遺跡に辿り着いて、私は目を輝かせてしまう。
このような遺跡にやってきたのは初めてで、私はきょろきょろとあたりを見渡す。
所々崩れかけの建物があり、私は驚く。
こういう崩れかけの建物や誰かが生きた跡を見ることは見た事がなかったから、不思議な気持ちになる。
――ずっと昔、私が産まれるよりもずっとずっと昔に、此処で誰かが生きていた。誰かが此処で生きていたという事実は何だか実感がわかない。
此処でどのように生きてきたのだろうか。何だか見た事がないような建物の作りのように見える。この崩れかけの建物は、壊れていない時はどんな場所だったのだろうか。想像してみるだけでもちょっとワクワクする。ランさんはそういうことを考えて想像する力があるのだろう。
私もランさんと一緒にどんな形で、この場所で人々が生活をしてきたのか気になるな。
「やっぱり此処は素晴らしいですね!! ああぁ、もうこの前来た時は確認できなかったものも沢山確認したいですね。ねぇ、ニルシさん、あちらの建物を調べてきても――」
「少し待てよ!! 最初にしなければならないことは、まずは拠点を決めることだろう。それに下手に遺跡に手を出して何らかの魔法具が動いたら大変だろう」
「う、でも」
「でもじゃない。子供達が大人しくしているのに大人なお前が暴走するな!!」
……うん、なんていうか今にも飛び出しそうなランさんを見ると、私とガイアスは冷静にならなきゃな、飛び出したら駄目だよなというのを実感した。
ニルシさんに止められて、慌てて「こほんっ」と咳払いをする。
「取り乱してしまい、すみません。まずは遺跡探索のための拠点を決め、そこからどのように遺跡を探索するか考えていきましょう。一人で行動するのは危険ですからね。
まずは見渡しの良い場所に拠点を持ちましょう。もちろん、その場に何か罠のような魔法具が残っていないか調べてからになりますけど」
ランさんの言葉に皆、笑いながら頷く。
それにしてもそうか、はじめて来る場所なのだから拠点とする場所もちゃんと考える必要があるのか。
ただの朽ちた遺跡――もう誰も住んでいない場所。そんな風にしか私の目には映らない。特に嫌な予感を感じないのは、此処に人の悪意などがないからだろうか。嫌な予感というか、何だか少しだけ不思議な感覚もするけど、それは何だろう?
この朽ちた遺跡を見て回ったら、その原因が分かったりするだろうか。
そんなことを思いながらまず私たちが行ったことは、拠点となる場所の決定である。前に拠点と決めていた場所は、この遺跡の入り口の周辺だったらしい。今回は二度目の本格的な調査なので、もう少し奥まった所を拠点に出来ないかというのを考えているようだ。
もちろん、危険なことが起こらないようにきちんと確認してからになるらしいけれど。
でも朽ちた遺跡だからこそ、森に大分浸食されていて何処から何処までが人がいきていた場所なのかがわかりにくい。全体的にもう崩れて欠片も残っていない場所も多くある。そんな場所からどうやってここに何があったかなど調べるのだろうか?
それはやっぱりランさんだったら分かるのだろうか? そう思うと、ランさんはやっぱり凄いなと思う。
私がランさんのようにそういうものを分かるようになったら楽しいのだろうなと思う。
「ランさん、色々教えてね」
「ええ、ええ、沢山教えますとも!! 一緒に昔の文明について学びましょう。レルンダが私と同じように文化に興味を持っていただけたら嬉しいですね。そしたら沢山研究が一緒にできますからね」
「ふふ、ランさん楽しそう」
「楽しいですもの。私は興奮がおさえられませんわ。この場所にまた来れた事が嬉しくて仕方がありません。この場所で次にはどのような気づきがあるでしょうか。それを考えるだけで私は楽しみなのです。ああ、もう今すぐにでも調べたいですね」
「……ランさん、我慢しよう。まずは、一緒に拠点を整えて話し合いしよう」
「ええ、ええ。そうですね。まずは話し合いを終えて調べにいきましょう!!」
いつもよりやる気に満ちていて声は大きい。
そしてさっさと拠点を決めて整えて、それから話し合いをして調べに行くぞと思っているのかせかせかと動いている。
それから拠点の場所が決まって、皆でその場にとどまる。
はやく調べに行きたいというランさんを何とか止めて、話し合いをする。まずは二、三人で組んで周りを見て回ろうということになった。
ランさんは見た事がないものを見ると、そのまま飛び出してしまいそうなので、私、ニルシさん、ランさんで動く事になった。私の所にはフレネも一緒なので、実質四人みたいになっている。ランさんが何かに触れそうになったりしたら止めようという話になっているのだ。
リルハとカミハは別行動で他の人たちと一緒に居てくれることになった。
とはいえ、村からこの遺跡までの移動や拠点の準備であたりもそれなりに暗くなっているので本格的な調査は明日からになった。
夕飯を食べてからリルハに寄りかかってそのまま眠った。
明日になればまた見た事がない場所も沢山見れるだろう。そう考えると胸がわくわくするのだった。
――少女と、遺跡 3
(神子の少女は目の前の遺跡に胸を高鳴らせる)