On the Way Home I Got a Bride and Twin Daughters, Who Were Dragons

Even if it can be, it will always come with you (8) [Corrected Version]

 この旅行最後の朝が来た。

 前日に遅くまで酒盛りしていた親父や巡査達はまだぐっすり寝ていて、俺と翔平はユリーさんと一緒に朝飯の手伝いをしている。

 女子達も朝早く起きて荷物の整理をしていて、ちょっと慌ただしい。

 女物のあれこれなんかは俺に触れるわけないし、見られて困る(主に俺が)物なんかがいっぱいあるだろうから、それならという事でユリーさんと一緒にキッチンに立っているわけだ。

 軽めの朝ごはんだが、人数がいるとどうしても手間取るからな。

 ユリーさんがお味噌汁。翔平がスクランブルエッグやベーコンなんかを焼いていて、俺はサラダ。

 朝はご飯派の風待家だが、たまにはパンもいいかもしれない。

 味噌汁は二日酔いで起きてくるだろう親父達へのユリーさんの気遣いだ。

 飲んだ翌日は味噌汁が恋しいのだそうで、そこらへんはまだお酒の許されてない俺にはさっぱりわからない。

「翔平、浩二起こしてこいよ」

「うん。ルージュ姉ちゃん達は?」

「あー、さっき見たら幸せそうに子熊ちゃん抱えてたからな。もう少し寝かせてやれ」

 お寝坊組は浩二とルージュ。そして子熊ちゃんである。

 ジャジャとナナは朝はとても早く起きがちだ。

 学校のある時は俺が起きたのを敏感に察知してジャジャが泣くから、習慣付いてしまっているのだろう。

 さっき布団を見て来たら、寝ているアオイの横で二人してワタワタ手足を動かして遊んでいた。

 夜泣きもそこそこあったし、慣れない環境で疲れているアオイに気を遣って起こさないようにしていたんだが、お腹の空いたナナが自分でアオイの服に潜り込んでおっぱいを欲しがったから起きてしまった。

