鍔迫り合いの状態から、フォルツェ機の頭上にアイスランスが浮かび上がる。俺は即座にファイアランスを発動させ、放たれたアイスランスと相殺させた。

「魔法の使い方が分かったんだね!」

「あの時の俺じゃねぇって言ってんだろうが!」

グッとレバーを押し込み、力を込めてフォルツェ機を後退させる。フルマニュアルコントロールならば、こちらの機体のほうが瞬間的なパワーは上だ。

フォルツェ機は、パワー負けしていると判断するや否や、剣を動かして俺の機体を受け流そうと動いた。

だが、その程度の動きに引っかかる俺ではない。一歩大きく前にでることでバランスを保ち、機体が崩れるのを回避する。

それと同時に、アーティフィゴージュをフォルツェに向けて振るった。

「おっと危ない」

フォルツェはそれを難なく躱し後退すると、剣を構え直した。

「それが噂のフルマニュアルコントロールだね! 確かに凄い力だ。左腕を犠牲にする必要も頷ける」

「チッ、知ってんのか」

「傭兵は情報が命だよ。だからこんなこともできる!」

フォルツェ機が動く。地面を抉るほどの強烈な踏み込みと共に、俺の目の前へ一気に接近してきた。

俺は即座に剣を振るい、フォルツェ機を受け止める。

「ぐっ……パワーが上がってる。いや、違う。これは!?」

「フルマニュアルコントロール。理屈さえわかれば、出来ないわけじゃないよね!」

「だからどうした!」

力が拮抗したからと言って、お前の機体はその操縦方法を生かせる作りにはなってないだろ。

その操縦方法の弱点は、俺が一番よく知ってるんだよ!

右腕の出力を固定しながら、俺はレバーのボタンを使って接続を左腕へと変える。

フォルツェがフルマニュアルコントロールを使っているというのならば、今左腕は動かせないはずだよな。

けど俺の機体は違う。

アーティフィゴージュを持ち上げ、フォルツェ機に向けて振り下ろす。

フォルツェは右足を引いて機体を横にむけ、ギリギリのところでアーティフィゴージュを避けた。けど、そうなれば俺の正面にあるのは、動かない機体左側だ。

俺は即座に右腕へと接続を戻して、バランスの崩れたフォルツェ機に向けて追撃を加える。

しかし、俺の剣はギリギリのところでフォルツェの剣に弾かれる。

「危ない危ない。もう少しでやられるところだったよ。やっぱり操縦技術は君のほうが上みたいだね」

「とっさに操作方法変えられる奴が何言ってんだ」

フォルツェはフルマニュアルから、とっさにハーフマニュアルにコントロール方法を変えたのだ。そのため、俺の剣が動かないはずの左腕によって防がれた。

「僕だってあの時と同じじゃないさ。地味に傷ついたんだよ、これでも天才的な操縦技術を見込まれて操縦士を任されていたんだから」

「そのまま降ろされりゃよかったんだ」

「そう言った奴はみんな殺したよ!」

物騒な奴だな。マジで!

フォルツェは両手に剣を握り、俺目がけて突撃してくる。どうやら、もうフルマニュアルはやめたらしい。だが、速度的にはハーフマニュアルぐらいは使っているはずだ。

となれば、総隊長クラスの相手だと思って戦うべきか。

一撃目の振り下ろしをアーティフィゴージュで弾き、二撃目の振り上げを一歩下がることで躱す。

フォルツェ機が機体を回転させて、三撃目を放ってきた。俺は回転切りに合わせて、機体をしゃがませ足元を蹴り払う。

倒れたところに剣を振り降ろすとフォルツェは機体を転がして剣を躱す。そして左手の剣を上へと投げ上げた。

俺の視線が一瞬そちらにつられてしまう。フェイントだと気づいたときには、今度は俺の機体が蹴られ転ばされていた。

その間にフォルツェは立ち上がり、落ちてきた剣を受け止め攻勢に出ようとする。俺はフォルツェの一歩目を剣を投げつけることで止め、アーティフィゴージュから取り出したハーモニカピストレを敵機の関節目がけて放った。

