「成程。あのサイオンジの子供か。しかし、そちらの世界とは時間軸が異なるとは、我が師から聞いていたが、こちらでは千年経っていても、そっちでは十数年しか経っていないのか」
アウラ王女は納得した様に頷いた。
そして、ディアナさんと龍月さんを見た。
信之君を見ないのはあれだな。知っている人物ではないからだろう。
「シイナの姪にあのアマギの姪か。妙な縁があったものだな」
「叔母を知っているのですか?」
「ああ、お前の叔母は召喚された渡来人達の中で扱いが面倒な四人の内の一人だったぞ」
当時の事を思い出したのか溜め息を吐くアウラ王女。
「扱いが面倒な四人?」
「一人は椎名さんで。残りの三人は?」
「其処に居る二人とわたしの妹の夫で公国の初代公王のイノタだ」
えっ⁈ 僕ってそんなに扱いが面倒だったの?
そんな事を始めて言われたよ。
「その三人は何かしたんですか?」
竜人君は興味が湧いたのか、ワクワクしながら聞いて来た。
他の三人も同じようにワクワクしていた。
ユエとマイちゃんは何かしたかなと、首を傾げていた。
その気持ち、僕も同じだよ。
「シイナとマイカなど猪田が居ないとしょっちゅう問題を起こす。ユエリャンは大臣の弱みを握ってそれをネタに脅して、金稼ぎをするという面倒な事をしたものだ」
アウラ王女の話を聞いて、そんな事かと鼻で笑う二人。
大変だっただろうな~と同情する。
「イノタの方などもっと面倒だった、戦争などに従軍して功績を立てて爵位と領地を貰ったのだが、貰った領地は特に産業などない所だったのだが、其処で珍しい鉱床を見つけるわ。その領地を狙う他種族からの侵攻を守る名目で色々な種族を雇うわ。それに加えて、何時の間にか他国の要人とコネクションを作っているという本っっっ当に面倒な事をしたのだ」
その時の苦労を思い出したのか頭を抱えるアウラ王女。
そんなアウラ王女を見てマイちゃん達が横目で僕を見て笑いをこらえていた。
「正直な話、王宮ではあいつの領地を召し上げて、別の領地を与えるかと話があったぐらいだからな。まぁ、あいつの人柄とそんな事をして反乱でも起こされたら事だから却下されたがな」
あれ? もしかして、当時の僕って危険人物だったのかな?
そう思いユエとマイちゃんを見たが、二人は目を反らした。
「……まぁ、そういう事も考慮されて妹が降嫁したのだがな」
「そ、そんな事情があったんですね……」
それ、僕も初耳です。まぁ、何かあるだろうなと思ってはいたけどね。
「ふっ、今ではいい思い出と言えるがな。それよりも、アマギの姪のタツゲツとか言ったな」
「はい」
「お前の伯父の死を知りたいと言っていたが、其処の二人は知っているだろう。聞かなかったのか?」
アウラ王女はマイちゃん達を見る。
「御二人は『わたし達の話を聞いても信じるかどうか分からない。自分で調べてみたら如何?』と言われました」
「ふん。そうか」
アウラ王女はマイちゃん達を非難している目で見ていた。
まるで、言わないのが復讐なのか?と訊ねているかのようだ。
「まぁいい。此処であったのも、何かの縁だ。わたしも協力しよう」
「助かります。アウラ王女」
「王女は寄せ。もう王国は亡んだのだ。であれば、王女という呼称を付けないで良い」
「分かりました。……アウラさん」
竜人君がそう言うと、他の三人も同じように呼んだ。
「わたし達も同じように呼んでも良いかしら?」
「好きにしろ」
マイちゃんがそう訊ねると、アウラ王女は許してくれた。
それだったら、ユエも同じで良いだろうが。
僕の場合は迷うな。前世の記憶があるので義姉さん? いや、此処は皆に倣ってアウラさんと呼ぶべきか?
悩んでいると、アウラ王女が顔をこちらに向けて唇だけ動かした。
――――――好きに呼べ。個人的には義姉さんでも構わないぞ。
と言っていた。
それも一瞬良いかもと思ったが、直ぐにそんな呼び方したら実の姉達が黙っていない事に気付いた。
此処は皆に倣って、アウラさんと呼ぼう。