 本当にママは大変である。

 俺達と同じ部屋で寝ていたルージュを見ると、子熊ちゃんを抱いて幸せそうに寝ていた。

 モフモフの毛に顔を埋めて、同じくモフモフのお腹に優しく手を添えながら。

 まるで本当の親子のようで、ちょっとほっこり。

 元々朝が弱いルージュだから、もう少し寝かせてやっても問題は無い。

 今日で子熊ちゃんともお別れである。たった1日だけだったが、名残惜しさもあるだろう。

 できるだけルージュの気の済むようにやらせてやりたいしな。

 浩二に関してはただの寝すぎだ。

 あの野郎、昨日誰よりも早く寝たくせに、起きてくる気配が一切ない。

 働かざるもの食うべからず。自堕落は許しませんえ。

 あいつにも何かしらの仕事を割り振ってやる。

「行ってくるね」

「おう、頼む。叩き起こして来い」

「任せて」

 エプロンで手を拭きながら翔平がキッチンを出て行く。

 スリッパが階段を昇るペタペタとした音を聞きながら、俺はサラダボウルから用意していた紙皿へとサラダを盛っていく。

「あの子熊ちゃん、結局どうする事にしたの?」

 小皿でお味噌汁の味見をしながら、ユリーさんが聞いて来た。

 その仕草はなんだかとっても絵になっていて、歴戦のお母さんって感じだ。

「ルージュと同族の龍がここいらにも居るそうなんです。そいつらならあの子の親の居る所を知ってるらしくて、もう少ししたら案内に来るはずなんですけど」

「あらまぁ。こんなところに龍種がいたなんてビックリねぇ。よく今まで見つからなかったわね」

 そう言ってユリーさんは頬に手を当てる。

 ルージュが知覚できる範囲で六匹。

 多いのかどうなのか微妙もいいところだが、意外と龍ってそこらへんに居たんだな。

 ん? てことはアオイも同族の居場所とか分かるんだろうか。今度聞いてみよう。

『龍王女さまー! おはようございまーす! 草龍が来ましたよー。ねぇウエラ、本当にここで良いのかしら。ここ人間の巣よね?』

『知らなーい。でもここから龍の気配はするし、間違いないんじゃない?』

『そんな他人事みたいに言わないでよ。わ、私。龍王女様に会うのなんて初めてで、どうしたらいいのか分からないのよ! ああ、失礼な事したら怒られるんじゃないかしら』

『アズイは心配性だなぁ。でも、まさかこんなとこに龍王女様が来るなんて思わなかったね。僕、とっても昔に地龍王様のお顔は見た事あるよ。お綺麗な方だったなぁ』

 ん?

 噂をすればなんとやらかな?

 玄関ではなくウッドデッキの方から声が聞こえて来た。

 どうやらここいらを縄張りにしてる龍達のお出ましのようだ。

「来たみたいですね。ユリーさん、悪いんですが、ルージュを起こして来て貰ってもいいですか? あとアオイも呼んで来てください。俺が迎えて来ますんで」

「ええ、分かったわ」

 お味噌汁の鍋の火を消して、ユリーさんはパタパタと少し駆け足でキッチンを後にする。

 俺はエプロンを脱いでダイニングの椅子に掛け、ウッドデッキへと繋がる窓へと向かった。

 龍を迎えるって、実は少しトラウマになってんだ俺。

 何せ前例があのユールだからな。

 突然話も聞かずに吹っ飛ばされた俺からしてみれば理不尽この上無い。

 多少身構えてしまうのも仕方ないだろ。

「えっと、待たせてすみません。ルージュは今寝ててーーーーーーあれ?」

 居ない?

 おっかしいなー。声は確かにこっちから聞こえて来たんだけど。

「に、ににににに、人間!? ウエ、ウエラ人間が出て来たわ! どうしよう食べられる! 襲われる! 殺される!」

「落ち着きなよアズイ。今この人間の人、龍王女様の名前知ってたみたいだよ。やぁ人間さん。初めまして」

「え?」

 声はすれど、姿は見えず。

 何かに化かされてるのかしら俺は。

「あ、こっちこっち」

「ううううう、ウエラ! ダメよ近寄ったら! 食べられちゃうわ!」

 クイクイっとシャツを引っ張られた。

 目線を下に下げると、子供が二人。

「え? 子供?」

 なんだか色々と際どい布切れを身につけた、額に二本の黒い角を持った茶髪の子供が二人立っている。

 一枚の布に頭が入る程度の穴を開けて通し、腰の部分で紐で括っているだけのその姿。横から丸見えじゃなかろうか、それ。

「ちっさく見えるけど、子供じゃないよ。僕ら地龍族の草龍《ハーブドラゴン》はもともと体が小さい種族なんだ。これでも僕が1200年。アズイが800年を生きてるんだよ?」

 長い髪をポニーテールにして、左目を前髪で隠している子がにっこりと笑ってそう説明する。

「初めまして人間さん。僕はウエラ、ウエラ・ドラフィロだよ」

「あ、ああこれはどうもご丁寧に。風待薫平と申します」

 自己紹介をされたから慌てて自己紹介で返す。

 細い腰、細い手足。『僕』なんて言うから一瞬男の子かと思ったが、龍には女の子しか居ないはず。ならこの子も女の子なんだろう。僕っ子かよ。

「ほらアズイ。君も自己紹介しないと失礼だろ?」

 いつの間にかウエラの背中に隠れてしまったもう一人の子を、ウエラがにっこり笑って前に引き出した。

 こちらは長い髪をお尻で一本に纏めて居て、ウエラとは逆に右目を隠している。

 あ、良く見るとかなり短い尻尾がある。

 布の下でピンと上を向いて居て、警戒しているのがモロバレだ。

「うううう……。わ、私はアズイ、アズイ・ドラフェクシーよ。ひっ、あの、怖いから近寄らないで欲しいわ。ああっ、美味しくないわ! 私食べても美味しくないの! ウエラなんてもっと美味しくないから! だから食べないで!」

「い、いや食べないけどさ」

 俺の目を見た途端にそんな怯えなくても良くない?

