Nigotta Hitomi no Lilianne
8, 11th month of life
生後11ヶ月が過ぎた。
大きな出来事としては、家族の誕生日会があった。
生後9ヶ月目くらいに母クレアの誕生日会があった。
部屋を兄テオと姉エリーと乳母エナで、飾りつけていたようだけど、飾りには魔力(仮)がなかったので見えなかった。
手作りだったらしく、触らせてもらった感じでは折り紙で作ったような、よく誕生日会とかでみる輪っかの連なったやつだった。
そのほかにも薄い紙で花みたいなのを作ったみたいだ。
エリーと一緒に紙の花を作ったりもした。
あまりうまく作れなかったけど、楽しかった。
部屋に料理をいっぱい持って来て、家族だけのささやかだけど温かい誕生日会だった。
ちなみにクレアの歳も判明した。26歳になったそうだ。
3児の母としてはずいぶん若いなお母ちゃん。
それから数日して、今度はテオの誕生日会があった。
誕生日がかなり近いけど、ちゃんと別々にやるようだ。
大きくなるにつれて、まとめての合同誕生日会にならないといいけど。
今度はクレアとエリーとエナで飾り付けをした。
もちろん今回も紙の花を作るのを手伝った、前よりもうまく作れた。
指先を細かく動かすのに慣れてきたのだろうか。
毎日のにぎにぎ訓練は、着実な成果をあげているようだ。
クレアの誕生日と同じように、部屋に料理をいっぱい持って来て誕生日会をした。
肉系の料理が多かった気がする。
香ばしい、いい匂いがいっぱいしていた。
やっぱり男の子だけあって、お肉が好きなようだ。
彼の歳も判明した、9歳になったようだ。
それから4週間後くらいに今度はエリーの誕生日会があった。
母、兄、姉と誕生日が近いようで、連続イベントの月のようだ。
今度はエリー以外のクレア、テオ、エナの3人で飾りつけ。
当然、紙の花を作ってお手伝いした。
一人で作ったらものすごい褒められた。
さすがにこれだけ作る機会があったら、一人で作れるようになるよ!
二人の誕生日会同様、部屋に料理を持って来てお祝いした。
野菜をふんだんに使った料理が多くて、肉や魚はほとんどなかった。
エリーはもしかしてベジタリアンだったのか?
でも、肉も魚も食べていたようだし、単に野菜が好きなのかな。
食べられる草育ててたしな。
もちろん彼女の歳も判明した、7歳だ。
さすがに短い間に3回も誕生日会をやったんだし、そろそろ打ち止めだろうと思ったが……甘かった。
エリーの誕生日会から4週経たないうちに、今度はエナの誕生日会があった。
誕生日イベント多いな!
当然、もちろん、当たり前!って感じでエナ以外の3人で飾りつけ。
その間はエナは別の部屋へ行っていた。
今度は紙の花以外にも、紙の輪っかの飾りも作るのを手伝った。
ご多分に漏れず、部屋に料理を持って来て誕生日会開始。
魚介類がメインの料理だった。
すごく美味しかった。
オーベント王国は肉も魚も野菜も、普通に食卓に出てくる。
食材豊かないい国だ。
エナの歳は28歳だった。
お母ちゃんと2つしか違わない……やはりクレアは童顔だ。
これで自分と父アレク以外の誕生日会が終わったわけだけど。
この調子だと来月にならないあたりに、次はアレクの誕生日会があるんじゃないかな。
誕生日会ラッシュだし、きっとあるんだろうな!
結論としてはアレクの誕生日会はまだ大分先だった。
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いつものように兄と姉が交代しながら、というか競い合うように我先にというか、そんな感じで樹木と草花に関する本を読んでくれている。
今は姉のターンのようだ。
タイトルは
" 月と太陽とアカネ草 "
タイトルを聞いた時には恋愛系の小説かなと思ったのだが、実際はやっぱり最初から超展開の冒険小説だった。
どうやら作者は以前読んでくれた " 一本でも草 " と同一人物のようだ。
なんせ始まりが、深い谷の底に咲いている赤い草が3本の足で立つところから始まるのだ。
1本、足増えてるよ……。
今回は前後編に別れてはいないようだ。
厚さも前と比べると半分以下だ。
当然触って確かめただけなので、本当は続き物だったりする可能性もあるが、今のところ聞いている限りではなんとか終わってくれそうな雰囲気だ。
" 一本でも草 " も最初の超展開以外は結構楽しめる冒険活劇だった。
物理的に立ち上がった名もなき草が世界を旅しながら、同じように物理的に立ち上がった草達と出会い、笑い有り涙有りの冒険を繰り広げる。
最後に、最初に仲間になった草が死んでしまうという場面は結構泣けた。
安易に " 殺せばお涙頂戴 " とかいうやつもいるかもしれないが、あれは泣けた。
読んでくれた姉のエリーも、一緒に聞いていた兄のテオも、乳母のエナさんも、母のクレアも、往診に来ていて、もう診察終わってるのにずっと聞いている医者のご老人もみんな泣いていた。
みんな泣いていたので、話の内容がわかっているとか気づかれなくて済んだ。
みんな泣いていたから、貰い泣きしてるとか思ったのかもしれないが。
ちなみに父親のアレクは例の如く仕事でいなかった。
覚えてないと思ってたけど、結構覚えてるもんだと不思議に思う。
そんな感動で最後まで完璧に冒険活劇の定番を突っ走ってくれた " 一本でも草 " の作者の作品だ。
" 月と太陽とアカネ草 " も無事に終わってくれるだろうと思っていた。
だがそれは、はっきりいってしまえば甘いとしか言えない戯言でしかなかった。
最後の最後で何を思ったのか、終わりとかFinとか完とかで締めくくるはずだったのに、そこに書かれているはずの文字をエリーはこういった。
「続く。さぁあと29巻楽しみだね~リリー」
一瞬何を言ってるのか理解できなかった。
おかしいな。ヒアリングは完璧なはずなのに……そうか、固有名詞だな?また知らない単語なんて出しちゃってもうお姉ちゃんは意地悪だなぁ。