Muimui-tan

One or two.

―1―

とりあえず食事をしよう、もしゃもしゃ。

というわけで現状把握。

魔法があるということは異世界? なのかなぁ。よくある異世界転生なんでしょうか。にしても人ではなく芋虫に転生とか、もうね。赤ん坊転生くらいが良かったです。

ん? と言うことは、もしかして芋虫ではなく、芋虫型のモンスター!?

しかしまぁ、芋虫型のモンスターというと序盤の雑魚か、中盤に入った程度の雑魚モンスターのイメージしかありません。そういえば、俺ってばルネ○タぽいよね、ル○ンタ。雑魚モンスター転生とか、そういう感じなのかなぁ。ホント現実味が無いよね。

上位クラスにランクアップとか無いんでしょうか? 雑魚のままは勘弁です。いくら魔法があると言ってもランクアップまではないのかなぁ。

または芋虫モンスターが上位モンスターの可能性!? これはワンチャンあるか!?

とまぁ、ここで色々考えていても答えは出ないわけで……これは人里に降りないと駄目だろうね。(まぁ、人里があると仮定してだけど)

人里へ降りるにしても、(魔法とかがある世界みたいだし)ある程度は力を付けないと怖いね。俺ってばモンスターぽいもんね。

まずは力を付ける。

何にしてもコレです。幸いにも食事は足下の葉っぱを食べれば良いわけだし、生きていく上で困ることがないのは助かります。千年でも耐えてみせるぜー。HAHAHA

魔法や糸を吐いて疲れても足下の葉っぱを食べると元気になります。ホント、凄い葉っぱだッ! コレ、ホント、何の葉っぱなんだろうね。

葉っぱ、葉っぱと言っているけれど、足下の葉っぱ自体のサイズは自分の背の高さを基準とすると横が芋虫8匹分、縦が芋虫10匹分くらいです。ちょっとした学校の教室くらいの広さを思い浮かべてもらえると良い感じだね。

その広さの中、糸を使って某蜘蛛の人みたいにひゅんひゅんと移動する。

葉っぱは目の悪くなった俺でも充分端っこが見えるくらいのサイズなので落ちないようには気をつけています。落ちたら即死だよね……。

あー、後、この身体、歩くのが凄く遅いです。なので糸を吐いてそれを使っての移動にどうしてもなってしまいます。つまり移動=糸を吐くの練習になる訳です。いずれは『あの荷物で時速5キロか、スゴいな』とか言われたいんですけどね。

そうそう、葉っぱのサイズで思い出したんですが、自分以外にも仲間が居ました。葉っぱのサイズを測っているときに気付いたんですが、沢山ある葉っぱの一つに自分とよく似た芋虫が居ました。端っこからぎりぎり見えるくらいの距離ですが、俺と同じようにもしゃもしゃ葉っぱを囓っている姿が見えます。いやぁ、これで寂しくないね。体色は自分みたいな青ではなく緑だけれどアレは同種族で間違いないね。うん、間違いない。

彼? の名前は『芋虫次郎』君にしよう。(自分が長男、彼? が次男ということで)これからは彼の動向も観察することとする。

―2―

練習の成果か、魔法は手の平大に大きくなった氷の塊を6個くらいは浮かべられるようになったよ。

で、問題発生。

氷の塊を他の葉っぱにぶつけてみてもキズ一つ付かないんですが……。揺れもしません。うっすらと青い光が発光して氷の塊が砕け散りやがります。もしかして、魔法って凄く弱いのか? いや、まだだッ! 葉っぱが超耐久力の可能性もあるッ!

とまぁ、そんな感じで毎日毎日練習をしていたのですが……。

その日は、いつものように糸での移動練習、魔法の練習をしていた。すると遠目ではあるが木の枝を伝って何者かがやってきた。結構長く葉っぱの上に居るつもりだけれど、こんなことは初めてです。

俺の居る場所からは結構距離があるので、今の自分の視力だと大体の姿形しかわからないけれど、先頭に身軽な皮鎧ぽいモノを着た女の子? (金色の長めの髪なので女の子と判断)が何やら周囲を警戒しながらゆっくりと歩いている。次に重そうな金属鎧ぽいモノに包まれた塊。枝が折れないか心配です。最後がローブを着た男? この距離だとフードをかぶっている? くらいしか判別付きません。

これはアレだ。盗賊、戦士、魔法使いの冒険者じゃね? うおぉぉ、お近づきになりたい。話しかけて色々聞きたいッ!

彼女らが歩いている木の枝だと芋虫次郎君のお住まいの葉っぱが近いね。お、次郎君が冒険者に気付いたみたいだ。彼からのアプローチはどうなるのかな? とワクワクして見ていると……。

ゆっくりと女盗賊? に近づき糸を吐いた。女盗賊が糸に絡め取られる。いやいや、いきなり糸を吐きかけた次郎君もびっくりだけれど、警戒していたはずの女盗賊さんが次郎君に気付かずに糸に絡め取られるとか、無能さんですか。

そして一瞬。

女盗賊の後ろに居た戦士が一瞬で次郎君との間合いを詰めていた。そして手に持った長剣を一閃。次郎君は真っ二つになっていた。

……はぁ?

こ、こえぇぇ。問答無用ですか。確かにいきなり糸を吐き付けた次郎君に非があるとはいえ即殺は、ない。ホント、無い。

お近づきになりたいとか言ったけど、コレはない。ホント、無いです。

戦士は長剣をしまい、後ろの魔法使いは魔法ぽいモノで女盗賊に絡みついた糸を焼き切ってあげている。女盗賊はなんだかプリプリ怒っているように見える。

三人は木の枝を歩いて行く。そして、そのまま枝と葉を伝って、木のうろへと入って行った。

あ、あんな所に木のうろがあったのか……。頑張れば俺でも行けそうです。

も、もう少し修行したら行ってみることとしよう。

いや、ホント、出来る限り力を付けないと、俺も次郎君みたいになりそうだ。はぁ……。

にしても次郎君、退場が早すぎるよ。君のことは忘れないぜ。