 ユールの時もそうだったし、ルージュにもやんわりと言われたけれど、俺の目付きに悪さは龍にも悪印象を与えてしまうのか……。

「美味しくないって、これ喜んで良いのかなぁ」

 ウエラはにっこにこしながら怯えるアズイの頭を撫でる。

「だ! だって、そう言わないと食べられちゃうわ! ウエラは、あの、その、きっと美味しいに違いないけれど、でも! でも!」

「落ち着いてアズイ。アズイが僕を守ろうとしてくれたのはとっても嬉しいからさ。だけど初めて会う人間さんの前でそれは失礼だよ。大丈夫。この人間さんは僕たちを食べたりはしないさ。て言うか、人間さんが龍を食べるなんて誰から聞いたの?」

 胸に顔を埋めたアズイを優しくあやしながら、ウエラは困ったように笑う。

「お、お母さんがずっと昔に教えてくれたわ。私達みたいな弱い龍は狙われやすいから、決して近くなって」

「おばさんも心配性だなぁ。大丈夫だよアズイ。何があったって僕がアズイを守ってみせるから。僕の大切なアズイを傷つけたりなんかさせないさ」

「ウ、ウエラァ」

「アズイ……」

 俺の目の前で小さな女の子二人がイチャイチャし出したんだけど。何これ。

 どうしたら良いの?

