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Episode 196: The Golden Rose Queen Dragon Again

ゴールドローズクィーンドラゴンは、俺たちに向かって蹴りをかましてきた。

当たっても痛くも痒くもないし、暴れられてもこの部屋は壊れないから問題はないんだけど、とりあえず俺は念術で動きを止めた。

「ふぅ…なんで襲ってきたんだろ?」

「んー、生き返ったばっかりで暴走してるとか…?」

ミカはそう予想した。

しばらく暴れようとしていたゴールドローズクィーンドラゴンの抵抗が、だんだんと弱くなっていく。

ある程度弱くなったところで、俺は念術を解いた。

<ぐ……ここは?>

ミカの予想通りだったね。

ちゃんと意識が戻ったみたいで、暴れることなく金薔薇竜は首を動かしながら辺りを見回す。

そして、俺とミカの姿をその大きな目でとらえた。

<む…我を破りし少女らか…>

「うん、久しぶりっ!」

俺はゴールドローズクィーンドラゴンに向かって手を振った。

<あぁ…赤髪の少女…。汝はまた後で…と言っていたな。それが今、というわけか>

「そうだよ」

<我に対する口調が軽くなっておらぬか?>

「だって、君はボクに倒されたじゃない」

<むぅ…>

見るからに、ショボーンとうなだれている。少し可愛い気がしなくもない。

やっぱり、このドラゴンは魔物としては少し変わってる気がするなぁ…。

俺が知らないだけで、もしかしたら、ドラゴンはみんなこうなのかもしれないけど。

「そうそう、今は君を倒してから2ヶ月経ってるよ」

<ほぅ…そうなのか…で? 我を蘇らせた方法と理由は何だ?>

ゴールドローズクィーンドラゴンはその場に正座をするように座り(?)こみ、質問をしてきた。

「方法は、まぁスゴイポーションを使ったとだけ。理由は君に実験を手伝って欲しいから」

<実験……?>

「そう、実験」

俺は、マジックポーチからスキルカードを2枚取り出した。一方は『眷属契約』で、一方は『人間化』。

「スキルの効果を試したいんだよ」

<なるほど…な>

「……あれ、抵抗しようとしないのかな?」

いやにおとなしいゴールドローズクィーンドラゴンを不思議に思ったのか、ミカは俺に質問した。

それに答えたのはドラゴンだった。

<緑髪の少女よ、あの時は冷静でなかったからわからなかったが……今思えば汝らは、SSランク亜種である我を瞬殺した。だから抵抗しても無駄だと考えたのだ。汝らは正直…化け物だ>

化け物に化け物と言われてしまった。

確かに、化け物的な強さを持ってるかもしれないけど…心外だなあ。これでも俺とミカは絶世の美少女なんだけど…。

まぁ、俺達の美貌はドラゴンにはわかんないか?

「化け物かぁ……」

<おぉ…これはすまぬ。見た目はこの上なく可愛らしいのだがな…実力が…>

あれ? 意外だ、ドラゴンが人間の俺とミカを可愛いと申すか。

わかんないとおもったんだけどな。

「魔物にも人間を可愛いとかって思う感情ってあるの?」

<ドラゴンのように、一定の知能を持つ魔物はある。他は知らん>

「でも、ずっとダンジョンに居たゴールドローズクィーンドラゴンは、他の誰と比較して私達を可愛いって思ったの? 可愛いって評価は嬉しいんだけどね」

<母なる迷宮から与えられた知識からだ>

母なる迷宮…あのダンジョンね。

よく考えたら、今からすることなすこと全部、あのダンジョンから手に入れたものだな。

案外、スケールの大きいダンジョンだったのかも。

俺が強すぎてわかんなかっただけで。

…と、話が逸れ過ぎちゃった。本題に移ろう。

「じゃ…そろそろ本題ね」

<む…我も生き物だ。痛みは好ましくない。手加減してくれよ>

痛いのを嫌がるのか。それは確かに誰だってそうだけど…やっぱり、このドラゴンは面白いな、なんか。

「大丈夫、痛くないと思うよ。でね、2つやりたい実験があるんだけど、君には選んで欲しいんだ。どっちをやりたいか」

<ほぅ…我に選ばせてくれるのか>

「うん、成功したらボクから召喚される召喚魔になるか……成功したら人間になるか、だよ」

<人間になるか…だとっ!?>

ドラゴンは妙に人間になるほうに食いついた。

「あっ…人間になるのは嫌だった?」

<いや、違う…選ばせてもらえるのなら、我はそちらが良い>

「それまた、なんで?」

<……人間は話し、笑い、恋をする。ずっと一人だった我としては、羨ましいのだ。まぁ、ほとんど眠っていたのだが……>

話しをして、笑って、恋がしたい…か。

そっか、人間になる方を選ぶか…。

ちょっとミカに相談しよう。

「わかった、じゃあちょっと待ってて」

<うむ>

俺はゴールドローズクィーンドラゴンを待たせて、ミカと相談を始めた。

「ね、ね、どうしよう。人間が良いって」

「なら…人間にしてあげたら?」

「もしかしたら、万が一、この家に住まわせることになるかもだけどいいかな?」

「私達の仲を邪魔しなければ構わないよ、私は」

「そっか」

俺は、ドラゴンの方を向き直す。

<相談は終わったのか?>

「うん、今から実験を始めるね」

<あぁ…>

俺は、眷属契約のスキルカードをバックにしまい、人間化のスキルカードをゴールドローズクィーンドラゴンにかざした。