僕達はカウンター席で飲み物を注文しながら、店の中にいる客達がはけるのをまった。

その間、僕達はミルクを飲み続けました。

マスターにエールを頼んでも、出て来たのはミルクだった。

曰く、お前の姉ちゃんに『飲み物は何を頼んでもミルクだけにして』と言われたからだそうだ。

ミリア姉ちゃんめええぇぇ‼

そう思いながら、僕達はミルクを飲み続けた。

しかし、酒場でミルクを飲んでいるのに、誰にも絡まれないとは。

それだけ、僕はこの酒場でミルクを飲むのは自然だと思われる程に浸透しているのだろうか?

そう考えると、何か嫌な気分だ。

やがて。客達は店から出て行き、最後の客が出て行くと、ガイウスがマスターを見る。

マスターは心得たとばかりに頷き、店のドアにに掛けられている札を開店から閉店にした。

その作業を終えたマスターは店に入り、ガイウスを見ながら「外には誰も居ないぞ」と告げて、閉店作業に掛かった。

そんなマスターを尻目にして、ガイウスが話し出した。

「よし、全員居るな? 久しぶりに会議を行う」

皆、返事はしない代わりに頷く。

「まずは、報告事項だ。お前等は知っている者も居るだろうが。先日『デッドリースネイク』が領主に麾下に組み込まれた」

「それは、つまり解散させられて、兵士として編成されたという事か?」

「俺もそこまでは分からない。だが『デッドリースネイク』のリーダーが領主とタイマンはって、負けて傘下に入ったのは確かだ」

「その『デッドリースネイク』のリーダーと領主がタイマンはった試合はどんな試合だったんすか?」

「聞いた所によると、異世界の競技を元にした競技試合をして負けたそうだ」

「もっと詳しく分からないのかよ」

「西地区にマーケットが開かれるから、目端を利く奴を行かせようとしたが、入口で検問があって、入る事が出来なかったから、どんな試合なのかも、どんな戦い方をしたのも分からない」

「じゃあ、その領主の顔も分からないのかよ」

「その通りだ」

「確か『デッドリースネイク』のリーダーって、竜人族だったよな? そいつを倒すなんて、どんだけ強いんだ?」

「噂だと、一人で獅子の魔獣を絞め殺したという話もあるそうだ」

そんな噂、初耳なのですが。

思わず、違うと叫びそうになったが、口で手を塞いで言うのを耐えた。

「次に、仮メンバーの奴らは、一人一人呼ぶから奥の部屋に来い」

「? 何をするんですか?」

「仮メンバーに出した命令の進捗状態を聞くだけだ」

それか。前もって、ユエと話しをして取り決めた。

同盟の件の事を聞かれたら、もう少し時間が掛かるとか言って、ギリギリまで時間を稼ぐという事にしたのだ。

「まずは、ウィル」

「はい」

僕はガイウスに言われて、モルべさんと一緒に奥の部屋に向かう。

ティナは付いて行こうとしたが、僕が目で止めた。

報告だけだったら、僕がすれば良いだけだからな。

で、僕達は奥の部屋に入ったのだが。

部屋に入ると。

「えい、えいえい」

モルべさんがそう言って、僕の頬を突っつく。

「もう、ウイルのお姉ちゃんの所為で恥ずかしい目に遭ったじゃない」

「すいません」

姉がしでかした事なので、其処は素直に謝る事にした。

「だ~め♥ 暫く、わたしの玩具になりなさいな♪」

モルべさんは楽しそうに、僕の頬を突っつく。

こんな事をして良いのか? という思いを込めて、ガイウスを見るけど。

ガイウスは首を横に振った。

耐えろってか?

それはあんまりだ。

仕方が無く、僕はモルべさんが飽きるまで好きにさせた。

まるで、子供に与えられた玩具のような気分だった。