「あ、あのさ。俺は別に二人に酷い事なんてしないから、安心してくれて良いんだぞ?」

 百合百合し出した空気をなんとかしようと、勤めて優しく話しかける。

「あ、ああごめんね人間さん。アズイはとっても臆病なんだ。でもそれが可愛いところでもあるんだけどね」

「うん。まぁ、君たちが良いんならそれで良いんだけどさ」

 ダメだ。

 なんか惚気《のろけ》る方向に無理やり持って行かれた。これ俺の手に負えないヤツだ。

 アトル王子とウタイと言い、最近はバカップルが流行ってんのかなぁ。

「ん。おはよう薫平。遅くなった」

 背後から眠そうな声が聞こえてきた。

「おう、おはよう」

 振り向くとルージュがまだ眠っている子熊ちゃんを抱いて目を擦っている。

 パジャマがわりに使っている俺のシャツとスウェットがダボダボして居て、ボサボサの頭が自由自在に飛び跳ねている。

 お尻の尻尾も心なしか力なく項垂れていて、まだ眠り足りないのは一目でわかった。

「おはようございますルゥ姉様。薫平さん、呼びました?」

「だぁ!」

「あ、ルージュさんおはよう」

「うぁ」

 スリッパの音をパタパタと鳴らしながら、ジャジャを抱くアオイと、ナナを抱く三隈もダイニングに入って来た。

「あぁ、龍が訪ねてくるってんでな。ほら、この二人だ」

 助かった。これで少女二人の桃色空間を突破できる。

「ん。アオイも夕乃もおはよう。ジャジャ、ナナ。おはよう」

「だぁい!」

「あぅ」

 ルージュの声にジャジャが元気良く返事を返し、ナナは静かに頷いた。

 元気な1日は朝の元気な挨拶から。

 うちの双子は偉いなぁ。

「貴女達が、このあたりを縄張りにしている地龍族」

「は、はい! 龍王女様はとてもご機嫌麗しゅう!」

「初めまして、ルージュリヒテー様。地龍族は草龍《ハーブドラゴン》。ウエラ・ドラフィロです。こっちがアズイ・ドラフェクシー。お呼びに馳せ参じました」

 振り向いて二人を見たルージュの問いかけに、アズイは緊張して直立不動、ウエラは柔らかくお辞儀をして返す。

「ん。そう畏まらなくても良い。お願いがあるのは私の方だから」

 子熊ちゃんの頭のズレを直しながらルージュ。

「へー、他の地龍の方々って、こんな近くに居たんですねー。知らなかったなー」

「まぁ、アオイちゃんはずっと引きこもってたらしいしね」

「うっ……まぁそうですけどぉ」

 三隈の鋭い指摘を受けたアオイが苦い顔をする。

「それで、昨日お願いした件なんだけど。何か分かった?」

「はっ、はい! この山一帯で暮らしている獣人の部族ですが、先週からこの近くの川沿いで生活を始めているみたいなんです!」

 緊張しっぱなしなアズイが必要以上の大声で返事を返した。

「あだぁー!」

「うだぁ」

 違う違う。

 別に遊んでくれてる訳じゃないぞチビ達。

 ちょっとだけ静かにしてような?

「僕たちは彼らと鉢合わせしないように移動しながら暮らしているので、場所なら正確に把握してます。ただ、ちょっと変なんです」

「変?」

 俺は思わずウエラの言葉を遮ってしまった。

「うん。一昨日ぐらいからその部族がやけに騒がしくてね? 普段は狩りに出ないような距離まで出てくるもんだから、僕たちも慌てて逃げ回ってたんだ。見つかったら色々と面倒くさい事になるから」

「あ、あの。部族の男衆が武具を持って何かを探しているみたいなんです。狩りをしている訳でもなく、森と山のいろんなところに分れて行動してて。私たちもあっちに逃げたりこっちに逃げたりして」

 探してる?

 それってもしかして。

「ルージュ、その子やっぱり探されてるみたいだぞ」

 そうなるよな?