フォルツェはそれを、アイスランスを自分の正面に突き立てることで壁とし、回避する。

弾丸をすべて吐き出させた俺は、ハーモニカピストレを投げ捨て再び剣を握った。

「へぇ、それ武器庫にもなってるんだ。やっぱり自分だけの武装っていうのは憧れるよね」

「傭兵なんだから好きに弄ればいいだろ」

「傭兵だからこそだよ。オリジナルの武装はお金がかかるからね。オーダーメイドなんて、傭兵じゃ一番嫌がられる武装だよ。それに僕は、この剣二本でもどうにかなるし」

どうやら、ボドワン元隊長が戦った特殊な武器を振り回す傭兵などは、かなり特殊な部類らしい。だからこそ、あの時点で軍の部隊に組み込まれていたとも言えるかもしれない。

「なら、どうにかならないのは今日が初めてだな!」

こちらがファイアランスを放つと、フォルツェは再びアイスランスを放ち相殺してきた。その間にも俺たちは距離を詰め、剣をぶつけ合う。

「何言ってるのさ! 僕の初めては、最初に会ったときにもう奪われちゃってるじゃないか!」

フォルツェが再び連撃を放ってくる。俺はそれをいなし、躱し、時に受け止めながら攻撃の隙を伺っていた。

俺の機体とフォルツェの機体の大きな違いが、攻撃の速度だ。

俺の機体はそもそも鉄柱なんて重たい物を背負っている代わりに、大量の武器と燃料で相手を押しつぶす機体である。

それに対して、フォルツェの機体は極力武装を減らし、高機動高速戦闘で相手の反撃を許す間もなく破壊する機体だ。

そして、フォルツェ側の戦術ほど操縦士としての技量が要求される戦い方でもある。そしてフォルツェはその技量を十分に持っていると言えるだろう。

だが戦っていて感じるのは、まだ甘さがあるということだ。

戦闘経験の少なさだろう。総隊長のような熟練の操縦士から繰り出される連撃は、本当に受け止めるだけで精一杯で、反撃なんて考える余地はなかった。

だが、フォルツェの攻撃には、まだ所々に隙に発展しそうな部分が残っている。

そこをこじ開ければ、俺が攻勢をかけられる。

だが、あまり長いし時間こうしてはいられない。戦っていて感じるのだ。フォルツェは少しずつ成長している。

斬撃の角度、相手の隙の付き方。そもそも、戦い方ですら少しずつ変化しているのだ。

だから、少し無茶をしてでも早めに勝負をつける!

「耐えるねぇ!」

「この程度じゃ俺は抜けねぇよ!」

「ならこれなら!」

再びフォルツェの戦い方が変わった。魔法を併用し始めたのだ。

だが変わった直後は、その戦い方になれていないのか、隙が多い。だからこそ、狙うなら今!

俺は放たれた魔法をあえて防がず前に出る。

アイスランスが機体の脇腹を軽く抉るが、問題はない。

俺の突き出した剣は、フォルツェ機の左肩を貫いた。

「ぐっ……やってくれたね!」

フォルツェが反撃とばかりに腕目がけて剣を振り降ろす。俺はすぐに剣を手放し、引っこめるとアーティフィゴージュを振りぬいた。

ガンッと確かな感触が響き、直後に地面を滑る音が聞こえてくる。

フォルツェ機が倒れたのを確認した瞬間、俺はファイアランスを発動限界まで連続で発動し、倒れたフォルツェ機目がけて一斉に放った。

巨大な爆発が生じ、土煙でモニターが覆われる。

俺は警戒しながら後退し、土煙の範囲から脱出した。

フォルツェ機の様子は確認できない。あれだけ魔法を浴びせれば、ただでは済まないと思うのだが……

「――!?」

突如土煙が渦巻いたかと思うと、そこから片腕を失ったフォルツェ機が飛び出してきた。

フォルツェの剣は真っ直ぐに操縦席に向かって突き出される。

俺はとっさにアーティフィゴージュを構え、その剣を弾く。

「ハァァアア!」

フォルツェの叫び声と共に、俺の機体に後方から衝撃が走った。

剣を弾かれたフォルツェが、そのまま後ろに抜けつつ腕の動きだけで背中を切りつけたのだ。

俺はとっさに振り返る。と、フォルツェ機はすでに目の前にいた。

「早い!?」

異常な速度だ。フルマニュアルコントロールをしていても、これほどの早さは出せない。

この動きでさっきのファイアランスも躱したっていうのか!?

