Lead the other world.

真の姿である、黄金の獅子となったリヒトのすぐ側で浮かぶ純白な天使の羽を広げるルミエールに憎悪の目を向けたクレアは小声で呟く。

「ならば試してみるか？　“ライフクリエイション”」

霊気を身に纏い、魔法を詠唱し龍の翼で飛び上がるクレアの側に大量の白い光の粒子が集まると共に、周りに四体の赤、緑、青、黄色の鱗を持つ龍が翼を広げ姿を現した。

その様子を見ながらルミエールは目を細め、静かに両手を合わせる。

するとルミエールの身体の中心から徐々に光が溢れ出し、天使の翼で自分の身を包み込んで自分の本来の力を解放する鍵となる魔法を詠唱する。

「“アンジュ・リュウール”」

その瞬間、世界に光が満ちた。

夜で辺りが暗かったはずが一瞬真昼の明るさになる。

そして、光が徐々に収束していきその中心には神秘的な、言葉では表せない美しさとこの世のものとは思えないほど神々しく虹色の光を身に纏う女神が降臨していた。

透明感のある三対の純白な天使の羽。溢れ出す黄金の後光と身に纏う虹色の光。

そして新しく出来たもう一つの太陽の如く輝き、快晴の大空を彷彿とさせる二つの透き通ったスカイブルーの瞳でクレアを眺めるルミエールに、クレアの周りに創られた四体の龍が口からそれぞれ炎、風、水、雷を放つ。

視界一杯に広がる四属性の龍の攻撃。

しかしルミエールは表情一つ変えることなく手をかざす。

「“アドヴェント”『アルマロス』」

するとルミエールの羽の一つがよりいっそう強く輝く。これこそルミエールが使うことが出来る最強の力の一つ、過去に存在していた天使を自分に宿してその力を行使する力である。

正面にルミエール以外決して解読出来ない複雑な巨大な光の結界が展開される。

そして四属性の龍の攻撃がその魔法陣とぶつかり合いーー

ーー消えた、最初から何もなかったかのように。

そして四属性の攻撃を結界で無効化したルミエールはすぐさま残光を作りながらクレアに接近すると、それに反応した獅子姿で自我のないルクスが鋭い爪で切り裂こうと飛びかかってくる。

「目を覚ませ、同族よ」

その言葉と共にルミエールの後ろから同じく獅子の姿となったリヒトがルクスに高速でぶつかり、咆哮を上げ合う。

そして二人となり、ルミエールはそのまま龍の翼で浮かぶクレアに手をかざす。

「“アドヴェント”『ラシエル』」

また一つの翼が輝き、ルミエールの手からおびただしい量の暴風がクレアに襲いかかる。

(本気を出してきたか……。ならばーー)

霊気で身体能力が大幅に上がっているクレアは一気に高度を下げて暴風に向かって咆哮を放ち相殺する。

すると辺りに膨大な魔力の衝撃波が広がり、クレアは空中で回転しながら塔の屋上に着地してルミエールを見上げた。

そこには光の結界に包まれ、無傷のルミエールがクレアを見下ろしていた。

そんなルミエールを見て、クレアの心の中で悟る。

「やはり……お前達相手ではこちらも出し惜しんでは勝つことは出来ないな」

クレアは金と銀のオッドアイを見開き、身体の奥底。自分の中で抑えていた、その力に手を出した。

するとクレアの身体が輝き始め、クレアを中心に白い魔力の波動が空気に伝わっていく。

そして輝き始めたクレアの身体の輪郭が崩れ、その輪郭はどんどん上に広がっていき空高く飛び上がっていきーー

「あの時以来だ。この姿は」

ーー光が弾け、その姿を現す。

月明かりに照らされた純白の鱗は一つ一つ淡く白いオーラを纏っている。巨大な真っ白な二つの翼には魔力と霊気が脈を打つように流れ、翼には煌めくスカイブルーの模様がある。二本の純白の角がある頭には金と銀の瞳があり、四本の脚には鋭く巨大な爪が備わり、純白な鱗に覆われた長い尻尾が蠢く。

その姿はまさに空を統べる伝説の白龍。それこそ始まりの七人が創りし始祖の白龍、ラダトーム帝国を統べるラダトーム帝国騎士団長クレア=ルナケーニヒの真の姿であった。