Mysterious Job Called Oda Nobunaga

12 The Strongest Archer

やっぱり、オダノブナガは特別な職業だった。魔王も王には違いないだろうだラヴィアラも言ったが、そのとおりだ。王という言葉の入った職業を授けられることなど前代未聞だろう。王朝の力が強い世が世なら、それだけで不敬として罰せられたかもしれない。

「あの……いくら衰えているとはいえ、王家は現在も続いております……。あまり滅多なことを申されませんように……」神官エルナータは気が小さいのか、俺を諫めた。ここで調子よく、きっと王になれますと言われたほうが信頼できなくなるし、これでいいけどな。オダノブナガがどういう職業かはっきりとはわかってないだろうし。

「ああ、案ずるな。俺は王家を守り立てる機会を与えられれば、是非そうするつもりだ。まだ、郡単位の領主でしかないからずいぶんと先のことになるが」傾いた王家を守るためといって、そこで実権を得ていくのも、かつての王朝簒奪の常套手段だ。とはいえ、そういうことをやると、周囲の領主を刺激するから、もっと力を確固たるものにしないといけない。

と、その時、案を一つ思いついた。

「そうだ、ラヴィアラ、お前、まだ大人としての職業を授けられてないよな?」「ずっとのびのびにしていましたね……。あまり落ち着いた時間がとれませんでしたので」俺の立場が激変したので、側近のラヴィアラも時間を確保しづらかったというのは事実だ。

「ちょうど神官殿がいるのだ。城の礼拝堂で問題なければ、そこで職業を授けてもらえばいい」神官エルナータも「礼拝堂が整っていれば広さなどは関係ありません」と言った。そりゃ、村の小さな礼拝堂で大半の農民は職業を授けてもらっているのだから当然だ。

「はい。どうか、いい職業になりますように……」こうして、俺たちは礼拝堂に移動した。また、オダノブナガみたいな変な職業になったりするんだろうか。まあ、そう立て続けに起こらないよな……。もし、オダノブナガと敵対する領主の名前でも授かったらややこしいことになるし。

俺の時と同じように儀式は進む。儀式といっても、ラヴィアラが跪いているところに神官が託宣を告げるだけのことだ。

「ラヴィアラ殿の職業は…………射手です」

「なんだ、思った以上に普通ですね」ラヴィアラが率直な感想を言った。「いえ、射手はそこそこ珍しい職業なのですが……」

「オダノブナガと比べれば、全然普通ですよ」そりゃ、世界で俺しかいないだろうからな。ずっと、ラヴィアラは弓で活躍していたのでまっとうな職業と言える。

「射手は戦闘時の、弓矢の攻撃力が通常の30パーセントアップ、さらに命中率も大幅に上昇すると言われております。まず、はずすことはありえなくなりましょう」「なるほど。早速、的で試してみたいですね」

善は急げとばかりにラヴィアラは城の庭に設けた練習場で、的めがけて矢を撃つことにした。こころなしか、弓を構えるラヴィアラの体から金色のオーラみたいなものが見える。

「すごいです。心が落ち着いているのに、気合いだけは静かに入ってくる感じ……。間違いなく、これまでにないコンディションです」そして、矢を放つ。

――ズドオォォォン!

ただの矢とは思えないような音がした。矢はたしかに的の中心に当たっている。かつ、その周辺にいくつもの亀裂が入っていた。普通の矢ではありえないような威力が宿っていたらしい。

「なんだ、これ……。刺さったら即死ってことか……?」すごいというより、怖いような威力だ。「ラヴィアラにもまだよくわからないんですが……」

「射手は、集中力と技量が両方備わっていると、体の魔力が矢に上乗せされて、ダメージが三倍になると言われています……。あくまでも、一流の射手にしか起こらないボーナスなので、この私も目にしたことはないのですが……」神官も怯えているレベルだった。つまり、もともとラヴィアラの力は一流でそこに職業がついたから、チート級になったってことか。

「もう少し試してみますね」今度は違う的にラヴィアラは矢を放つ。

――ズヴァァァァァァン!

的に刺さった途端、明らかに的が弾け飛んだ。「爆発魔法みたいな効果が出たぞ!」明らかにただの弓矢が発しない力が出ている。

「たしかに、攻撃魔法を使ったことなんてないのに、回復魔法を行使した時のような感覚がありました……。魔力が宿っていたようです……」力を込めすぎたのか、少しラヴィアラは肩で息をしていた。それでも、とんでもない破壊力には違いがない。

ラヴィアラは幼い時から弓矢を習っていた。しかも大人として職業を得るのが結果的に遅くなったので、職業ボーナスなしでも戦闘で戦えるように力を磨かないといけなかった。その分、職業を得たブーストで一気に強くなったのだ。

「ラヴィアラ、すごいぞ。これなら戦場でいくらでも戦えるな」「はい! 今後もアルスロッド様のそばで一緒に戦いますからね! どんな敵だろうと撃ち抜きます!」神官がいたけど、俺はラヴィアラの頭を撫でてやった。

もしかすると、天下無双の射手を俺は手にしたのかもしれない。

「ラヴィアラは立派な大人の仲間入りを果たせて、うれしいです」もしかすると、ラヴィアラはちゃんと大人として認められてない立場に不安みたいなのを感じていたのだろうか。「もう、お前は領内すべてのエルフとハーフエルフを統括していいような力を持ってる。心配するな。尊大なぐらい、堂々としていろ」

それに、本当にありがたい戦力が増えた。政務をこなしている間も領土拡張のことを忘れていたわけじゃない。これで近くにある似たような規模の領主を次々と叩きつぶすことができそうだ。

――そのとおりだ。まずは近場の敵を一つずつ片付けていくがよい。

オダノブナガもそう言っているし、間違いないだろう。

魔王でも覇王でもいいが、俺は王になるからな。

「ラヴィアラ、しばらく毎日、弓矢の練習をしておけ。いずれ、本番で使うことになる」「ということは……」「まずはネイヴル子爵史上最大の版図を目指す」