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4-34 Yamato Toyota Festival 10

「まもなく桐生拓海と仮面による決勝戦が始まります」

会場からそうアナウンスが流れた。観客達は皆既に席についていて決勝戦を待ちわびていた。

もちろん胡桃、柑菜、ソラ、志乃もそれらの一人である。四人は決勝戦の拓海の相手である仮面の底が知れない強さを準決勝で目の当たりにしていたので拓海が勝てるかどうか心配していた。

「どうした四人共? そんな辛気くさい顔して」

四人が心配そうな顔をしていると後ろから陽気な声が聞こえてきた。振り返るとアルスが屋台で買ったのか沢山の食べ物を抱えていた。アルスが隣の桜の席に食べ物を全て置いて、大きく背伸びした。

そんなアルスを見て桜がいないことに気づいた胡桃はアルスに尋ねた。

「あれ? 師匠はどこに?」

「ん〜? トイレじゃないかな。さっき桜ちゃんは屋台で沢山食べーーがはっ!?」

アルスの体が横に曲がりくの字になってその場にしゃがんで悶絶していた。

いつの間にかアルスの隣には笑顔の桜が立っていた。

「すいませんね。この人がずっと屋台を回り続けたせいで遅れてしまいました……」

「あは、あははは……」

口の端にソースがついたままの桜が満足したような顔で呟いたのを見た胡桃と柑菜は若干引きつりながら笑っていた。

そうなるのを予想したのか志乃はソラに後ろを見させないように二人で雑談しながら試合が始まるのを待っていた。

「ん……。二人出てきた」

志乃がそう指をさして呟くと既に拓海と仮面が十メートルの距離をとって立っていた。

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拓海は桔梗を鞘から抜いて構えながら仮面の様子を見ていた。

(ベルデを触れずに倒した原因も結局分からなかったな……。ベルデは機械の中でも何か気絶してたみたいだし)

拓海は緊張しながら仮面を見ていると、仮面が拓海を指差してから突然肩を上下に揺らしてみせた。

(ん? なんだ……? もしかして肩の力を抜けってことか?)

仮面の仕草を訝しみながらカウントが十を切ったところで拓海は大きく深呼吸して、スッと目を細めて仮面に向けて殺気を放つ。

そして、そんな拓海の様子を見た仮面が一つ頷くと、三十のカウントが終わり決勝戦が始まった。

だが拓海はいきなり仮面に向かっていこうとはせずに桔梗をしっかりと握りしめ、まずは落ち着いて仮面の動きを見ることにした。

(さあ……どうくーーッ!!)

突然背後から身の毛がよだつほどの殺気と気配が拓海を襲う。

しかし拓海は全身から嫌な汗が吹き出しながらも何とか平静を保ち、あえて後ろを振り向かずに正面をしっかりと見据えると仮面が最初の位置から動かないままこちらを眺めていた。

(やっぱり……あいつどんな原理か全くわかんないけど殺気と気配を自由に発生させてやがる……)

原理が分かった拓海が今度こそ仮面に向かっていこうとした瞬間、今度は正面から体を射抜かれるような感覚と羅刹やバンダースナッチと戦った時と比較にならないほどの殺気が拓海を襲った。

拓海は全身が震えて逃げだしたくなる気持ちが湧き上がってきそうになったが、何とか耐えて仮面に立ち向かおうという気持ちを強くもった時だった。

(暖かい……)

拓海が桔梗の方に目を向けると微かに光り輝いた気がしたのと同時に身体が軽くなって全身からやる気が漲ってきた。

そして、いつの間にか正面から感じていた殺気が何もなかったかのように感じられなくなっていた。ルール違犯のアラームが鳴らないことからどうやらこれは魔法ではないようだ。

(これは……桔梗の力なのか? それはそうとこれでやっと戦える!)

「せあぁああああ!!」

拓海が仮面に向かって走っていき、雄叫びをあげながら怯む事無く斬りかかると仮面は少し驚いた様子を見せて大きく後ろに跳んだ。

(よし! いける……。これからが本当の勝負だ!)

拓海の目には燃えるような闘志が漲っていて、桔梗を再び正面に構えるのだった。