 小さな子がこんな広い森で行方不明なんだ。そりゃ大騒ぎにもなるだろう。

「ん。すぐに帰してあげたい。薫平、大丈夫?」

「ああ、準備できたらすぐに行こう。ウエラ、アズイ。案内して欲しいんだけど」

 早く親御さんのとこに戻してやんきゃ、心配してるだろうからな。

「わ、わかったわ!」

「喜んで案内するよ。ここら辺、世界衝突からこっちだいぶ住みづらくなってきたからね。騒ぎが大きくなったら僕らもいよいよ引っ越さなきゃならなくなっちゃう」

 ああ、お前らも色々大変なんだなぁ。

「山に入るんですか?」

 いつの間にか隣に立っていたアオイが俺の顔を覗いてきた。

「ああ、早く子熊ちゃんを親のところに帰したいからな。留守番しといてくれるか?」

「いえ、私も行きます。ジャジャとナナも、お友達と最後まで一緒に居たいでしょうし。ていうか、薫平さんがまた怪我するかも知れないんで、絶対行きます」

 いや、怪我なんかしないって。

 信用ねぇなぁ俺……。

「でもジャジャとナナにはーーーーーー」

「薫平、大丈夫。地龍が三匹もいる。それで森や山で怪我をするのはありえない」

 ルージュが俺の言葉を遮ってウエラとアズイを指差した。

「そうか? んー、まぁお前らが言うなら、じゃあ連れていくか……」

 でもなぁ。やっぱり心配だよなぁ。

「わ、私は留守番かなぁ。山の中だとみんなに付いていくのもやっとだと思うし、足手まといになっちゃうから」

 ナナを抱きながら三隈が苦笑いをする。

 そうだなぁ。あんまり大人数で行っても動きづらくなるだけだし、体力的にも三隈は残って貰った方がいいだろ。

「ああ、悪いけど。そうしてくれると助かる。夕方までには戻って来たいから、荷物とか纏めて貰っててもいいか?」

「うん。任せて」

 軽く頷いて笑みを浮かべる三隈。

「頼むわ。とりあえず朝飯食べてからにしようか。えっと、ウエラ、アズイ。腹減ってないか?」

「お、お腹? す、空いて……るけど」

「大慌てで獣人探し回ってたからね。食べさせてくれるのかい?」

 おずおずと自分のお腹を撫でるアズイ。そんなアズイを見て困ったように笑うウエラ。

 ああ、ルージュの頼みのために頑張ってくれたんだな。そんなら腹一杯食わせてやろう。

「ああ食ってけよ。ウチの飯は美味いぞ」

「ん。ありがとう。たくさん食べていって」

 よし、んじゃ準備しますか。

「……ウエラ、私なんだか状況に付いていけてないわ」

「龍王女様、どうして人間さんと一緒にいるんだろうね。あの子達も龍種みたいだし」

 こそこそしてるつもりでもバッチリ聞こえてますよー。

「兄ちゃん、こうちゃん起こして来たよ。あれ? どちらさま?」

「にぃ?」

「おお? 子供が増えてる?」

「あらあら、朝ごはん足りそうに無いわね。もう何品か作りましょうか」

 ダイニングに翔平と佐伯姉弟、ユリーさんが入って来た。

「朝飯食べながら説明するわ。ユリーさん俺も手伝いますよ。ほらお前らも入れ入れ」

「お、お邪魔します」

「ごちそうになります」

 未だウッドデッキに立ちっぱなしの草龍《ハーブドラゴン》達を室内に促す。

 あ、裸足じゃねぇかこいつら。しかも泥だらけだし。

「先に風呂入ってこいよ。風呂の使い方分かるか?」

「あ、私たちと一緒に入りましょうか。ジャジャもナナも寝汗かいちゃってますし」

 お、そうだな。

 出てくる頃には飯の用意も終わってるだろうし、親父達も起きて来てるだろ。

「どうせなら皆で入ろっか。ここのお風呂広いし」

 佐伯が女子一同をぐるりと見渡しながら言う。

 お前も寝起きで髪ボッサボサだしな。

「え……私は、えっと」

「観念しろ夕乃。女だけだし恥ずかしがることないんだから」

「だっていちかちゃん絶対余計な事するんだもん!」

「そりゃもちろん」

 手つきがエロいぞ佐伯。

 三隈はあんな奔放な幼馴染を持って災難だな。

「いいなぁ……私も入りたい。夕乃、この子も洗ってあげて」

 いつの間にか目を覚ましていた子熊ちゃんがルージュに抱かれながら目をクシクシと擦っている。

「あ、はい。わかりました……ってそっかぁ。ジャジャちゃんとナナちゃんも一緒だし、人が多い方が良いもんね……」

 どうやら三隈も観念したようだな。

「ほら、パパっと済ませてこいよ?」

「覗くなよお前」

 滅多な事言うんじゃないよ佐伯。覗くわけないだろ! 興奮しすぎて死ぬわ!

「え? お風呂? えっ?」

「お湯のお風呂って久しぶりだねアズイ」

「そのお洋服も結構汚れてますね。私のシャツで良ければ着替えありますよ?」

「アオイちゃんよりいちかちゃんの方がサイズ合うんじゃないかな?」

「何それ。私が子供体型って言いたいのか夕乃」

「ん。いちかは可愛い」

 状況に流されっぱなしのアズイを引き連れて一同は風呂場へと向かった。

 女子特有の賑やかさ。朝から元気だなぁ。

「翔平くん、ベーコンまだ残ってた?」

「いっぱい余ってるよ。卵ももっと焼いちゃって良い?」

「そうね。パンだけじゃ足りないだろうし、ご飯も炊いちゃいましょうか。龍の子たちってたくさん食べるイメージだわ」

 キッチンではユリーさんと翔平が早速調理に入っていた。

 手際の良さはさすがだな。

「ふぁああああ……んにゃあ」

「お前なに眠そうにしてるんだよ。たっぷり眠ったくせに」

「んにゃっ」

 床で丸まって欠伸を溢す浩二の脳天に軽くチョップを入れる。

「お前も皿出したり飲み物入れたりしろって。ほらほら」

「にゃっ、んにゃにゃにゃっ」

 浩二を引き起こして背中を押しながらキッチンへと向かう。

 今日は忙しくなりそうだ。