僕達は屋敷に戻ると、出迎えたのはリッシュモンドとロゼ姉さんだった。

「お帰りなさいませ」

畏まった一礼をするリッシュモンド。そして顔をあげると、僕を見る。

「ところで、先程、念話か何かでわたしを呼びませんでしたか?」

「い、いや、そんな事はしてないよっ」

聞こえたの⁉ どんな地獄耳だよ!

「まぁ、それは良いのですが。ディアーネ殿が指揮った市の結果ですが」

歩き回って見た限りだと、かなりの盛況だと思ったのだけど。

「想定よりも、盛況でした。これなら、御用商人を務める事が出来るでしょう」

おおっ、リッシュモンドの口から『問題なし』という言葉が出て来るか。

これなら、問題ないな。

「うむ。流石は妾が見込んだ婚約者候補じゃっ」

ロゼ姉さんが無い胸を張る。

その絶壁といえる身体で、胸を張っても、何というか悲しいとしか言えないな。

「リィン。お主、何かよからぬ事を考えておらぬか?」

「滅相も無い!」

僕は首を横に振る。

「……まぁよい。それよりもじゃ。妾は明日領地に帰るからな」

「帰る? ああ、姉さんも領地を持っていたっけ」

「うむ。そろそろ、帰らないと仕事が大変じゃろうからな」

「そうですか。じゃあ、今夜は壮行会でも開きますか?」

「いらん。普段通りで構わんのじゃ。それに」

「それに?」

「明日あたり、ミリアかヘルミーネのどちらかが来るじゃろう。リィンはそっちを出迎える準備でもしておれ」

……。

…………。

………………。

えっ⁉

「そ、そんな、はなし、いまきいたんですけど?」

「うん? イザドラが書いた手紙に書いてあったじゃろう?」

可愛らしく首を傾げるロゼ姉さん。

僕はその言葉を聞いて、すぐさま私室に向かう。

其処にイザドラ姉さんの手紙を置いてあるからだ。

「今の今まで、手紙を読む事を忘れていたああああっ⁉」

早く。返事を書かないと、また面倒な手紙が来る‼

全力ダッシュで、私室に向かう。

私室の前に着くと、ドアを開けて、中に入り、手紙を探す。

あっちゃこっちゃ探し回り、目的の手紙を見つけた。

お蔭で、部屋はゴチュゴチャになったが、そんなのは後回しだ。

手紙を広げて、中身を見る。

書き出しは何時もの如く『可愛い可愛い親愛なる弟 リウイ』だったが、そこら辺は読み飛ばす。

今日は天気がどうとか、兄さんの誰かが、領地運営に失敗して、支援を求めて来たとか、僕はそんな事を一度もしないので偉いとか書かれていたが、そんな事はどうでもいい。

そうして流し読みしていると、追伸の所まで、其処に。

「 追伸

この手紙が届いで数日後ぐらいにヘルミーネとミリアリアの二人がそちらの領地に着くと思います。

久しぶりに会えるので二人共楽しそうでした。

貴方も二人に会えて嬉しいと思いますので領主としてだけではなく弟としても歓待してあげてください

では、また、手紙を書きますね。

貴方の親愛なる姉 イザドラ」

うわぁ、本当だ。しかも、二人同時か。

「ふぅ、とりあえず、二人の歓待の準備でもしておくか」

僕は執務室に行き、リッシュモンドとフェル姉さんを呼び出して姉さん達を出迎える準備をさせた。