「ハハッ! 剣一本、腕一本あれば僕は戦える!」

続けざまに放たれる斬撃を、俺はギリギリのところで防いでいく。

だが、そのうちの一撃が、機体の足の甲を貫いた。

「クッ」

「そら!」

足の甲を貫いた剣を、フォルツェはそのまま切り上げに変える。

直前まで甲を刺されていたせいで、回避が間に合わない。

機体を限界まで反らせれ、ギリギリまで斬撃の間合いから離れるが、フォルツェの刃は正面装甲を深く削った。

操縦席内の画面が衝撃で二枚ほど割れ、他に多数の罅が入る。

割れた破片が俺の頬を掠り、血が垂れる。

「惜しい! あとちょっとだったのに! 次は外さないよ!」

「させるか!」

フォルツェ機が目の前にいる。俺は反射的に機体を前へと出し、体当たりを仕掛けた。

「うわっ」

同じアルミュナーレであっても、俺とフォルツェの機体では質量がかなり違う。

フォルツェ機は、俺の機体に弾き飛ばされ、大きく後退する。

距離ができた隙をついて、アーティフィゴージュからハーモニカピストレを取り出し右腕に狙いを集中して発砲する。

弾丸は、二発が装甲によって防がれ、一発が肩の装甲を飛ばした。

しかし他の物は外れてしまい、決定打には欠ける。そう判断した俺は、ハーモニカピストレをフォルツェ機に向けて投げつけ、ファイアランスで爆破させようと魔法を放つ。しかし、ファイアランスを放つ直前で、ハーモニカピストレがフォルツェの投げた剣によって弾かれてしまった。

俺はファイアランスの狙いをフォルツェ機に向けて放つが、当然のようにマジックシールドで威力を減衰させられ、ほとんど傷を与えられない。

しかし、距離をとったことでフォルツェの機体の変化に気づくことが出来た。各所から火花が散って、時折痙攣するようにビクンと動くのだ。

あれは関節がダメになっているときに起こる現象だ。物理演算器(センスボード)からの連絡を上手く反映できずに、パーツが誤作動を起こしているのである。

つまり、フォルツェは機体スペックを超えた動きを機体に強要していたわけか。だから俺の機体より早かったし、パワーも上がっていた。その分の反応が機体にダメージとなって表れているんだ。

フォルツェは投げ捨てた剣の代わりに、近くに落ちていたアブノミューレの剣を握る。

「ふぅ、そろそろ時間切れみたいだ」

「なに?」

「悪いけど、こっちにも帝国の作戦っていうのがあってね。好きに戦ってていいわけじゃないんだよね。と、言うわけで僕はそろそろ帰らせてもらうよ」

「させると思うか?」

今が攻め時なのだ。撤退などさせるわけがない。

「別に止めてもいいけど、止めるのは本当に僕でいいのかな?」

「どういう意味だ」

自分の機体状況は分かるはずだ。それでもこの余裕は何かあるはず。

「では頭上、帝国方面をご覧ください」

俺はフォルツェ機を視界の隅に収めながら、カメラで帝国の空を確認する。

そこには、無数に輝く何かがあった。

「なんだ……あれは……」

「技術者はアヴィラボンブって言ってたよ。帝国領土から狙った場所を攻撃できる画期的な兵器なんだって。軍部の連中には、攻撃しても制圧できなければ意味がないって否定されてたけど、この状態なら意味があるよね」

「国境を跨いで攻撃!? つか、それって!」

まんまミサイルじゃねぇか! そんなもんいつの間に作ってやがった!?

いや、セフィアジェネレーターを使えば、鉄柱一本を飛ばすぐらいなら可能なのか? けど、照準機能もまともに発展してないこの世界で、そんな国境をまたいで性格な攻撃なんてできるのか!?

俺は急いでカメラをズームし、飛んでくる兵器を調べる。

形状はまんまミサイルのようだ。円柱に四枚の羽根が付いている。そしてよく見てみると、その羽が小刻みに動いているように見えた。

「まさかあれも操縦しているのか!?」

「うん、攻撃の直前に脱出するんだってさ。んじゃ、僕は帰らせてもらうね」

フォルツェが撤退していくが、俺にそれを止めている余裕はない。

あの飛んでくるミサイルは、すべて人力で操作されているのだ。なら、間違いなく狙いはジャカータ基地のはず。

一発残らず撃ち落さないと、マズいことになる!

