皆に会わせる前に、ちょっと口裏合わせをしてから僕達は洞窟を出た。
洞窟を出ると、皆が出迎えてくれた。
「お帰り。リウイ」
「お帰りなさいませ。リウイ様」
「ただいま」
皆に挨拶していると、後ろからブツブツと声が聞こえて来た。
「一、二、三、…………全部で数百人は居るのかな。ふふふふ、これは随分と泥棒猫が多いわね」
「リウイ様はお前の夫になった訳ではない。その表現は適切ではないぞ」
「あくまでも『まだ』夫ではないだけよ。いずれはね」
「そんな事はわたしの目が黒い内は決してないとしれっ」
「ふふふ、それはどうかな?」
口は笑っているが目が笑っていなかった。
何を話しているんだ。この二人は。
コメカミを抑えながら、この二人はどうしたら仲良くなるかなと思いをはせる。
「リウイ。その女性は?」
「ああ、この人は」
僕が紹介しようとしたら、椎名さんが前に出て来た。
「初めまして。わたしは椎名雪奈と言います」
綺麗な笑顔を浮かべながら自己紹介する椎名さん。
「え、えっと、リウイ様。どういう経緯でこの方と知り合いに?」
「ああ、実はね。この人は何でも異世界という所からこの世界に飛ばされてきたんだ」
「飛ばされてきたですか?」
「うん。で、運悪いのか龍が多く棲んでいる『龍の巣』という所に居たんだって」
「『龍の巣』っと言えば。この大陸でも危険地帯で知られている場所ですぜ。何でも万を超える龍が棲んでいると言われる所で、迂闊に踏み込めば龍の餌食になるって話ですよ」
まだあるんだ。『龍の巣』。
「そうなんだ。で、運悪く龍に襲われて、命を落としてしまったそうなんだ」
「本当は龍を千切っては投げ千切っては投げを繰り返していたんでしょうね。……(ボソリ)」
リリムが何か言ったが無視だ。
「で、龍に食われた瞬間、意識を失ったんだけど、直ぐに気が着いたそうなんだ」
皆、どういう事?という顔をする。
「何と、龍に転生していたんだ!」
僕がそう言うと、皆、頭の上に?マークを浮かべていた。
まぁ、転生したと言われても意味が分かる訳ないよな。これは、漫画を見ないと分からないだろうし。
「……つまり、その椎名さんは人間だった時の記憶を持ったままで龍に生まれ変わったという事ですか?」
「そう。その通りだよっ。流石はソフィー」
「母さん。どういう事?」
「つまり、前世は人間だったという記憶持った椎名さんが龍に生まれ変わったという事よ」
「? そんな事があるの?」
「はぁ、ティナ。貴女はもっと勉強しなさい。異世界からこちらに世界に流れる人達を渡来人と呼ぶのは流石に知っているわね?」
「うん」
「そういう渡来人達が死ぬとその記憶を持った人達がこの世界にあらゆる種族に生まれ変わる事が稀にあるって話があるのよ」
「へぇ、そうなんだ」
ティナは特に興味ない顔をしていた。
「ソフィーの説明通り、で、その椎名さんの現世のお母さんがこの山に棲んでいる龍だった訳なんだ」
其処まで話して、皆は何となくだが此処に椎名さんが居る理由が分かった様だ。
「成程。つまりはこう言う事ですね。リリムがこの山に棲んでいる龍と戦って勝って、勝利の証としてその龍の娘を若の嫁にしたって事ですねっ」
「えっ⁈ ちが」
「その通りです」
否定しようとしたら、椎名さんが肯定してしまった。
「「「おおおおおおおおおおっ⁈‼‼」」」
「流石は若様です」
「まさか龍を嫁にするとは、姐さんの息子というだけはあるなっ」
「よし。今日は祝杯だっ。若が嫁を手に入れた記念に飲むぞ!」
「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお‼‼」」」
何か話が凄い大きくなっていった。何でこうなるのかな‼
そう思っていると、椎名さんが僕の耳元に近付き囁く。
「幾久しくお願いいたしますね。だ ん な さ ま♥」
何時の間に旦那様に言われる様になったんだ。
と言おうとしたら、袖を引っ張られた。
振り向くと、其処には頬を膨らませたティナ、カーミラ、アマルティア、ランシュエが居た。
「「「「どういう事?」」」」
……どうしよう。