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YourPerspective 35 180. Prepare Youre Then 3

私は、男が怪しげな笑みを浮かべたのをみて嫌な予感がした。何かよくないことを企んでいるそんな気がして、男の様子を伺っているとおかしそうにクスクスと笑い出した。急に笑い出してどうしたの? とそんなことを思っていたら徐々に笑いが治まって行き、男は院長先生に一度視線を向けると私の方を向いて来た。

「ククク……。まさか、他にも捕まりに来るとは……」

「他にも捕まりに来る?」

それってどうゆうことなの? と思ったら男が話し始めたので耳を傾けた。

「さっき捕まえた奴とは別に、あの孤児院という場所から他にも子供を捕まえた。それを取り返しに来たのが、この孤児院の院長と名乗るこいつだった。まさか、孤児院の子供を取り返しに来るとは驚いたが、こいつを捕まえれば後は楽に仕事ができると思って、取引に応じるふりをしてこいつを捕まえたがなぁ?」

「!?」

「まぁ、仕事をやるといった奴がまさか餓鬼相手に少し苦戦しているのは予想外だったから少しだけ手伝ってやったが」

もしかして、ルミア以外にも捕まっている子が……。

「な、何人捕まえたの?」

「そりゃあ、全員だ。だが、あの孤児院には3人しかいなかったけどな」

あれ? 3人? と思ったが男に表情を悟られないように俯いた。孤児院には私除いて6人いたはずだけど……。そう思いながらどうして、目の前にいる男は3人しかいないと言ったのか考えていたけど分からなかった。もしかしたら孤児院にまだ隠れている子が居るのかもしれないし、違う理由でいなくなったのかもしれない。どちらにしても捕まった子が無事なのかが心配だった。

「まぁ、お前もあの孤児院の奴だと言うなら自ら捕まりに来た間抜けとしか言いようがないがなぁ? でも、お前は抵抗できないようにしてからじゃないとなぁ?」

そう言って剣を私に向けてきた。こんな怪我じゃあ、上手く戦えない。そう思いながらも短剣を抜こうとした時、短剣を持っていないことに気付いた。そういえば、この男に掴まった時に短剣を持っている手を蹴られてどこかに飛んで行ったことを思い出した。これじゃあ、戦うこともできない。逃げようにも男の背後に扉があるし、逃げようとしても直ぐに捕まってしまう。もうどうしようもない……。とりあえず、さっき言っていた男の言葉が本当なら、殺されることはないと思うけど、本当にそう思っているのかも怪しい……。

そんなことを思いながら男が近づいていて来るのをただ待っていることしかできなかった。すると男の動きが不意に止まった。男が足元をみたので私も同じように男の足元をみた。院長先生が男の足に掴まっていた。

「彼女にそんなことをやらせない」

「ッチ!」

男は舌打ちすると院長先生の拘束から逃れようとしたけどかなりがっちりと掴んでいるみたいで拘束を解くことができないでいた。そんな院長先生の行動にイライラした男は拘束されていない方の足で顔面を蹴り飛ばした。

「グフッ!」

すると男の拘束は解けて院長先生は後ろへと飛んで行った。

「くそ爺が! 邪魔しやがって!」

男はそう怒りながら院長先生に近づいた。そして近くまで行くと持っていた剣を振り上げた。

「やめて!!」

院長先生が殺される! そう思って男にやめて欲しいと思って叫んだが私の想いは伝わることなく男は容赦なく院長先生に向かって剣を振り下ろした。

私はその様子をみていることしかできなかった。振り下ろされていく剣は院長先生の胴体へと向かって行き胴体を切られた。そしてその切り口からたくさんの血が流れ出た。

「い、院長、先生?」

私はそう言いながら院長先生の元へと近づいて行ったが途中で男に足を引っかけられた。そして倒れた私の背中を足で踏みつけられた。動けなくなった私はそれでも院長先生に手を伸ばしていたけど、止まることのない出血に院長先生がもう助からないことを察した。どんどん歪んで行く視界の中で後ろから何かに刺された感覚があったけど、目の前にいつ院長先生のことで頭が一杯になって何も考えることができなかった。

それからしばらくすると大きな音が部屋に響いて背中に何か刺さっている感覚がなくなりしばらく経った頃、私は意識を失った。