「話がずれたな。妹よ。お前を何故呼び戻したか分かるか?」

「呼び戻したね。まぁ、良いわ。わたしに何かをさせる為でしょう?」

「そうだ。お前には内政の才がある。それを見込んで我が国の立て直しをしてもらいたい」

「・・・・・・兄上。わたしが国を出た理由をお忘れですか? 兄上の寵臣達がわたしを邪魔だと思い、謀反をでっち上げたから国を出たのですよ。そのわたしが内政に口を出せば、またその者達が口を出してきますよ」

リリアンさんは当然の指摘をしてきた。

それを聞いてスティードン一世は苦々しい顔で手を振る。

「お前の懸念は最もだが、その心配は無いぞ」

「えっ? もしかして⁉」

「勘違いするな。別に粛清した訳ではない。隣国との戦でその者達が戦死しただけだ」

「戦? そう言えば隣国のカカヴァブオ王国と戦をして負けたと風の噂で聞いたけど本当なのですか?」

「我らは負けてはいないっ。だが、長引く戦で国内の情勢が不穏になった為に第三国の仲介で和睦しただけだっ」

肘置きを叩きながら叫ぶスティードン一世。

顔を真っ赤にして言う所を見ると、どうやら本当にそう思っているようだ。

「ふぅ、それで国の立て直しを為にわたしを呼んだんですね」

それを話したら話が続かないと思いリリアンさんは話を変えた。

「そうだ。直ぐに効果は出るとは思えぬが内政で我が国を豊かにしたいのだ」

「もし断ったら?」

「ふん。その時はうんと言うまでお前の領地に居てもらうぞ。娘達と離れてな」

「・・・・・・」

リリアンさんは横目でニコルさん達を見た。

どうしたらいいか悩んでいるようだ。

「まぁ、少し時間をやろう。その間、じっくりと考えるが良い」

「そんなに時間をくれるのですか?」

「うむ。異世界の者達が戦力になるのは、もう少し時間が掛かるからな」

はい? 今何と言ったんだ?

「兄上。異世界の者達を召喚したのですか⁉」

「そうだ。渡来人達は戦力になるからな」

渡来人って、まさか前世で居た世界の人達を召喚したと言うのかっ。

これはどうにかしたいな。

転生した以上、前世で暮らしていた世界は最早故郷では無い。

だが、前世の僕と同じように暮らしていた人達を戦に駆り立てるのは止めないとな。

どうにかしてその人達と接触したいな。

「ところで、その者の名は?」

スティードン一世が僕を見る。

攫ったのに名前も知らないのか? まぁ目的は僕じゃなくてリリアンさん達だから知らないのも仕方がないか。

「兄上。まさか知らないで攫ったの?」

「現地の部下からの報告では犯人を特定させないために攫ったと聞いたが、名前まで知らぬ」

「呆れた。・・・・・・この子の名前はリウイよ」

「リウイか。ふむ、してこの者は何者だ?」

「『八獄の郷』の一つラサツキ家の現当主のお孫さんよ」

「なにっ⁉」

驚きのあまり腰を浮かすスティードン一世。

「真か?」

「嘘をついても仕方は無いでしょう」

「そうだな。・・・・・・ふむ。見た所、年頃はリリアンの末の娘と同い年と言う所か。ならば良しっ」

何がだよと思わず突っ込みそうになったが堪えた。

「リリアン。お主の末の娘の名前は何と言ったかのう」

「ジェシカよ」

「そう。そうだったな。どうじゃ、ジェシカとそのリウイとやらを夫婦にさせぬか?」

何ですと⁉