ヴァベリア王国は『第二次魔王討伐』で連合軍の盟主国という事で嘗ての魔人族の領土の土地の多くを得る事に成功した。

交渉の際、多少他種族と揉めはしたが何とか収めた。

他種族は何とかなったが、代わりに同族である人間族が抗議してきた。

曰く、自分達は後方支援をしたのだから、少しは領地を貰えても良いだろう。

曰く、魔人族や他種族に攻められても、貴国は何の支援もしなかった。その賠償を払うべきでは?

という難癖がましい事を言って来た。

父王はその抗議を聞いて激怒して、全て却下した。

母上と一部の家臣だけは、妥協案を通そうとしたが父王は断固として反対した。

その父王の意見に多くの貴族達も同調した。

手に入れた領土の利益で自分達が甘い汁を吸えると思っているようだが、現実はそう簡単に甘くない。

手に入れた領土には人が居ないので移住させる必要があり、その人達を応募させるのも移住させる為の移動手段にも金がかかる。

更には手に入れた領土から収益を得られるのにどれだけの時間が掛かるか分からなかった。

父王の対応のまずさからか、それともヴァベリア王国が手に入れた領土に目が眩んだのか、今はもう滅んだがヴァベリア王国と同等の国力を持った大国が中心となった大同盟が出来上がった。

他種族に援軍を求めるも『人間同士の争いに手を出す理由が無い』という返事だけが帰って来た。

それに憤慨しつつも、父王は自国だけでその大同盟軍に立ち向かう事となった。

その戦いは長く続いた。

お蔭で国内に厭戦気分が広まった。それにより、一部の貴族が大同盟に唆されて、王都で反乱を起こした。

反乱は父王は遠征に出ている時に起こった。

わたしは王都の防衛を任されていたが、反乱軍の手引きで大同盟軍が王都に入り込んだ。

結果的に言えば、反乱軍も大同盟軍も壊滅。反乱の首謀者は全て処刑した。

だが、その反乱で母である王妃が失い、わたしは仮面が壊された。

当時つけていた仮面はわたしが生まれたから強大な魔力を制御する為の物であった。

反乱軍に謁見の間まで来た際の戦闘で仮面が壊された。

それにより、魔力が暴走した事で母上が亡くなった。

わたしはそれが許す事が出来なくなり、王位継承権を破棄して王国から逃げた。

自分の死を偽装して。

そうして、贖罪の旅に出ていたが。何時からか気付いてしまった。

自分が歳を取らくなった事に。

どういう事か分からくなり、知人のエルフの下に訪ねて理由を聞いた。

『お主が契約した神の加護で不老になったようだ。それ比例して寿命が人の数十倍、いや数百倍に伸びているようだ』

それを聞いて愕然とした。更には、自害しても大量の魔力により致命傷を負っても直ぐに再生すると言われた。

それから何をする気も無くなった。

長い間、大陸を歩いた。自分を殺す方法を探した。

風の噂で父王は甥に王位を継がせた事、そして、王都に突如生まれた死人により王都は壊滅し王統が途絶えた事を知ったが、どうでも良かった。その時は自分を殺す方法を探すのに一杯一杯であったからだ。

しかし、どれだけ探し回っても見つける事が出来なかった。探す事に疲れて、かつて常駐していたこの城塞に戻って住まうようになった。 

「……これがわたしが此処で暮らしている訳だ」

アウラ王女の話を聞いて、僕達は思わず目頭を押さえた。

僕が死んだ後にそんな事が起こっていたとは。

「う、うう、まさか、わたし達が居ない間にそんな事があったなんて……」

「……流石のわたしも想定外な事が起こっていたな」

マイちゃんは泣いて、ユエも嘆息を漏らした。

流石にそんな予想をしろというのは無理だしな、仕方がないだろう。

其処まで話したアウラ王女は僕を見た。

「それで、お前はどうしてわたしを見て、わたしの妹の名前を上げたのか教えて貰おうか?」

あっ。そう言えば、さっき思わず言ってしまったな。

どうしようか?

僕達は思わずマイちゃん達を見ると、二人はどうしようと顔を見合わせた。

これは言うべきか。悩むな。