Lonely Attack on the Different World

１９０日目　夜　辺境　宿屋　白い変人

　精神に深く刻まれし傷跡、心(psycho)的(logical)外傷( trauma)。それは様々な要因で肉体的・精神的に衝撃を受けた事で長い間それに囚われてしまう状態の事を言い、基本的に自己否定的な影響を持っていることを指す精神障害だと言われていた。

　「うん、普通は各種虐待やいじめや暴力に戦争や事故や災害なんかが要因とされてるんだけど、あれってもう黒条灯蛾(トラウマ)ってルビ振って良い気がするんだよ？　だって男子高校生冤罪な虐待のイジメな毎日のＪＫ戦争災害凄まじいダメージで精神がガリガリと削られたんだよ？　まあ、後は棘棘鉄球(モーニングスター)による暴行傷害(フルボッコ)だったな!?」

　（ポヨポヨ！）

　闇や迷宮皇と異世界迷宮には危険がいっぱいだが、未だ異世界で黒条灯蛾(クロスジヒトリ)に襲われるような恐ろしい話は聞いた事がなかったせいで油断していた。うん、黒い奴(Ｇ)には充分な警戒をしていたんだけど、今までの人生で一度たりとも黒条灯蛾(クロスジヒトリ)と戦う想定をした事なんてなかったんだよ！

　そそくさとお風呂に入ってお部屋へと逃げ込む。きっと女子さん達も精神的衝撃で長風呂中だし、俺も至近距離で見て自滅ダメージが深かった。

　晩御飯もたっぷり用意しておいたから復活しても食い倒れ、そこから終わらない若さ故の青春の欲望(わんもあ)と言う名の暴走(せっと)でお説教する余裕は無いはずだ！　うん、有料制ケーキバイキングの罠は伊達(タダ)じゃないんだよ！

　「うん、魔法は想像力(イメージ)って、あれ衝撃力(インパクト)が強すぎて心的外傷(トラウマ)に刻まれて想像したくもないのに……できちゃったんだよ？」

　（プルプル）

　自分から生える黒条灯蛾触手の恐怖、そしてその客観的見地から慮られる俺の好感度さんへの莫大な被害。うん、羅神眼ってハッキリクッキリよく見えて、心の健康被害が不健康で……あとＪＫさん達と黒条灯蛾触手さんの縺れ絡まる絵面もなんだかとっても不健全だったんだよ？

　呼吸法──呼吸と共に錬気し、血流と共に循環させ巡らせる。そこに魔力が混ざり合い、身体錬成で構築(デザイン)された毛細血管の隅々まで巡り多重に組み合わされ、複層的に描かれた魔法陣が発動する。うん、身体錬成による修復改装工事は６割は終わり、再構築変換作業も５割超えな感触だ。うん、キモグロ耐性系の魔法陣ってないのかな!!

　さて、準備はできた。

　「「「宜しくお願いしますにゃん！」」」「お邪魔です？」

　そして、おいでませでいらっしゃいませなまま生々しく繰り広げられる無限の触手さんと百の蛇さんの内職を９本の尻尾がお手伝いな、壮大なる螺旋の内職絵巻(ベルトコンベア)の無限輪廻。うん、ちょっとまだ鶏と蜥蜴と犬の尻尾はおとなしくしてようね？

　「「「って言うか、何で僕たちまで」」」「いや、男子高校生のお部屋で彼女達の採寸するんだから普通彼氏が監督しろよ！　大体お前らって、あの迷宮皇組の脅威の目隠し能力を甘く見過ぎなんだよ!!　うん、こんな１０８層式視覚遮断結界ごとき瞼と纏めて一緒に引き千切られちゃうんだよ？」「「「マジで!!」」」「でも、羅神眼って目隠し無意味な気が？」「俺は意識の遮断で忙しいから、視覚くらい隠せ!!　お前ら女子のお着替えシーンで終始目をつむる辛さがわからないのかああああーーっ!!」「「「はっ!?　勇者だった!!」」」（（（（（シュルルル……パサッ）））））「「「あっ──（ポテッ）」」」

