Levelmaker

Episode 583: Whenever

「ふふふーん、あゆむぅ」

美花がすごい甘えてきた。

今はアナズムに居て、サーカスを俺たちの感覚で2日前に見たばかりだ。

その次の日、日曜日にイチャつきたかったんだけど、いかんせんそういうわけにもいかない。世間体があるし、親が途中でくるなんてことになったらそれこそもうヤバイ。

デートに行って途中のホテルで休憩という名目で……みたいな感じでも良かったんだけどね。

なんや感や俺たち疲れてたから、美花の部屋で寝転がって漫画やゲームをしてたくらいだったんだよね。

「あゆむぅ! すーきっ」

「えへへ、俺もぉ」

ああ、幸せだ。

昼食後のコーヒー…じゃなくてカフェオレと甘いクッキー適量。そして最愛の幼馴染。なんていいアフタヌーンだろう。

のんびりしてる。

こっちの世界では大抵、週の始まりには仕事を入れていない。こういう風にゆっくり休むためだよ。

「ね、有夢」

「ん? なぁに?」

「今日……するでしょ?」

首を傾げ、まるで子猫がねだってくるようにそういった。反則だって。存在だけでも男の人を堕とすのに、可愛いポーズとかをされると15年らいの幼馴染であり婚約者である俺でもクラっとしてしまう。

「ん、そうだね」

「えへへぇ…地球じゃ裸で寄り添って最後までしちゃうなんてことできないからね」

「い、一応こっちにも叶達が居たりするんだけどね」

「いいの。完全防音だもん」

美花が口を近づけてきた。俺もそれを口で迎えてやる。

キスはまだ通過儀礼みたいなものだね。ほんのちょっと前までキス一つで心臓破裂しそうだったんだけど。

ああ、カフェオレの味がする。

ほろ苦くて甘い。

「はふ。よしじゃあベッドに行こうね」

美花は誕生日の日以来、お姫様抱っこしてあげるとすごく喜ぶ。だから今回もお姫様抱っこでベッドまで運んであげようとしたんだけど……。

「あ、待って」

止めれてしまった。

「どうしたの?」

「いつもと違うことしない?」

「ん? いいけど」

美花がそう言った時は…場所とか着てるものとかを変えたりしてるの。刺激ってやつだね。

5回に1回くらいはこういうことあるよ。

「じゃ、ちょっと訊きたいんだけど、有夢はこっちの私と向こうの私、どっちが好き?」

「えっ!?」

全くの予想外だ。なんてこと訊くんだろ。

そんなの答えは決まってる。

「どっちも心から愛して_____」

「ん、やっぱりそう答えるか。ちがうのよ。私が訊きたいのはそういうことじゃなくてね。その…ね、体型とかの問題なんだけど」

自分で言って恥ずかしいのか、美花はモジモジしてる。可愛い。それにしても体型か。

「か、髪の色は好きなように変えられるじゃない? 有夢は向こうでは黒髪が綺麗で好きだって言ってくれるし、こっちじゃエメラルドグリーンが宝石みたいだって。でも、ほら、年齢と体型ってさ、変えられるのは有夢の特権でしょ?」

確かにそうだ。つまり美花は13歳の自分と16歳の自分、どっちが好みかを俺に聞いてるんだろう。

それで、返答次第では、俺がアイテムマスターで作ったアイテムで、今日は地球の方の体型で……ってことか。

「それでね、有夢は中学1年生程度のこの身体と、16歳の時の胸があるこの身体、どっちがいいかなーって」

つまり胸が大きい方か小さい(と言っても同年代と比べたら大きい)方か、どちらがいいか選べということだろう。

俺は今まで、好みの体型なんてなかった。

いや、たしかにえっちな本とか持ってたけど、あれも別に胸では選んでいない。翔みたいに。

もっといえば、脇が好きだとか、お尻がいいだとか、脚がいいだとかっていうのもなかった。

端的に言えば美花そのものが好きだったから。美花が貧乳だろうが地球のミカ並みに大きかろうが関係ない。

でも俺は今、選択を迫られている。

……よく思い出せ、俺。こちらの裸も向こうの裸もまじまじと見つめたはずだ。……それでその…良かった方は……。

「じゃあ今日はアイテムで地球の時と同じ姿なってし、しようか?」

「うん! えへへ、それにしても良かったわ。これこらそっちの体も成長してゆくのに、凝ったの今の成熟しきってない方を選ばれたら困ってたもの」

たしかなそう考えたらそうだ。そうなると俺はロリコンということになる。……あれ? こっちのミカともう何度も大人なことしてる時点で……いや、違うはずだ。

「じゃ、アイテム作って? 今日は先に私、ベッドの上にいるから」

「ん!」

俺は急いで作った。

まあ一瞬でできたんだけど。

完成したボールのようなものを俺とミカの寝室に投げ込んだ。これでしばらく身体は地球とおなじになる。

「……さ、来て!」

「…うん!」

すでに準備が済んでいるミカの隣、ベッドに潜り込む。

「えへへ…好きにしていいよ」

「…じゃあお言葉に甘えて…」

胸に手を伸ばした、その時だった。

【アリムとミカ! 余だ! ラーマだ! 少し気になる文献を見つけたんだが、今、忙しいか!?】