Nigotta Hitomi no Lilianne
116, You'll Never Run From The Great Demon King
アレクの施す訓練を見学し、レキ君ルームに戻ってくる頃には今日の行動について大体のプランが立っていた。
今日の専属はラクリアだ。
彼女は獣族であり、獣族は特徴として動物の耳と尻尾を持つ。
専属4人とも全員が獣族だが、それぞれ全員違う動物の特徴をもっている。
ラクリアの氏族はウサギ族だ。
ウサギ族の特徴は長い耳。短い尻尾。
目は別に赤くない、らしい。
寂しいと死んじゃうとかもないらしい。むしろアレは寂しいと共食いするんじゃなかっただろうか。よく覚えていない。
ウサギといえば生前の世界でもたくさんの種類がいた気がする。
真っ白な耳を長々と伸ばした種類がオーソドックスではあったが、くすんだ色をメインにして耳を垂れさせたロップイヤー種なんかもいた。
でもラクリアはオーソドックスな方の耳をしている。
非常にわかりやすい、ウサギさんだ。
そんなウサギさんのラクリアだが、尻尾は短い。
短い故にメイドの着るロングスカートに隠れてしまう。
出しておくにはロングスカートを工夫しないといけない。
具体的にはぴっちりとお尻のラインがはっきりと見える、そんな感じになるのだ。
ラクリアのお尻は決して大きくなく、程よいサイズの桃尻さんだ。
普段決して体のラインを出すことのない、そんな彼女の桃尻ラインが今自分の目の前にあった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
クリストフ家のメイドには全員に同一規格の制服が支給されている。
所謂ヴィクトリアンメイドと呼ばれる職業メイドの実用性重視の服だ。
ロングスカートで作業しやすく、汚れがつきづらい加工が施されている。
色はわからないが汚れても目立ちづらい暗い色合いらしい。
背景に溶けるようにひっそりと佇んでいられるようにも配慮された配色のはずだ。
そんな同一規格のメイド服は、サイズの差こそあれほぼ同一。
獣族用の尻尾穴があったり、羽がある氏族用の穴があったりその程度の違いだ。
尻尾は当然長さがある者しか穴が空いておらず、ラクリアの氏族であるウサギ族のような短い尻尾では穴が空いていない。
空いていないはずだった。
ところでラクリアは真面目さんだ。
第一印象も真面目さんだった。
普段の仕事振りも真面目だ。
他の専属が不真面目なわけじゃない。みんな真面目にメイドをしているが、その中でも抜きん出て真面目なのだ。
何がどう真面目なのかはちょっと難しいかもしれない。姿勢というか態度というか。とにかく真面目オーラが出ているのだ。
生前でもたまにいた、見るからに真面目な人。まさに謹厳実直。あんな感じだ。
でも実際にラクリアは真面目さんだ。
仕事振りも実直でまっすぐ。融通が効かないように見えてきちんと対応してくれる。
優秀な真面目さんだ。
真面目さんだから制服もきちんと着ている。着崩すようなことはしない。
まぁクリストフ家でそんなことをしていたら即首が物理的に落ちるかもしれないので見たことはないけれど。
そんな真面目さんなラクリアの尻尾は今まで一度としてみたことがない。
ふわっとしたロングスカートの中に隠れてしまっていたからだ。
だが。
今。
自分の目の前には。
それがあった。
「お嬢様……覚悟は出来ております! さぁッ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ミラ、ジェニーを撃破したミッションプランと同様にレキ君からのコンボを今回も選んだわけだが、当然ラクリアの尻尾は短いので梳いてあげる、といっても梳けない訳で。
メイドであるラクリアが主人である自分に背を向けるという行為はあまりない。
むしろほぼない、といっても過言ではないかもしれないくらいないのだ。
まぁ状況に応じてあるにはある。
背を見せないで生活するなんて不可能だからね。
でも今日はとにかく背を見せなかった。
この時まで。
普段からあまり背を向けないので別段不思議にも思わなかった。
そわそわ不安な魔力の流れはジェニー同様だったので話を聞いているという確信があったので余計気にすることはなかった。
だからレキ君を梳いてからの専属を梳くというコンボをすると見せかけて、尻尾を梳けないから耳を梳かせてもらう算段だったのだがあてが外れた。
外れた、のだが……なんだろう。
この小動物のようにプルプルと震えて期待と不安とそわそわが入り混じってなんだかよくわからない何かになっている人は一体誰だろうか。
こんなラクリアは正直見たことがない。
