My sister and I moved around the world until I unified the continent to protect my sister.
84 Operating policy of Viscount Parklen territory
王都にいる間に、北部大森林地帯を領地とするパークレン子爵領の運営体制を整えておく。
……と言ってもやる事はあまり多くなく、最大事となるのが領主館の建設だ。
場所はネグロステ伯爵領に接する部分。
本来なら人里と森の境界から森側徒歩半日の範囲は隣接する貴族領なのだが、森から流れてくる川沿いにパークレン子爵領の突出部を設けてもらい、そこを建設地とする。
人里との境界の森を切り開き、伯爵領の小さな村近くに屋敷を建設する。
王都から馬車で五日くらいの距離だそうだ。
当面使う予定はないけど、一応子爵家の本拠なのでそこそこの規模の物を。
森のエルフさん達との交易中継所としても使うので、倉庫・馬小屋・馬車を入れておく車庫などは多めにと言う条件で、簡単な設計図を書いて、後はネグロステ伯爵家にお願いする事にした。
エルフさん達に作ってもらう訳にはいかないし、伯爵家ならお抱えの設計士や大工さんなんかもいるそうなので、ほぼ丸投げだ。
費用は諸経費込みで8000万アストルとの事で、それはちゃんとお支払いする。
屋敷の維持管理をしてくれる人材は、ネグロステ伯爵領内の治安は安定しているとの事だったので、人に好かれる事に定評のあるライナさんに出張してもらい、屋敷近くの村で募集する事にした。
と言っても、辺境の人口100人くらいの小さな村なのでメイドさんの即戦力なんているはずがなく、とりあえず希望者を三人ほど募って屋敷を建設している間王都に修行に来てもらい、屋敷が完成した所でメイドとして働いてもらう事になった。
当面は掃除など、最低限の維持管理だけだ。
あとは、将来的に森にエルフさん達を戻す都合上、冒険者に入られては困るので、冒険者ギルドを通じて北部大森林地帯への立ち入りはパークレン子爵家からの許可制とし、高めの料金も設定してもらう。
元々大森林地帯に入っていた冒険者はあまり多くなく、危険を承知で一攫千金を狙う人達か、実力はあるけど事情もある人達が依頼を受けて行く場合がほとんどだったらしい。
一攫千金を狙う場所なら他にもあるし、依頼の内容は貴重な薬草や魔物の素材が主だそうなので、それらを多少安い値段で安定的に供給すれば、貴族家にケンカ売るような真似をしてまで侵入する人はあまりいないだろう。
冒険者ギルドのエリスさんは俺が絡んでいる案件だと知った瞬間、大森林のどこかでフランの花を栽培するつもりだと勝手に勘違いしたらしく、告知から冒険者への対応まで、すごく積極的に協力してくれた。
冒険者の仕事を一部奪う話なので心配していたが、ギルドの協力が得られたのは大変ありがたい。
密偵とか来るかもしれないけど、それは注目を集めてしまった貴族領である以上、仕方ない事だ。
任務を帯びて少人数で来る密偵なら、エルフの村を襲ったりはしないだろう。
それでもなるべく警戒はするけどね……。
まだ受け取っていなかったフランの花の代金三億アストルを丸々ギルドに預け、定期的に大森林の浅い部分で見回りをしてもらうよう、依頼を出す事にする。
広大な地域なので実効は薄いだろうが、牽制(けんせい)にはなるだろうし、ギルドや冒険者にも恩恵がある事を見せておけば、心象も良くなるはずだ。
これはエリスさんから聞いた話だが、冒険者ギルドの受付嬢というのはちょっとした情報屋レベルの事情通で、各種依頼の内容や色々な噂話はもちろん、『誰と誰を最近見かけない』『誰それは最近妙に羽振りがいい』なんて情報から不穏の種を掴むのは得意中の得意だそうだ。
ぜひ今後ともいい関係を築いていきたいものである……。
そんなこんなで大まかに状況を整え、経費を計算してみたら、初期投資に屋敷代8000万アストル。
領地持ちの貴族は毎年一定額を国に納める制度があって、その税金が年2億アストル。
屋敷の維持管理費と使用人の人件費、諸経費が当面、年1000万アストルほど。
年間2億1000万アストルだ。
毎月になおせば鉱山のローンよりもずっと安い。
もっともこっちは収入ゼロだけど、それは将来的に改善するはずだ。
政情が落ちついてきてカレサ布ドレスの販売も再開され。王都の薬店も薬師が育ってきているそうで、エイナさんや薬師さんなしでもそこそこの売り上げを出せるようになっている。
その二つだけでも経費を十分まかなう事ができるだろう。
エイナさんと相談の結果、カレサ布の売り上げと薬店の売り上げ全額をエイナさんに渡す事で、王都の拠点維持費も含めた全てを諸経費込みで管理運営してくれる事になった。
これで俺はエルフさん達への対応に専念できる。
エイナさんも貴族になった訳で、なにかとお金が必要になってこれでは足りないのではないかとも思ったが、それはちゃんと当てがあるので問題ないらしい。頼もしいなぁ。
ちなみに、毎月ベンボルグ伯爵から出ている研究費から薬師さんに400万アストルを送っているのも、そのまま継続するとの事。
むしろ問題があったのは、ライナさんへの対応だった。
ライナさんはこれから子爵家当主の姉になる訳で、さすがに俺の護衛のままというのはまずい気がする。
エイナさんに相談すると、しばらく苦しそうに表情をゆがませたあと、『…………お姉様のご意思にお任せしたいと思います……』と、搾り出すように言われた。
どう見ても全力で一緒に暮らしたそうだったが、あくまで姉の希望を優先しようとするあたり、実に健気(けなげ)だ。
そしてライナさんに確認した所、
「いかに状況が変わろうと、私は一度交わした契約を覆すような不義理なまねはしたくありません。この身は生涯、洋一様の配下としてお仕えするつもりです」
と、ライナさんらしい実に男前な返答をいただいてしまった。
エイナさんちょっと涙目だったぞ。すごい珍しいものを見た。
今はライナさんに協力してもらえるとすごく助かるけど、そのうち状況が落ち着いたら暇を出してあげた方がいいかもしれない。
現時点で敵に回したくない人ランキング堂々一位に輝く、エイナさんの不興を買いたくはないからね……。
そんな感じで各種案件を片付け、ようやく治安も落ち着いてきて鉱山へ帰れるようになったのだが、その前に一つ、気になる情報が入ってきた……。
大陸暦420年2月20日
現時点での大陸統一進捗度 1.21%(リンネの故郷の村を拠点化・現在無人)(パークレン鉱山所有・エルフ3977人)(リステラ農場所有・エルフ100人)(パークレン子爵領・住民0人)
資産 所持金 44億3098万(-8031万)
配下 リンネ(エルフの弓士) ライナ(B級冒険者) レナ(エルフの織物職人) セレス(エルフの木工職人) リステラ(雇われ店長) ルクレア(エルフの薬師) ニナ(鉱山前市場商店主)