Lead the other world.

6-6 In the Sacred Capital Astrea 1

「お……、あれは……」

先頭を歩く拓海の視界に見覚えのある立派な街の外壁が見えてきた。

拓海達はエルフの里に直接向かうには歩きだと時間がかかりすぎるのでデプラファンという馬型のモンスターを借りるということと、久々に行ってみたいということからまずアストレアに向かうことにしたのである。

ちなみに拓海達はアストレアの次はエンデ村、そして死の森を抜け、壁のように立ちはだかる山脈を迂回してエルフの村に向かう予定である。

そして野営をして朝から歩き続けた拓海達は陽が落ちた今、ようやく聖都アストレアに辿りついたのであった。

「はぁ……。初めてこんなに歩いたかも……」

「だな、向こうではこんなに長い距離歩くことなんてないもんな」

疲れきった表情の柑菜の呟きに拓海が同意していると、柑菜が自分の隣を歩く志乃をジト目で見つめた。

「志乃が見たことがない花とか見つけた瞬間、勝手にどこか行っちゃうし……」

尻尾を左右に揺らしている志乃は心当たりがあり過ぎて、目を泳がせながら顔を背けた。

志乃は初めて見る植物や、珍しいものを見つける度にふらふらとそちらの方に行ってしまい、今日アストレアの到着が遅れた一番の原因は明らかに志乃であった。

「このモフモフめ!」

「ひゃっ……!?」

耐えかねた柑菜は左右に揺れる志乃のふわふわの尻尾に飛びついて頬ずりを始めた。

尻尾を突然掴まれた志乃は身体をビクリと震わせ、顔を紅潮させて座り込んでしまった。

「や、やめっ……柑菜っ……!?」

「やっぱり志乃はふわふわだね〜……」

しかし柑菜は志乃の抵抗を無視して、今度は志乃の髪に顔を埋めた。

「あ〜……、幸せ……って痛っ!? 何するのお兄ちゃん!?」

もうすぐアストレアだというのに志乃を弄り続ける柑菜の頭に拓海はげんこつを軽く落として、志乃から引き離した。

「もうすぐアストレアなのに何やってんだよ……。えっと志乃……大丈夫か?」

頭をさする柑菜に一言言った後、耳を小さく震わせ顔を紅潮させて俯く志乃に拓海は一応心配して尋ねた。

「ん……。何……とか……」

そう呟くように答える志乃の尻尾は元気がないのか下に垂れ下がっていた。どうやらあまり大丈夫じゃなかったようである。

「あはは……二人共元気だね〜……」

拓海の隣で汗一つかいてない胡桃が苦笑していた。

それから志乃も立ち上がったところで四人は再び歩き始め、あと五分もすれば着くくらいの距離まできたところで拓海は口を開いた。

「アストレアに着いたらまず宿を探して、夕飯食べに行くか」

「賛成! 早く美味しい物食べて、ベッドで寝たいなぁ……」

「ん……。志乃も……それでいい……」

「私もそれでいいよ!」

その後、拓海は胡桃と宿の場所と夕飯を食べる店を相談しながらアストレアに向かって歩き続けるのだった。