そして目の前にあるのはそんな見たことがない人の初めて見る部分。
ふわふわの毛に覆われた丸い尻尾。
お尻の上にちょこんと乗っているように存在するので普段の穴の空いていないロングスカートでは見れない貴重な尻尾さまだ。
それを見れるように、触れるようにするにはスカートを脱がないといけない。
または、お尻のラインが出てしまうくらいにスカートを密着させて穴から出さないといけない。
まさに今のラクリアのように。
そんな突き出されたお尻には覚悟があった。
ミラとジェニーを完膚なきまでに撃破したあの快感を受けるには覚悟が必要だろう。
夢うつつで覚えていないかもしれないが、あの2人は自分の目の前で失禁までしてしまっている。
夢うつつでしかも証拠は完全に隠滅されているのだから気づかなくても仕方ないのだが、彼女達はクリストフ家のメイドだ。
抗いがたい快感で意識を飛ばされても覚えていたのかもしれない。
そしてそれをラクリアが聞いていたとしたら、この覚悟のほどもわかるというものだ。
具体的には失禁してでもミラとジェニーの語った快感を味わいたい、と。
なんだろう、今までの真面目なラクリア像が音を立てて崩れていく気がする。
でも……。でもそんなラクリアもいいかもしれない、と思ってしまう自分はすでにこの専属が大好きなのだ。
ならばやることは1つだ。
覚悟を持って挑む彼女に恥をかかせるわけにはいかない。
全力で。
そう、全力で彼女をもふって盛大に逝かせてやるべきだろう!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
短い尻尾は難敵だ。
なんせ短いのだ。
もふる面積がとにかく小さい。
小さいのでブラシを当てる時間が極端に短い。
すい、と流したら終わってしまう。
ゆっくり味わうように梳く。
魔力は圧縮した強力なものを使っているが、なかなかに短い。
だが反応は劇的だ。
様子見なんてちゃちな真似はしない。彼女の覚悟に報いなければいけない。
ブラシを当てた瞬間には背を仰け反らせて空中で何かを掴もうとして空を切る腕。
声は出そうで出ない。
最早喘ぎ声なんて超えてしまったらしい。
一瞬でギアは3段階くらいぶっ飛ばしてしまった。
腰が抜けてしまった彼女はぺたんと座り込んでしまい一瞬外れたブラシのせいもあり、へなへなと倒れこんでしまった。
当然背を仰け反らせていたのでこちら側に倒れこんでくるのをエアークッションの魔術で受け止めて体勢を維持。
短い尻尾も悪くなかった。
でもやっぱり今日の本命は違うのだよ、ラクリア君!
ブラシを投げ捨てて目の前まで降りてきた長い長い、毛の短いほっそりとしたソレにそっと壊れ物を触るかのように触れる。
無論魔力は圧縮済み。
瞬間へなへなになったラクリアに電流が走り、またも空を切る細い腕。
小さな、本当に小さな声が甘く漏れ出て……それもすぐに消えてなくなった。
ラクリアの耳はミラやジェニーの耳と違って毛が短くてこりこりとしていて非常に触り心地がいい。
ふわふわもふもふだった彼女達とは違った感触にいつまでも触っていたくなる。
耳の筋にそってすーっと指を動かしていくと自分の魔力の残滓が薄っすらと残りそして消える。
その度に目をぎゅっと閉じて、口をぱくぱくさせるラクリアが非常に可愛らしい。
こりこり、と耳を揉んで上げれば折れそうなくらいに仰け反り逃れようとするがエアークッションの魔術は応用すると対象を拘束できるのでがっちりと頭はロックされているので逃れられない。
まだまだ。
まだまだこれからなのだよ、ラクリア。
君の耳は他の子と違っていて色々と試してみたい欲求に駆られる。
是非とも。是非とも!
無表情が張り付いている自分の顔に浮かぶのはあどけない幼い無邪気な、本当に無邪気な笑顔。
その無邪気の笑顔のまま、激しく抵抗しようとしてあっけなく敗北するラクリアの四肢を拘束する。
邪魔なのだ。
邪魔なのだから仕方ない。
覚悟を決めた彼女の決意に報いなければいけないのだ。
そう、報いなければいけないのだ。
一層笑みを深めるその様を第3者視点から見ている客観的な自分がいるが知ったことではない。
おまえもこちら側にいたならば同じ事をしている。
そう、これは戦いなのだ。
決死の覚悟を持ったラクリアという1個の固体と自分という1個の固体の壮絶な戦いなのだ。
もふもふの極みへと達する為の壮絶なる戦いなのだ!
拘束は四肢だけに留まらず、虚ろになっている表情すら……全てを縫い留める。
展開されていく魔術はすでに2桁を超えて……。
その様子をずっと見ていた妖精2人は後からこう語った。
大魔王《リリー》からは決して逃げられない、と。