俺はジャカータへ戻りながら、その途中でバティスと合流する。

バティスは突然撤退を開始したアブノミューレの部隊に困惑しているようだ。追撃を掛けるのか俺に問いかけてきた。

俺はそれを一蹴し、帝国の空を見るように言う。

「なんだありゃ?」

「全部爆弾だとよ。このままだと基地が爆撃される」

「おいおいおいおい、それってマズくねぇか!?」

「マズいってもんじゃねぇよ。外壁まで下がってありったけの魔法で撃ち落すぞ」

「お、おう!」

バティスと共に外壁まで戻り、兵士たちにミサイルのことを説明する。

「動ける機体は壁際に並べ! 魔法でできる限り撃ち落す。一発でも中に飛ばれたら、大惨事は免れないと思えよ!」

俺の喝に、五機のアルミュナーレからはゴクリとつばを飲み込む音が聞こえてきた。

それだけ緊張しているのだろう。

ミサイルが来るまでにはまだ少し距離がある。こちらの射程も考えれば、残りは五分程度だろうが、それでも準備期間があるだけまだましだろう。

整備士たちが壁際まで出てきて、アルミュナーレたちに濃縮魔力液(ハイマギアリキッド)を補給していく。

俺はその間に、撤退していった敵の部隊を確認する。

ミサイルを放った後に、再び制圧する気ならば、それほどはなれた場所まではいかないはずだ。

カメラで周囲を窺うと、地平線に小さく機体の影が見える。ズームすれば、アブノミューレの部隊がそこに待機しているのが見えた。

そして、少し小高い丘になっている部分には、フォルツェの機体と共に、二機のアルミュナーレが並んでいる。あいつらがこの部隊の鍵となる部隊だろう。

「誰か、アーノルド副司令に伝言をお願いします」

「なんでしょうか?」

「俺の武装を持ってきてほしいと。燃料はあらかじめ入れておいてくださいと伝えてもらえばわかると思います」

「分かりました」

伝言を頼み、再び空を見上げる。

そこには、目視でもわかるほど近づいてきた、ミサイルの影があった。

「全機、構え! 最大出力でありったけの魔法を叩き込むぞ!」

『おう!』

俺の言葉に従って、全機が頭上に飛来するミサイルに向けて照準を合わせる。

と、ミサイルたちの軌道が少しぶれた。どうやら操縦士たちが脱出しているようだ。

ミサイルの通った後には、操縦士たちがパラシュートを開いているのが見える。

基地内は驚くほど静まり返り、兵士たちが祈るように空を見上げていた。

そして、ミサイルが射程圏内へと入る。

「三、二、一、撃て!!」

合図と共に、全機から一斉に魔法が放たれた。

それは真っ直ぐに飛んでくるミサイルへと直撃し爆発を起こす。

昼の空に太陽が何個も浮かび上がり、消えていく。轟音が響き、空気が揺れる。

次々に飛んでくるミサイルを、俺たちはひたすら落とし続けた。

しかし、俺を合わせてもたった六機のアルミュナーレでは迎撃が間に合わない。

次第にミサイルの爆破位置が基地へと近づき、ついに一発のミサイルの通過を許してしまった。

基地内で爆発が起き、建物が倒壊する。

それに動揺したのか、他の機体の魔法が時々ミサイルから外れ、そのたびに基地内で爆発が起こる。

「くそが!」

俺は爆発音にまぎれて聞こえてくる悲鳴に叫び声を上げ、ひたすら魔法を放ち続けた。

数時間にも感じられた爆撃がようやく収まる。

結局基地には五発のアヴィラボンブが飛来した。

一発は全く関係ない基地の片隅に落ちたが、内二つはアルミュナーレの格納庫を破壊し、一つは演習場をもう一つは兵士寮を破壊した。

この爆撃により、格納庫にいた整備員全員が死亡し、整備中だったアルミュナーレ一機が完全に破壊された。あれだけの数のミサイルを相手に、被害がこれだけならば確かに少ないほうかもしれないが、それでも収まりきらない感情がある。

「あいつら……許さねぇぞ」

俺が睨み付けるのは、爆撃が終わり再び侵攻を開始しようとしている帝国の部隊だ。

だが、俺以外のアルミュナーレはもう動けない。ギリギリまで物理演算器(センスボード)を酷使し魔法を撃ち続けたせいで、物理演算器(センスボード)が限界を超え融解してしまったのだ。

