二人は二階の廊下の一番奥の部屋に案内された。

「おぉ……」

部屋に入ってみると、割と大きな部屋で自分が床で寝るスペースがあるのを見て拓海は少し安心した。

拓海は胡桃の方に目を向けると、さっき食べてた海鮮丼を食べた余韻に浸っているのか、まだ幸せそうな笑みを浮かべていた。

そして胡桃が部屋の隅に自分の荷物を置いたのを見て、拓海はエンデ村にいた時から気になっていた疑問を胡桃に問いかけた。

「なぁ、胡桃。どうしここまで親切にしてくれるんだ?」

「え?」

突然の拓海の質問に振り向いた胡桃は目を丸くしていたが、ベットに拓海と胡桃の二人隣り合うように座ると少し考えながら話し始めた。

「ん〜そうだなぁ……。ちょっと恥ずかしい理由なんだけどさ……」

そして一度口籠った胡桃は小さく照れ笑いしながら拓海の方に顔を向けて答えた。

「拓海が私のお兄ちゃんと雰囲気が似ていたんだよね……。あはは、初対面だったし迷惑だったかな? ごめんね」

拓海は意外な理由に驚きながらも胡桃の言葉に慌てて首を横に振った。

「いやいや、迷惑どころか凄く助かるよ! それより胡桃って兄がいるんだな……。胡桃の兄さんは冒険者だったりするのか?」

それを聞くと、胡桃はゆっくりと部屋の天井を少し見上げて寂しそうな顔をした。

「うん。凄く優秀な冒険者でランクも大和に二人しかいないSSSランクの一人だよ……」

想像以上に凄そうな胡桃の兄に驚いた拓海だったが、あまり顔色が優れない胡桃を見て不思議に思った。

「それは凄いな……。でも表情が優れないようだけど、ひょっとして兄さんと何かあったのか?」

そう聞くと胡桃は首を縦に振って拓海の言葉を肯定した。

そして拓海は胡桃の表情が優れないのが余計に気になっていると、胡桃が俯きながら話し始めた。

「いや、自慢のお兄ちゃんなんだけどね……」

胡桃は六歳の頃からずっと兄と一緒に二人組で冒険者の依頼をこなしていたらしい。しかし、一年くらい前に胡桃の兄がSSSランクに上がって一度会ったきりで、それ以降会ってないという。そして、最後にあった時にこれからは一緒に依頼に行けないと言われたらしい。それを聞いた胡桃はショックを受けて大和を飛び出して今に至るようだ。

話を聞いた拓海は、思わず俯き落ち込んだ様子の胡桃の頭をゆっくりと撫で始めた。胡桃は急に撫でられて、ちょっと驚いた様子を見せたが、そのまま目を瞑って気持ち良さそうに拓海に撫でられ続けた。

(もっと深刻な何かがあるのかと思ったんだけどな……。要は胡桃の兄さんと一緒に依頼を受けられなくなって落ち込んでるのか。何だ兄想いのいい子じゃないか!)

撫でられていた胡桃が少しゆらゆらと揺れ始めて眠たそうに見えたので、撫でるのをやめて先に風呂に入るように促した。胡桃は少し名残惜しそうな顔をして拓海に礼を言うと、拓海が覗きをする人ではないと分かっていながらも顔をほんのり赤らめて「絶対覗かないでね!」と言い残して着替えを両手に抱えて風呂に入って行った。

その後、一人になった拓海は自分の荷物整理をしてから椅子に腰掛けて今後についてのこと、先程聞いた胡桃の兄のことなどを考えたりしてのんびりと過ごしていた。

(それにしてもSSSランクか……。この世界にどのくらいSSSランクがいるかはわからないけど、凄く強いんだろうな)

そして拓海は元の世界の事を思い出しながら物思いにふけていると、髪が少し湿ったままの胡桃が顔を火照らせ風呂の方から出てきた。

「お先! ど、どうかな? 変じゃないかな?」

心配そうに一度くるりと回る胡桃は薄いピンク色の触り心地の良さそうな寝巻き姿になっていた。胡桃が普段着ているくノ一の服とはまた違い、寝巻き姿の胡桃は年相応の幼さが出ていてとても似合っていた。

「全く変じゃないよ。何かうちの妹を見ているみたいだ」

「妹? 拓海って妹がいるんだ! 拓海が風呂から出たら色々聞かせてよ!」

それから風呂から出た拓海は胡桃と、自分達の兄弟の話。拓海の妹である桐生柑菜と胡桃の兄である神崎魁斗の話で一夜を明かすのであった。