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Episode 672: National Convention Individual Fights! (Xiang)

準決勝が始まった。

俺と剛田は互いに何も話さず、ただ、決勝で戦うことになるかもしれない相手の試合を見ている。

試合開始1分半、◆◆高校の毛利が勝った。つまりまた、俺か剛田の相手はあいつになるってことだ。

試合が終わった毛利は俺たちのもとにやってくる。

「よう、お二人さん。……同じ高校同士で戦うんだな」

「そういうことだ」

「昨日、お前ら二人ともと戦ってるからわかるが…どっちが勝ち進んできても俺は苦労することになりそうだな。負ける気は無いが」

「こちらこそ」

毛利は少しだけニヤリと笑うと、控え室へと足を向けながら口を開く。

「同じ高校相手に2度も負けない」

そう呟くと、奥の方へと消えていった。

……アナウンスが俺たちを呼んでいる。

「行くぞ剛田」

「ああ、部長。いや、火野」

俺と剛田は前に出る。

俺は右側、あいつは左側。対局の位置で立ち尽くす。

観客がたくさんいるが、そんなのは無視だ。どちらかが負けても恨みっこ無し。

ガチで相手をする。

「はじめぇぃ!!」

礼をし、定められた土俵の枠の中に入ったところで審判が手を下ろした。

素早く移動してきた剛田に、いきなり胴着を掴まれる。俺もあわてて胴着をつかみ返す。

そこから俺は首襟を掴んだ。

しかし、剛田はそれをほどき構え直す。また最初からだ。

しばらく掴み合いをしていたが、不意をついて剛田が自分の姿勢を低くし、俺の胴を掴もうとした。

俺はそれを回避し体制を立て直すとともに、腕を掴み、足を払おうと試してみる。

おしいところだったが剛田に抵抗されそれは断念。

唐突に剛田が構えを変えた。

攻めてくる。

胴を掴む…と見せかけ、うまい具合に俺の足を払った剛田にまんまと俺は掴まれた。しまった、今までの練習で勝てていたからと油断していたか。

……いや、そんなはずはない。全力はちゃんも出している。ということは剛田が前に戦った時より強くなってるってことだ。

体が少しだけ中に浮く。

やばい。

「技あり!」

背中から叩きつけられた。

抵抗を必死にしなかったら……一本取られて負けてただろう。

「……まさか技あり取られちまうとはな」

「前の俺とはもう違う」

どうやらそのようだ。

……こうなったら、俺も攻めるか。

再び試合が始まる。

俺は姿勢を低くし、自分の(地球での)最速を持って摑みかかる。剛田もとっさに姿勢を低くし合わせてきた。

掴みあう。肩と肩がぶつかる。

どんどんと互いに姿勢を低くしてゆき……俺は力を抜いた。

「ふっ!」

ここぞとばかりに剛田は攻めてきた。

……俺は、そこから腕を掴み、転がる。

逆一本背負い。

「一本!」

そんな審判の声が聞こえる。

「くそっ……! くそっ…」

剛田は転がったまま、悔しがった。

そうか、俺が勝ったのか。いや、たしかに投げ飛ばしたが…ああなんだろう、出し切った感じだ。

審判やアナウンスに促されるまま、俺と剛田は立ち上がり、互いに礼をする。

あいつは俺に近づいてきてこう言った。

「俺のぶんまで決勝頑張ってくれよ」

「……ああ」

さて、残るは決勝戦だ。

絶対に負けるわけにはいかない。

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休み時間、観客席に戻ってリル達と雑談してから決勝に臨んでも良かったが俺はあえて控えにいる。

毛利が近づき、話しかけてきた。

「……やっぱ火野、あんたか」

「なんだ俺が勝つことを予想してたのか」

「まあな」

毛利の中では俺が勝つことは決まってたらしい。

たしかに俺と剛田とまともにやりあったのはこいつくらいだし予想は立てるだろうがな。

「……俺さ、昨日の朝、あんたに話しかけただろ」

「ああ」

「あれ、団体戦だけだと思ってたんだよ、戦うの。だって火野、あんたどう見ても90キロの体重があるとは思えないからさ」

「よく言われる」

「……決勝が同じ相手だなんて最高だ。リベンジができる。ビデオで事前に確認してたにも関わらず俺は負けたが……次はそうはいかない」

すくっと毛利は立ち上がる。

「そろそろ行こうぜ、決勝戦だ」

「……ああ、本気でいかせてもらう」

「じゃあ俺も本気だ」

俺と毛利は呼ばれた。

別の高校だから別口から出ると言って俺と別れる。

そしてそのまま、俺も控えから出口へ。

<これより、全国高等学校総合体育大会柔道競技大会90キロ、決勝戦を行います>

俺は前に出る。

多くの目が俺を見ている。

……わざわざ瞬間移動までしてずっと応援してくれた有夢、美花、叶君、桜ちゃん。

的確な指導をし、ここまで導いてくれたゴリセン。

柔道部員やみんな。

そして、リル。

期待されている。勝利を。

だから俺は勝利をもぎとる。

勧められるがままに、俺と毛利は赤い枠、土俵の中に入った。近づき、礼をする。

審判が腕を振り下ろした。

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「一本!」

どのくらい時間が経っただろうか、長かったが…案外短かった気もする。

これはきっと、今までの重みでそう感じているんだな。