　感知される体躯が違う、その姿態に秘める魔力の質が変わっている。つまり、それほどまでに本気なのだろう。それは本気と書いて真剣(しんけん)と誤読しちゃうくらいガチな想い──メイド喫茶部隊は、この短期間でＬｖ５０の壁を超えて７５まで合わせてきている。あの大人数が短期集中で力を求め、それを手に入れている。だったらその想いは本物なんだろう……うん、オタ達はやっぱり焼こう！

　「「「「うにゃああああああーーーー！　うみゃーー……ああああぁぁぁぁ！　んんっ♥」」」」

　その想いに応えようと頑張る触手さん達が一斉に蠢き、一生懸命お手伝いの蛇(ヒュド)さんがニョロニョロと頑張り、九尾さんまで一意専心にモフモフと応援に励み、鶏(コカ)さんも一心不乱に羽毛で採寸作業に参加の鼓舞激励で、七転八倒に狂乱するメイド喫茶組を蜥蜴(バジ)さんが心堅石穿に支(おさ)え、狼(フェン)さんも勇往邁進に頑張れと舐め舐めで応援中だけど食べちゃたら駄目なんだよ？

　そして並行して治療する、無理した痣や傷なんて残させない。だって遮二無二に頑張ったマジな想いには熱烈峻厳に応えよう。そう、不抜之志の意思で男子高校生さんが頑張ってるというのに目隠し係に連れてきたオタ達は血の海に沈んで(サボってやが)るんだよ！　働けよ!!

　「「「「うみゃあああーーん！　ひぃいいいい……んあ♥　はぁ……あっ♥　うぅぅ、うあっ……ひいっ♥　あへ♥」」」」

　幸い人族、獣人族、エルフ族全ての基本情報は日々の採寸で丹念に調べ上げられて蓄積されている。その過去情報に基づきＬｖ１００までの最高効率情報を基にして、あとは個々に最適化していくだけの調整(カスタム)作業が主(メイン)だ……うん、猫人族さん達を始め若干種族差異が有るには有るが、あれよあれよと撚られた糸が巻き付き、紡がれながら張り付き織られて生肌を包み、肉体の球面に合わせ縫製され、暴れ悶える体躯に合わせ裁断と再補正で作り上げる。うん、肉球はないのに揺れてるにゃん？

　「「「「ぁぁあ………んぁ♥　りゃめにゃあああ────────にゃんんんんんっ♥　みゃあ♥　にゃああぁ♥　えへ♥」」」」

　女子さん達と違い情報量が圧倒的に不足しているが、それを補うように健気にくねり躍動し、四肢を痙攣させて仰け反って可動域を指し示して協力的なのか……強力な翻筋斗(もんどり)を打ち露わな肉体が跳ね回るけど臨時目隠し係(オタ達)は息をしていないようだ？　うん、どこかに役立つ目隠し係さんは存在しないものなんだろうか？　今度、掲示板に貼ってみようかな？

　「お疲れー、ってお漬かれって血の海に沈んでる全く使えない何ら役に立たなかった臨時目隠し係はどうでも良いけど、装甲型メイド服はレベルに応じて重さは若干だけど魔力消費が上がってて常時耐性系も強化されてるから早めに慣らしてね？　いや、そこはうんうんでお返事してくれないと無言でびくんびくんは活き活き元気なお返事なんだろうか？　うん、あとで活き活き新鮮業界の専門家(ギョギョっ娘)に聞いてみよう？　まあ、おつかれ？」

　「「「「「んぁぁぁぁ……あるぃぎゃとう……ぎょじゃまみゅ……にゃん♥」」」」」

　まあ。普通はこの流れで彼氏が優しく連れて帰るはずなんだけど……そろそろ盥(たらい)から血が溢れ出しそうだ。うん、邪魔だから死体(オタ)ごと一緒に窓から捨てておこう？