(どこだろここ……?)

服が濡れ、肌に張り付く何だか不快な感覚に少女は顔をしかめる。

濡れた髪と頬をぽたり、ぽたりと雫が流れ落ちる。

足元が泥濘《ぬかる》み、湿った土の匂いが漂っている。

目を覚ました少女は辺りを見回し、雨で湿った鮮やかな緑色の短い草が生い茂ったどこまでも広がっている見知らぬ景色が広がっている。

ふと空を見上げると暗雲がたちこめ、僅かな隙間からまばらに星が煌めいて見える。

(雨、降ってたのかな)

そして、ぼんやりと空を見上げていた少女が視線を下げ、目を見開く。

先程までどこまでも草原が続いて見えていたのが今は何も見えなくなっていた。

視界一杯に霧が広がっていたからである。

(何で急に霧が……)

そんな言葉を頭の中で考えた時だった。

ーーふふっ……

少女の頭に見知らぬ女性の声が響く。

「だ、誰?」

少女は辺りを見渡しながら思わず声を上げるが、誰も見当たらない。

ーー『今は』知らなくていいわ

頭に響くその声には艶があり、人の心の中にスルリと入ってくるような妖艶な雰囲気がある。

そして見知らぬ女性の声がそのまま話を続けた。

ーーあなたは本当に良い素材だわ……今すぐにでも手に入れてしまいたいけどーー

その直後少女は身震いした。

「きゃっ!?」

言っている意味が全く分からず、黙っていた少女は背後から突然何かに抱き締められたのである。

ーーあなたは求めるわ、自分から……

「いつか、必ずね」

そして背後から囁かれたその言葉を最後に再び少女は意識を失った。