミノタウロスでも徘徊させとく?」

「それもいいが、イチカあたりに意見を聞いてみるのもいいな」

食欲魔人とか言われていた程なのだし、いい意見が貰えるかもしれない。

「ならレイたちにも意見を聞いてみたらいいんじゃないかしら。『傲慢』『憤怒』『嫉妬』の3つで3人に聞くのは丁度数が合うわね」

「ニクにも意見を聞いておこう。仲間外れはよくないからな」

「え、でもそれだと数が合わないじゃない」

「……数を合わせる必要はないよな? みんなで3つのギミックを考える、それでいいじゃないか」

というわけで、手の空いている順に呼び出して何かいい意見がないか聞いてみることにした。