俺の機体だけは、二つ積んだ物理演算器(センスボード)のおかげで何とか耐えられたが、今も全力で排熱を行っている。

もう、先ほどまでのような過激な戦闘は耐えられないだろう。

「エルド、どうすんだ……このままじゃ」

機体から汗だくになって飛び出してきたバティスが、俺に問いかけてくる。

分かっている。このままじゃ、基地はあいつらに潰される。けど、そうさせないために、俺はアーノルド副司令に伝言を頼んだのだ。

「後は俺がやる」

「けどお前の機体は――」

「大丈夫だ」

「エルド隊長、お届け物ですよ!」

そこに、トラックタイプの魔導車を運転してきたアーノルド副司令が到着した。

「待っていました。完成度は?」

「九十七パーセントだね。あとは照準の調整をするだけだよ」

「それで十分です」

アーノルド副司令が魔導車から降り、荷台にかかっていた布を兵士たちと協力して取り払う。

そこには、一丁の銃があった。

だがハーモニカピストレのような拳銃ではない。弾倉はハーモニカタイプだが、その銃は間違いなくライフルだ。

これが俺の頼んでおいた新武装である。

俺は銃を荷台から取り上げ構えた。

「おい、こんな距離じゃ」

今にも引き金を引きそうな俺を見て、バティスが声を掛けてきた。確かにここから敵部隊の距離はかなりある。魔法も射程範囲外だろう。

けど、この武器はそれを届かせるために作ったものなのだ。

「バティス君だったね、その心配はないのさ。この武器の射程は魔法よりも遥かに長い。そして高威力だ」

「そんな武器があったんですか?」

「無かったさ。だから作ったんだよ。魔法と実弾兵器を融合させてね。さあ、エルド隊長、帝国の連中に見せつけてやってくれ。イブリートアーミー、多段階爆速式大型狙撃銃ペルフィリーズィの実力を!」

いつも冷静なアーノルド副司令が興奮気味に言い放つ。

それだけこの武装に自信があるということなのだろう。ならばその力、見せてもらいましょうか!

「シリンダー圧力正常、ハッチ開閉異常なし、濃縮魔力液(ハイマギアリキッド)供給異常なし、物理演算器(センスボード)単独で正常稼働。弾丸は五発。一発は試射。誤差を修正して三発で決める」

この武装、本来ならばアーティフィゴージュのように機体と連結させて使用するものなのだが、今回はそれをしている暇はない。

なので照準の設定をペルフィリーズィに合わせられないため、俺は機体の腕を真っ直ぐ伸ばし、その先に照準を設定する。これで大きなズレは出ないはずだ。

燃料もあらかじめ入れてもらっているし、後は引き金を引くだけでペルフィリーズィに搭載してある物理演算器(センスボード)が勝手に動いてくれるはず。

稼働式カメラで敵部隊の最後方にいるアルミュナーレの一機を狙う。

「くたばれ」

俺は全神経を集中させて、引き金を引いた。

ダダダダダっとまるで小さな爆発が連続したような音がして、ペルフィリーズィの銃身の左右に作られた排気ファンから炎が噴き出す。それと共に、周囲に衝撃波をまき散らしながら、弾丸が放たれた。

直後、標的にしたアルミュナーレの足元で土が爆ぜる。

驚いた敵機が数歩後退するが、何が起こったのか分かっていない様子だ。俺は即座に誤差を修正し、二発目を放った。そしてそれは、アルミュナーレの操縦席を完璧に撃ち抜き、貫通する。

そのまま腕を動かして、もう一機に狙いを定める。そして三発目を放つ。

同じように、二機目も操縦席を撃ち抜いた。

「最後だ、フォルツェ」

中心にいたフォルツェの機体は、その場から動いていない。

俺は照準をフォルツェ機の操縦席に合わせ、スイッチを押す。

照準は完璧だった。しかし、その弾丸はフォルツェ機の右腕を吹き飛ばすだけに終わった。

躱されたのだ。どこを狙うか読まれ、発射までのタイムラグを最初の三発で調べられた。

だが後一発ある。

「次は外さない」

俺は再び照準を合わせ、タイミングを少しずらしてスイッチを押す。

フォルツェ機はやはりタイムラグのタイミングで一度動き、そのタイミングで弾が来なかったことで即座に機体を倒した。

結果、俺の放った弾丸は頭を吹き飛ばしただけに終わる。

全弾を打ち終えたペルフィリーズィがすべてのファンを開き排熱を行う。立ち上る蒸気で周囲の気温が二度ほど上がった。

「チッ」

俺は舌打ちして銃を下ろす。

こちらに攻め込もうとしていたアブノミューレの部隊は撤退を開始していた。

どうやら、アルミュナーレが二機破壊され、残りの一機も戦闘継続が不可能になった時点でこちらへの侵攻を諦めたようだ。

「敵軍は撤退します。今のうちに被害状況の把握とできる限りの戦力の確保を」

「そうだね。残っている整備士はアルミュナーレを運び込んで修理だ! 兵士たちは警備に戻れ! まだ完全に敵が去ったわけではない! 緊張は解くなよ!」

『ハッ!』

「それと副司令」

「なんだい?」

「俺の部隊が近くの村で待機しているはずです。今の内に迎えを出してやってください」

「分かった。エルド隊長はしばらく休んでくれ。部屋を用意させる」

「ありがとうございます」

俺は機体を操作して、基地内へと戻っていく。

ジャカータでの最初の攻防は、大きな被害を出しながらも何とか持ちこたえることに成功したのだった。