その後、出来るだけ四人は気配を殺してしばらく周囲の調査をして、いくつか分かったことがあった。
一つ目、四人で魔力や生き物の気配を探ってみたところ、この辺りに人とモンスターの気配が一つもなかったこと。
二つ目、来た道を戻ったり横道に逸れようとすると知らぬ間に霧が発生し、最初にこの森にいることに気付いた場所に戻ってしまい先にしか進めなくなっていることである。
最後は四人共持ち物で無くなっている物もなく、魔法も問題無く使用出来るということである。
だが四人は今自分達がどこにいるのかは分からなかった。一時間ほど前から魔法にかかっていて、自分達が本当に予定通り街道を進んでいたのか自信がない上、魁斗の話では街道の途中にこんな森を突っ切る場所などないということが理由であった。
そして自分達が今置かれた状況を確認したところで、四人は森の中を歩いて行き約一時間経ったところで森を抜けることになる。
抜けた先は霧に包まれ、短い雑草が生い茂っている。
「にゃぁ……森を抜けたにゃ」
殿を務めるノアは小声で呟き、辺りを見渡す。
そして、後ろを振り返り視界に入った光景に目を丸くした。
「皆、あれ見るにゃ」
その言葉に反応し、振り向いた三人も目を丸くして拓海が呟いた。
「何だあの木の形……」
四人の視界に入ったのは、今まで自分達が通っていた森から何本か異常な形で捩れた木が伸びていたり、途中から先の方が黒焦げになり無くなった太い木が飛び出していたりと、通常では考えられない跡であった。
「もしかしてこの森は誰かが魔法で作り出したのかもな」
「そうですね……。私の知り合いにも植物を操る特殊属性の方がいて、何度かその人の魔法を見ていますが可能だと思います」
「でも、何でそんなことを?」
「にゃー、あれがその答えじゃないかにゃ」
拓海の疑問にノアは自分達が抜けてきた場所とは違う、少し離れた場所を指差していた。
そこは森の内側から外に向けてかなりの広範囲に渡り周囲の木々が無くなっていて、周りの木々や地面が黒ずんで腐敗していた。
「多分何かと戦っていたんだにゃぁ……」
「あぁ、それに両者共恐らく相当な使い手だろう。それに、この跡が付いたのは結構前のようだな。魔力の残痕もほぼ残ってないし」
魁斗が目を細めその場所を見つめながら分析していると、真逆の方を向いていたアイリスが声を上げた。
「あれ、これもしかして……」
「どうしたアイリス?」
「この石の破片ですよ。ずっと先まで落ちていて……。これってどこかの街道の一部ではないでしょうか」
その後、魁斗とノアがその石の破片を調べて恐らく街道の一部だと考え、とりあえず四人はどこに続いているか分からないが砕けた石の破片を辿っていくのだった。