Lead the other world.
5-27 Shadow of the Demon General 2
死んだはずのレダが現れたことで拓海が困惑していると黒フードを外したレダも驚いた顔で拓海達を見ていた。
「お前が桐生拓海だな?」
拓海の知り合いだったレダが拓海を知らないわけがなく、拓海はすぐに目の前にいる男がレダではないとわかった。
「やっぱりレダじゃないよなお前……。何者だ?」
拓海は桔梗を抜いてレダの顔をしたその男を睨みつけた。すると何故か驚いた表情をしているレダの顔をした男は拓海の問いかけを無視して拓海と柑菜の顔を見て呟いた。
「それにしても驚いたな。まさかお前達らもこちらの世界に来ていたとはな」
「っ!? こちらの世界……だと?」
(ちょっと待て。何故俺達が違う世界から来たことをこいつは知ってる? それに俺達を知っている……っ!! こいつっ!? こいつはまさか!?)
嫌な予感が頭の中に浮かんだ拓海は冷や汗をかきながら目を見開いてレダの顔をした男を見つめた。
「そうか。この顔じゃわからないか……」
そしてレダの顔をした男は手を自分の顔にかざした。
「これで思い出したか? 俺がこちらの世界に来る前に出会った男と女」
レダの顔をした男が顔にかざした手をどけると、そこには拓海がこちらの世界に来る直前に襲われ、共に橋から落下した通り魔の男が立っていた。
(そうだ……俺と一緒に橋から落ちたならこいつもこの世界に来ていてもおかしくない……)
「柑菜さん!?」
そう拓海が冷静に考えていると、後ろからソラの驚いた声が聞こえた。すかさず振り返ると、柑菜が突然その場に崩れるように座り込み、両手で自分の体を抱いて体を震わせ始めた。
「柑菜!?」
「あぁぁ……や……だ……。お兄ちゃん……一人に……しないで……」
あの時のことが相当トラウマになっている柑菜は通り魔の男の顔を見て、その時のことが頭の中にフラッシュバックしてしまったのか完全に冷静さを失っていた。
「くそっ!?」
拓海は通り魔の男の動きに注意しながら素早く柑菜が持っていた松明を手に取り火をつけた。
「一応聞いておく。お前が大和で次々に人を殺してる犯人だな?」
松明をその場に置いて、拓海は通り魔の男を睨みながらそう問いかけた。
「あぁ……そうだとも。あのお方からいただいた力で俺の力の糧となってもらった。お前らも俺の力の糧になってもらおうか……」
「てめぇ……。余裕があるのも今のうちだけだぞ。その内増援も駆けつける。そうなればお前に逃げ場はないぞ」
「それはない。桐生拓海よ……」
柑菜の前に立ち桔梗を構える拓海のその声に黒フードを外した通り魔の男の後ろから現れた黒ローブを身につけた紅い目をの魔族の男が答えた。
「お前は……? それに増援が駆けつけることはないってどういうことだ?」
「アストレアの時は世話になったな。俺は魔将の一人、ネビロスだ。後ろを見てみろ」
拓海が後ろを見ると、目を見開いた。
大和のあちこちで、拓海があげた松明の煙と同じような煙があちこちに上がっていた。
「どう……なってるんだ……?」
呆然と呟く拓海にネビロスが答えた。
「俺が街中にモンスターを放った。ちなみにSSランクのモンスターを三体島を取り囲むように召喚したぞ」
「お、お前……なんてことを……」
(まさかアストレアに大量のモンスターを押し寄せさせたのも、ゴブリンロードを死の森に呼び出したのもこいつの仕業か!?)
すると青ざめた顔をした拓海に向かってネビロスは手を向けた。
「“デスファンタズマ”」
「なっ!?」
ネビロスの手が紫色に光ると黒い靄《もや》がかかった大鎌を持った巨大な死神が現れると、一瞬で拓海に近づき大鎌を振り下ろした。
(あ、駄目だ。間に合わない……)
一瞬反応が遅れてしまった拓海は桔梗で防ごうと振り上げようとしたが間に合いそうもなく呆然と迫りくる鎌を見つめることしか出来なかった。
「“フルクシオ・プロテクション”!」
すると拓海の後ろから魔法を詠唱する声が聞こえると同時に死神の鎌は拓海の手前で何かとぶつかり火花を散らして弾き返された。
「何だと……?」
「ねえ、僕も混ぜてよ」
拓海が声がした後ろを振り向くと、柑菜の後ろからへらへらと笑いながら殺気を放って歩いてくる銀色のマントをつけたアルスがいたのであった。