Lead the other world.

9-10 Vacation 1

数日後、港町ミンスクで久々にデートをしたりしてのんびりと過ごした拓海と胡桃は、大和行きの船で朝ミンスクを発った。

そして現在昼前。二人は久しぶりに自分達の冒険者としての拠点、大和に帰還していた。

数ヶ月ぶりの見慣れた大和の光景を前に二人は安心したのか大きく伸びをしながら、息を吐いた。

「今回より長い期間大和から離れていた時もあるのに、何故かすっごく久しぶりに感じるよ」

「そうだな〜……色々ありすぎたしな。それに、俺は仁さんの試練を受けてたから余計にそう感じるなぁ」

「あー……そうだったね。今はもう大丈夫なの?」

拓海がしみじみと呟くと、仁の試練の後に拓海が精神崩壊しかけていたことを思い返した隣に立つ胡桃が、心配そうな表情で拓海の顔を覗き込む。

すると、拓海はジト目で胡桃の頭をわしゃわしゃと雑に撫でた。

「わっ、わっ!? 何すんの!」

「そりゃこっちの台詞だ。俺はもう何ともないけど、胡桃は本当に何ともないんだな?」

「もー、大丈夫だよ〜」

撫でられて少し乱れたさらさらの髪の毛を直した胡桃は、腰に手を当て拓海を見上げながら少し紅くなった頰を膨らましていた。

「ははっ、ならいいんだけどさ」

「もぅ、心配性なんだから……行くよ!」

拓海はそんな胡桃の様子に小さく笑ってしまうと、胡桃は息を吐いて拓海の手を引き、二人は歩き始めるのだった。

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ーーカチャ……

「あれ?」

家の扉が開く音が微かに聞こえた。

鼻唄を歌いながら自分の洗濯物を畳んでいた柑菜は、その音に思わず顔を上げる。

(誰だろ?)

今日は特に知り合いと会う予定もなかった柑菜は、天井を見上げて考えながら怪訝な表情を浮かべた。

そして、そんなことを考えている柑菜の脳内に一人の少年が尋ねた。

(あれ、魔力探知しないの柑菜?)

(え、あーそだね)

柑菜が契約している光の大精霊ルクスの率直な疑問に、柑菜は思い出したかのように答えた。

(最近緩んでるなぁ……大丈夫?)

(う、うるさいなぁ。家なんだからいーでしょ〜)

柑菜の心の世界でのんびりと過ごすルクスと、脳内で何時も通り軽く言い合った柑菜は唇を尖らせながらも目を閉じて魔力探知をした。

(えーと……)

直後、家に入ってきた者達が誰か分かった柑菜は目を開け、表情が一段と明るくなった。

「あっ!!」

驚きと嬉しさでつい声を上げてしまった柑菜は勢いよく立ち上がり、部屋を飛び出した。

そしてドタドタと足音を立てながら走っていき、柑菜はあっという間に玄関に辿り着いた。

「ただいま柑菜!」

「柑菜! 帰ったよ!」

玄関に辿り着いた柑菜の目の前には、特に目立った怪我も無く元気そうな様子の拓海と胡桃の二人が立っていた。

先に大和に帰った柑菜は自分が知らない依頼を受けていた拓海と、目を覚まさなかった胡桃のその後をずっと心配していた。

だから拓海と胡桃がこうして笑顔で帰ってきたことに、柑菜の表情は明るく、嬉しさからか頰が緩んでいた。

そして、そんな二人の言葉に柑菜は満面の笑みを浮かべて応えるのだった。

「二人共おかえり!」